錦です。
今年一年もプロセッサ市場はアツかったですね。AMDは第3世代RyzenでIntelにコスパ面で勝利し、Intelはついに10nmのプロセッサシリーズをローンチしたりと。そんな怒涛の2019年も終わろうとし2020年のことをまとめておこうと思います。多分、年始までには事情が変わってる可能性もあるので、Part1を2019年内に、Part2 を2020年年始早々にお届けできればなと思います。
微細化
さて、やはり微細化の技術というのは必要でというかトレンドでした。AMDは7nmへの移行で大幅な電力効率の改善と、性能の向上をCPU・GPUにもたらしました。Intelも念願の10nmへの移行がついに始まりました。
PC向けのプロセッサに関して微細化は2020年内は製品として登場しないと見られます。Intelは10nmのLakefieldを、AMDも第3世代Ryzenシリーズをそれぞれ追加・拡充するものと見られますが、すでに発表されている中でAMDもは5nm以下へ、Intelは7nmへの移行はそれぞれ2021年以降になりそうです。AMDは、微細化技術よりもマイクロアーキテクチャの改良に力を入れると噂されている他、Intelの微細化は最新のロードマップから2021年になることがわかっています。
ただ、モバイル向けに関してはそうではなく、AppleとQualcommはTSMCの5nmを採用し、今年は微細化が進むと見られます。とは言っても、Appleは秋に登場するものの、Qualcommは冬登場 翌年登場なので実際にはAppleは2020年後半、Qualcommは2021年に5nmへの移行が進むことになりそうです。Huaweiに関しては、Appleよりも製品の投入が早いこともあるため、5nmのHuaweiのKirin 1090(?)はAppleの前後になると思います。
GPUに関しては、AMDはCPU同様2020年は7nmが引き続き採用されます。しかし、NVIDIAはGeForceの次世代GPUシリーズ Ampereにて、Samsungの7nm EUV技術を利用して微細化にされると見られます。
Intel
では企業毎に見ていきましょう。
Comet Lake-S/H
これまでNishiki-Hubでは2020年のCPUも含めかなり先のIntelのロードマップ・リークを参照していましたが、今回は2020年のみの内容を扱います。
IntelはまずComet Lake-Sをローンチすると見られます。これが春頃 4月ごろになると見られており、Comet Lake-S(デスクトップ向け)をもとにしたComet Lake-H(モバイル向け)はその後に登場すると見られます。ハイエンド向け・デスクトップ向けには引き続き14nm+++が採用され、省電力・超省電力向けには10nmが採用されます。
Comet Lake自体は、Coffee Lake Refreshの後継となります。
Comet Lake-S/Hは、ともに最大10コア20スレッドで、最大のターボブーストクロックが5.1GHzになるものと見られます。Comet Lake-Sではチップセット・ソケットも変わり、チップセットはZ490を始めとした400シリーズ、ソケットはLGA-1200が新たに追加され、対応マザボは、Intel CPUローンチとともに、各ボードメーカーからリリースされると見られます。
また、Core i9-10900Kで、TDPは125Wまたは127Wになると見られており、大幅な消費電力の向上が見込まれています。Comet Lakeは、全てSkylake系統のコアを引き継いでおり、GPUもGen9となっています。
Ice Lake
Ice Lakeについては、今後どうなるのか若干不透明なところがありどうとも言えませんが、クロックが4.1GHzという上限がある以上、HEDTやスケーラブルプロセッサに移行してコア数を上げて製品化することが見込まれています。Cascade Lakeの後継としてIce Lakeの名前が浮かんでいます。実際、クロックの制限はありながらも、実際の性能はかなり上がっており、IPCの向上から、Comet Lakeの同じクロック数よりも高い性能を維持できます。
また、GPUはGen11のiGPUを採用しており、今後モバイル向けのプロセッサを拡充するのであれば、問題なく展開できそうです。
Ice Lake-Sはおそらくないと見られるため、メインストリームや、ハイエンドノートに向けた10nmの展開は2020年内はないと見て良さそうです。
Tiger Lake
こちらは、Ice Lakeの後継になります。Ice Lakeと同じであれば2020年後半にモバイル向けプロセッサから登場すると見られます。iGPUはXeにも採用されると見られる Gen12のIntel Graphics。コア数は変わらずと見られます。
最新のロードマップより、10nm++プロセスで製造されることがわかっており、仕様の詳細はわかっていませんが、4.1GHz問題を解決するのではないかと思われます。ないかな。。。
Lekefield
Lakefieldは廉価版の省電力向けエントリー向けのシリーズになります。Atom系です。LakefieldではIntelの3Dパッケージング技術で製造されます。
コアの構成として、低負荷用のAtom系のコア(Tremont)4コア と高負荷用のCore系のコア(Sunny Cove)1コアを組み合わせたARMのbig.LITTLEにちなんで名付けられたbig.largeという構成になります。低負荷作業をTremontに、高負荷作業をSunny Coveに割り振ることで、効率を高めます。
CPUは全体的に10nmで製造され、その他の部分にはそれ以外のプロセスが交じるのも特徴です。
iGPUは、Ice Lake同様 Gen11になります。
この登場について、Intelは2019年年内であるとしていますが、今の所アナウンスはありません。実際に拡充・展開されるのは2020年になると見られます。
AMD
AMDは、全体的に微細化の進展もなく、今年も順当な進化を遂げることが予想できます。
第3世代Ryzen
第3世代のRyzenの拡充ですが、7nmプロセスのモバイル向けRyzenやグラフィックが一体になったRyzen-G/GEやAthlonはまだ登場していません。CESでおそらくそれが拡充されるものと見られます。
その他、Ryzen Threadripperの最上位と見られる Ryzen Threadripper 3990Xが2020年に登場することが発表されている他、3970Xと3990Xの間、48コアの3980Xについても登場が期待されています。
新・Zen3
おそらく、年始AMDはCESあたりにZen2の後継、Zen3を発表すると見られます。
先述の通り、AMDは2020年には微細化の進展ではなく、マイクロアーキテクチャの改良を主軸にすると見られるため、引き続き7nmプロセスでの製造になると見られます。コア数が増えるのかは実際不明ですが、引き続き、多コア帯のコスパ保持を狙うものと見られます。情報によると、IPCが最大8%向上する模様で、Zen+からZen2ほどの性能の向上は見られないものの、それなりの進化は遂げられる模様です。
第4世代Ryzenは、AM4ソケットが採用される最後のRyzenとなっており、第1世代Ryzenのアップグレード先の最後の世代になります。
チップセットはX670を始めとする600シリーズ。廉価版B550では対応できないとみられるPCIe 4.0への対応も、B650では対応できると見られています。最新の情報によると600シリーズのマザボで一番初めに登場するX650マザーが2020年末に登場するとなっていることから、第4世代Ryzen自体の登場もかなり遅れる可能性があります。
Radeon
Radeonですが、RDNA採用GPUが現在、5700シリーズ、5500シリーズ、5300Mのみとなっていることから、5600シリーズ、5800シリーズの追加と、5300シリーズの拡充が行われると見ていいと思います。
AMDのRDNAの後継に当たるアーキテクチャの情報は今のところなく、2020年はRDNAの拡充がメインになる模様です。特に、年始にはRX 5600の登場が期待されています。
ハイエンド向けのGPUに関しては今の所情報はなく、Vega 64とかVIIの後継に関しては不明です。
NVIDIA
Ampere
NVIDIAは、AmpereというアーキテクチャのGPUを計画していると見られています。これはおそらくRTX 20シリーズの後継、RTX 30シリーズになると言われていますが、Voltaの後継、つまりTeslaのようなGPGPUなどの研究用・AI用のGPU向けのアーキテクチャになるという情報もあります。
どちらにせよ、Samsungの7nm EUV技術を利用して生産を行うと見られています。
正直、Turing世代もRTX 20シリーズとGTX 16シリーズで出尽くした感あるので、そろそろ新アーキテクチャになってもおかしくないかと思いますが。
Apple
Appleは早ければ2020年にも独自のSoCを搭載したMacBookを登場させるのではないかという予想が出ています。実際には不明ですが。
少なくとも、iPhone 12シリーズ(仮称)に採用されるApple A14プロセッサはTSMCの5nmで製造されると見られています。
コア数は増えず、6コアのまま、RAM仕様がLPDDR4XからLPDDR5になると見られます。
Qualcomm
Qualcommは先日発表されたSnapdragon 865が主力になり、5Gの発展を目指します。特に、ミドルレンジ帯に5Gモデム内臓の765/765Gを投入したことは、Qualcommにとっても、途上国やミドルレンジ帯のスマホにとってもいい影響になると見られます。
また、Qualcommが力を入れるAIの実力とは、これは実際に実機が出回らないと分かりませんね。
そして、PC向けのSnapdragon 7c/8cも。目が離せない存在になるでしょう。
ただ、能力の一部がApple A12にも劣るという報告が上がっています。どうやって計測してんだ?
いかがでしたでしょうか。2017年以降続くAMDの追い上げにIntelはついに10nmと新マイクロアーキテクチャで対抗することになる2020年。ただ、10nmがデスクトップにもたらされないのは、どこか寂しいですね。
モバイルは、5G元年に続く普及期間に入り、Apple Samsungを始めとするスマホメーカーもやる気になっています。そうした中で、モバイルプロセッサの進化は必要不可欠ではないでしょうか。
2019年のトレンドは微細化でしたが、2020年のトレンドはAIになりそうですね。