Bluetooth SIGは9月3日、Bluetoothの新しいコアバージョンとなる「Bluetooth 6.0」を発表しました。
概要
Bluetoothは言わずとしれたスマートフォンやパソコンなどで用いられている無線規格ですが、Bluetooth 6.0はメジャーアップデートとなる新しいリビジョンです。具体的には機能の追加や改善が行われてます。
では、主要な機能について見ていきます。
主要な機能
Bluetooth チャネルサウンディング
Bluetooth 6.0の目玉となる様な機能の「Bluetoothチャネルサウンディング」は、位相ベース測距(Phase-based ranging / PBR)を利用して、Bluetooth接続デバイス間で正確性が高い距離測定がおこなえる機能です。現在、AppleのAirTagやTile、AnkerのEufyなどの忘れ物防止タグが数多く登場しており、実際かなり需要がある製品となっています。
これらの忘れ物防止タグの一部では、距離と場所がわかるような機能が搭載されていますが、これは6 GHz〜8 GHz(日本では7.25GHz〜10.25 GHz程度の可能性)のUWB(Ultra-Wide Bandwidth)を利用した機能であり、例えばApple製品のAirTagとiPhoneにはApple U1というUWB専用のチップが搭載されています。実際、Bluetooth SIGは意図的かは不明であるもののAppleの忘れ物防止プラットフォームである「Find My」(探す)の名称を利用しており、今後AppleがBluetooth 6.0と探すネットワークを統合することが示唆されています。
Bluetooth 6.0ではこれに似た機能を搭載しており、UWBを利用しなくてもBluetooth機能だけで距離測定が可能になります。精度は長距離(150m程度)〜数センチメートル程度で、これで大体のアプリケーションには対応できるとしています。Bluetooth LEの機能であるため、低電力で動作します。
また、Bluetoothチャネルサウンディングでは、自動車や家、金庫の鍵の施錠・解錠が可能になるともしており、それを保護するためのセキュリティレイヤーも追加されています。例えば、信号を解析して攻撃の可能性をメッセージを送る仕様が組み込まれていたり、攻撃者による分析に時間を賭けさせるような機能をもたせるなどが挙げられます。
更に、PBRを利用するとはしているものの、実際にはRTT(Round-Trip Timing)も利用され、これらの相互チェックによってセキュリティを実装している他、信頼性をたもっているようです。
決定ベースのアドバタイジングのフィルタリング
Bluetoothデバイスが起動している時、自分の存在と機能を周囲に提供して検索できるようにすることを「アドバタイジング」といいます。Bluetooth 5.0では、プロトコルデータユニット(PDU)と呼ばれるその情報を持ったレジストリに「ADV_DECISION_IND」という新しいものを追加し、アプリケーション側がコントローラrの受診パケットフィルタリングをより細かく制御できるようになります。
具体的には、新しく追加されたPDUによってプライマリのアドバタイジングチャネルで関係ないパケットを弾いて、セカンダリチャネルでのスキャンを効率化するというものになります。
アドバタイザーの監視
HCIイベントを利用して、対象デバイスが範囲内に入ったり、範囲外に出ていったときに通知する機能を搭載しています。これによって、検出済みのデバイスがすでに範囲外にいる際のスキャンを行わなくて済むようになり、電力の削減に繋がります。
ISOALの強化
ややこしいですが、Bluetoothはホスト側から受け取る上位層のサービスデータユニット(SDU)をリンク層のPDUに変換するISOALという機能があります。これまでは、PDUが生成される際に遅延が増加する可能性がありました。
ISOALには新たに「Unsegmented Framed mode」という遅延を削減する動作モードが追加されました。これは主に音声デバイスの遅延の削減に利用されるとのことです。
低電力機能拡張
Bluetoothデバイスの機能説明はこれまで64-bitで行われていましたが、Bluetooth 6.0では1984-bitに拡張されました。これは、Bluetoothの将来的な拡張を視野に入れたものです。
タイミング
Bluetoothの通信タイミングをより柔軟に調整できるようになります。これは、従来デバイス間で連続してパケットを送受信する際の間隔が150 マイクロ秒に固定されていたのが、変更できるようになるということを意味しています。
展開
Bluetooth 6.0は仕様が確定し発表された段階で、この先、対応するコントローラなどが開発・提供されてから実際の製品に組み込まれます。
登場製品は、早くてもCES以降となり、本格的な展開は来年後半となる見込みです。