昨日iPhone 16eが発表されましたが、現時点でわかっている「iPhone 16」と「iPhone SE」との違いを取り上げてみましょう。
この記事における「iPhone SE」は全て2022年発売の「iPhone SE(第3世代)」を指しています。
製品の立ち位置
では、それぞれの分野ごとに見ていきたいと思います。まずは、製品の立ち位置です。
iPhone 16eはiPhone SEの後継であり、実質的に廉価グレードとなっています。と言っても、米ドル価格では429ドルから599ドルに値上げ、日本円でも62,800円から99,800円とかなり値上がりしている印象があります。
これをみると、残念ながら従来のiPhone SEと全く同じ立ち位置かと言われればそうではなさそうです。
iPhone 16eの投入に伴って、iPhone SEとともにiPhone 14シリーズの販売も終了しました。これは後述する通りLightningデバイスを終売するためかもしれませんが、その立ち位置をiPhone 16eが担うことになるということになりそうです。
詳しくどういうことかを説明すると、従来のiPhoneの立ち位置的に、最新世代のiPhone、1世代前、2世代前、iPhone SEといった順に価格が設定されており、大体1万円ずつ安くなっていくような形でした。例えば、今月頭時点では「iPhone 16」「iPhone 15」「iPhone 14」「iPhone SE」という順番に安価になっていました。
しかし今回、iPhone 16eのグレードや価格帯は「iPhone 14」を置き換えるものとなってしまいました。結果として、底値が上がり割高になったわけです。つまり、今回の場合「iPhone 16e」は「iPhone SE」の後継でありながら「iPhone 14」を置き換えたため、価格がSEに比べて上昇したと考えることになりますね。
もちろん、これには政治的な思惑もあります。例えば、従来のiPhone 14やiPhone SEはLightning端子であることから欧州で販売を継続することができないために、iPhone 16eに置き換えたという見方もできるわけです。
それ以外にも、戦略上全てのApple製品が「Apple Intelligence」に対応させる必要があったというのもあるでしょう。Apple Intelligenceのためには、8GBメモリとなるべく最新世代のチップが必要です。更に、ニーズに合わせて筐体も6.1インチに合わせたかったのでしょう。結果として、iPhone 14の筐体を採用し、OLEDや高性能カメラの採用により底値が上昇したと考えられるわけです。
特に、AppleはiPhone 16eをiPhone 16シリーズの一部と説明していることからも、その立ち位置は明確でしょう。
SoCとメモリ
SoCについては、iPhone 16eは「Apple A18」を採用しています。
iPhone SEでは「Apple A15 Bionic」、iPhone 16は「Apple A18」だったので、最新世代と同じ世代のチップを採用していることになります。
ただし、全くiPhone 16と同じかと言われればそうではなく、iPhone 16のA18のGPUコア数が5コアであるのに対して、iPhone 16eのそれは4コアと1コア無効化されています。
それ以外にもクロックの違いなどはあるかもしれませんが、現状はこの違いがあります。
Apple Intelligenceに対応していることから、メモリは8GB搭載しているものと考えられます。これはiPhone 16と同等で、iPhone SEの4GBからみると倍となっています。
ディスプレイ
ディスプレイは、6.1インチのSuper Retina XDRとなっています。
iPhone 16と同様にOLEDとなっていますが、性能はiPhone 14と同等になっています。
iPhone 16e | iPhone 16 | iPhone SE | |
---|---|---|---|
ディスプレイ | Super Retina XDR | Super Retina XDR | Retina HD |
タイプ | OLED | OLED | 液晶 |
サイズ | 6.1インチ | 6.1インチ | 6.1インチ |
解像度 | 2,532 x 1,170 | 2,556 x 1,179 | 1,334 x 750 |
密度 | 460-ppi | 460-ppi | 326-ppi |
通常時最大輝度 | 1,000ニト | 800ニト | 625ニト |
屋外最大輝度 | 2,000ニト | ||
HDR時最大 | 1,200ニト | 1,600ニト | 非対応 |
リフレッシュレート | 60Hz | 60Hz | 60Hz |
画面サイズは、iPhone 16と同等となっていますが、iPhone 16ではベゼルが薄くなっているため、やや画面サイズが大きくなっています。
iPhone SEと比較すると全てが変わっており、まずディスプレイの種類が液晶からOLEDのSuper Retina XDRに、輝度も大幅に向上し、最大800ニトとなっています。
なお、iPhone 16では、HDR時の最大輝度は1,600ニトですが、iPhone 16eは1,200ニトとなっている他、屋外での輝度のブーストには対応していません。また、極限まで落とせる輝度(1ニト)にも対応していません。
リフレッシュレートは全て60Hz。
フロントカメラはDynamic Islandではなく、iPhone X〜iPhone 14と同様のノッチタイプとなっています。
筐体
iPhonse SEの筐体が、iPhone 8をベースにしていたのに対して、iPhone 16eはiPhone 14をベースにしています。
寸法は全くiPhone 14と同じ。カメラが単眼になっているなどの影響で重量はやや軽くはなっています。
ボタンの類に関しては、ミュートスイッチの部分がアクションボタンに変更されています。他方で、Camera Controlボタンは設置されていません。
バックカメラ
iPhone 14の筐体を採用しているものの、バックカメラは単眼となっています。
その単眼で、2つのレンズの機能を補うとしています。
まず、イメージセンサーを見てみましょう。イメージセンサーの画素数は、iPhone 16のメインカメラと同じ48MP、iPhone SEが12MPであるので4倍の向上です。
iPhone 16e | iPhone 16 | iPhone SE | |
---|---|---|---|
カメラ数 | 1 | 1 | 2 |
メインカメラ | 48MP F1.6 | 48MP F1.6 | 12MP F1.8 |
光学ズーム | x1 / x2 | x0.5 / x1 / x2 | x1 |
基本的には、iPhone 16のメインカメラをベースにしており、iPhone 16同様、メインカメラで光学2倍ズームが利用できるFusionカメラとなっています。
しかし、超広角カメラを搭載していませんので、マクロ撮影には非対応となっています。
また、アクションモードもサポートされていないほか、シネマティックモード、2眼カメラが必要空間ビデオはサポートされていません。他方で、Dolby Visionの撮影には対応している他、Neural Engineは最新世代となっているため、風切り音の低減やオーディオミックスには対応しています。
iPhone SEから見れば、大幅な性能向上となります。
フロントカメラ
フロントカメラは、前述の通りFaceIDをサポートするTrue Depth Cameraとなっています。
画素数も7MPから12MPに強化されています。
なお、ディスプレイの節で述べた通り、カメラの配置はiPhone 14と同じ小さいノッチとなっており、Dynamic Islandなどではありません。
基本的には、バックカメラ同様、シネマティックモードには非対応であるものの、Dolby Visionには対応しています。
更に、iPhone SEでは対応していない、スロー撮影(120fps)にも対応している他、iPhone SEでは対応していなかった4K撮影も可能となっています。
ワイヤレス
ワイヤレスを見ていきます。
iPhone 16e | iPhone 16 | iPhone SE | |
---|---|---|---|
セルラー | 5G | 5G | 5G |
4G/5G | 4x4 MIMO | 4x4 MIMO | 2x2 MIMO |
モデム | Apple C1 | Snapdragon X71 | Snapdragon X57 |
ミリ波(米国のみ) | 対応 | ||
Wi-Fi | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 7 | Wi-Fi 6 |
Wi-Fi MIMO | 4x4 MIMO | 4x4 MIMO | 2x2 MIMO |
Bluetooth | Bleutooth 5.3 | Bleutooth 5.3 | Bluetooth 5.0 |
UWB | 対応 | ||
Thread | 対応 |
セルラーモデムチップは、初めての独自設計モデムチップである「Apple C1」が搭載されています。仕様の違いについては昨日の記事を御覧ください。
「iPhone 16e」のセルラーの仕様 - Nishiki-Hub
それ以外の仕様の違いを見ていきます。
Wi-Fiは「Wi-Fi 6」(IEEE 802.11ax)となっていますが、残念ながら6GHz帯のWi-Fi 6Eには対応しておらず、2.4GHz帯と5GHz帯に限定されています。また、Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)は対応していません。
Bluetoothは、Bluetooth 5.3となっています。
それ以外では、FeliCaやNFCには対応するものの、Apple U1チップが省略されており、UWBに対応していないほか、Threadにも対応していません。
充電と物理コネクタ
充電は、iPhone 16と同じくUSB-Cに変更されており、これを持ってApple製品の大多数がLightningからの移行が達成されたことになります。
iPhone 16e | iPhone 16 | iPhone 16 Pro | iPhone SE | |
---|---|---|---|---|
形状 | USB-C | USB-C | USB-C | Lightning |
規格 | USB 2.0 | USB 2.0 | USB 3.0 | USB 2.0 |
DisplayPort | 対応 | 対応 |
ただ、何故かDisplayPortをサポートする旨の記述が省略されており、映像出力が出来るかどうかは不明です。
USBの規格は、iPhone 16やiPhone SEと同様のUSB 2.0ですので、データ転送速度に差はないものの、給電能力が上昇しています。
なお、充電についてはiPhone SEと同等の20W急速充電に対応しているようです。
また、Qi充電には対応するものの、MagSafe(Qi2)のサポートは省略されており、7.5W給電にしか対応していません。これはiPhone 16eのナーフ点でしょう。
耐水・防沫・防塵
iPhone SEではIP67相当でしたが、iPhone 16eではiPhone 16と同様にIP68相当となっています。
まとめ
基本的に、SoCやソフトウェア、カメラ面では一眼であるということ以外はiPhone 16と同等になっていますが、ワイヤレス部分ではやはり廉価グレードとして一部省略されていたり、筐体やディスプレイなどの外観としての仕様はiPhone 14に準拠しています。