2025年、CPU・GPU・NPUはどうなったのか【2025 振り返り】

本日の内容

今年も年の瀬が近づいてまいりました。今年を振り返りましょうか。

色々波乱だった一年間

さて、今年一年を振り返るということですが、今年一年のCPU・GPU・NPU業界をChatGPTに漢字一文字で表してみてもらったところ「奪」という斜め上を行く回答が得られました。まあ、それくらい波乱だった一年だったのですが。

CESから始まりホリデーシーズンまでに登場したCPU・GPU・NPU・SoCのシリーズ製品をまとめると以下のようになります。

  • NVIDIA GeForce RTX 50シリーズ(Blackwell)
  • NVIDIA RTX PRO Blackwell
  • NVIDIA GB300 / B300
  • AMD Radeon RX 90シリーズ(RDNA 4)とプロ向けRDNA 4 GPUラインナップ
  • AMD Ryzen Z2(Zen 5 / RDNA 3.5)
  • Ryzen AI Maxシリーズ
  • AMD Ryzen 9 9950X3D等 Zen 5製品
  • Intel Arrow Lake製品拡充
  • Intel Arc Pro B
  • Apple M5
  • Apple A19シリーズ
  • Qualcomm X2 Elite
  • Qualcomm 8 Elite Gen 5

実際には、これらの廉価グレードとか、過去製品のリニューアル等の新製品がありますが、ラインナップを抑えるとこのような形になります。

年初にお話した通りですが、今年新しいアーキテクチャでラインナップを刷新する形で登場したのは、GeForce RTX 50、Radeon RX 90、Qualcomm X2の3点で、PC向けCPUはIntel・AMDともに新シリーズの投入はありませんでした。

CPU

CPUは、大きな変化はありませんでした。

Intel

IntelはCEO不在の状態で始まった一年となりました。昨年12月にPat Gelsinger前CEOが退任し、CFOのDavid Zinsner氏とCCG(Client Computing Group)の責任者であるMichelle Johnston Holthaus氏の両名が暫定CEOとなり、3月にLip-Bu Tan氏が新たなCEOに選ばれるまで職務を代理で執行しました。実に3ヶ月間もCEOが不在となる異例の事態となりました。

その中で、Intelは大きな製品展開を行っておらず、概ねロードマップ通りの製品展開となりました。

Arrow Lake

まず、年初にArrow Lakeのメインストリーム向け・モバイル向けのラインナップを展開します。例年通り、年末にハイエンドクラスのデスクトップ向けCPUを展開し、翌年初にそれ以外のラインナップを展開するという流れに沿っています。

Arrow Lakeは、PコアにLion Cove、EコアにSkymontを採用したCPUラインナップです。「Lunar Lake」とともにCore Ultra Series 2を構成しています。デスクトップ向けに展開されるCPUとしてはRaptor Lakeの実質的な後継となり、また初めてのデスクトップ向けCore Ultra製品です。

Lunar LakeがNPUとGPUにそれぞれ「NPU 4」、「Xe2」という最新世代を採用しているのに対して、Arrow Lakeは、CPUこそ最新世代であるものの、NPUとGPUはMeteor Lakeのものを流用するという形になっています。結果として、NPUの性能が13 TOPSとなり、MicrosoftのCopilot+ PCの基準を満たすことができませんでした。

ただ、面白い製品も登場しました。「Meteor Lake-H」は、モバイル向けのメインストリームモデル(28W/45W帯)です。GPUがMeteor Lakeと同じXeであるものの、Meteor Lakeや他のArrow Lakeが搭載していない「Xe Matrix Extension」という行列演算用のユニットを搭載しており、GPUのInt8性能が77 TOPSという高い性能を実現しています。

ちなみに、Arrow Lake・Lunar Lakeに採用されるLion Coveは、ハイパースレッディングが無効化されていますが、この方針についてはIntelは見直すことを明らかにしています。

Bartlett Lake

Bartlett Lakeは、「Raptor Lake」とともにIntel Core Series 2ラインナップを構成する製品です。Intelは、Core Ultraブランドを採用して以降、Core Ultraブランドを最新世代のアーキテクチャを採用している製品ラインナップに、Coreブランドを一世代前のアーキテクチャを採用した廉価グレードのラインナップに採用するという戦略をとっています。

IntelはRaptor LakeをCore Series 2として投入しましたが、同時に組み込みシステム向けとしてBartlett Lakeを投入しました。

Bartlett Lakeは、LGA-1700を採用している組み込み向けラインナップです。おそらくRaptor Lake-Refreshがベースとなっており、組み込みシステム向けに供給ライフサイクルが長くなっているものと見られています。

Twin Lake

「Twin Lake」は「Alder Lake-N」の後継です。Eコアのみで構成される過去のAtom系統のCPUの流れを汲むラインナップです。

Twin Lakeは、Alder Lake-Nと同じGracemont CPUマイクロアーキテクチャを採用しており、若干クロックが引き上げられています。

Granite Rapids

Granite Rapidsは、昨年投入されたラインナップですが、今年小規模グレードが投入されました。

Xeon 6はPコアのみで構成された「Granite Rapids」とEコアのみで構成された「Sierra Forest」が展開されています。Granite RapidsとSierra Forestはプラットフォームを共有しています。

今回投入されたのは、Xeon 6 6700Pシリーズ、6500Pシリーズ、63000Pシリーズです。Xeon 6 6900Pよりも小規模向けのラインナップとなっており、最大コア数が86コアとなっています。

更に、vRAN Boost搭載の「Granite Rapids-D」も投入されました。これは、ネットワーク・エッジアプリケーション向けのCPUラインナップです。

Clearwater Forest

製品投入は2026年になりますが、Xeon 6+ラインナップとして「Clearwater Forest」も投入しました。

Sierra Forestは当初、最大288コアで展開される予定でしたが、これが実質キャンセルとなり、後継となる「Clearwater Forest」でそれが実現することになります。

Clearwater Forestは、CPUアーキテクチャにPanther LakeのDarkmontを採用しています。

また、製造面では、Intel 18Aプロセスを採用したうえでIntelの最新の3Dパッケージング技術である「Foveros Direct 3D」を採用しています。

Panther Lake

こちらも製品が投入されているわけではありませんが、概要が明らかになった製品として「Panther Lake」があります。これは、Core Ultra Series 3となる予定の製品ラインナップです。

引き続きタイル構造を採用し、Compute TileにはIntel 18Aプロセスを採用しています。電力効率が大幅に向上しており、同じ電力で50%高性能になっています。

CPU・GPU・NPUすべてがアップデートされます。CPUにはPコアに「Congar Cove」、Eコアに「Darkmont」を、GPUに「Xe3」を、NPUに「NPU 5」をそれぞれ採用しています。

Panther Lakeは来年最初に登場する見込みです。

AMD

Ryzen AI

Ryzen AIシリーズは、AMDのCopilot+ PC対応ラインナップです。XDNA 2を採用したラインナップです。

今年新たに登場したのが、Ryzen AI Maxシリーズです。Ryzen AI Maxシリーズは、Zen 5 CPUにRDNA 3.5 GPU、最大50TOPSのXDNA 2を採用したラインナップです。

このラインナップの面白いところが、メモリバスが256-bitとなっているという点です。CPU・GPU・NPUの統合SoCの欠点にメモリバスの小ささに性能が引っ張られやすいという物がありましたが、解消されています。

RDNA 3.5 GPUは、Ryzen内蔵のGPU専用アーキテクチャで、RDNA 3のマイナーアップデートとなっています。

RDNA 4

新しいGPUアーキテクチャで「RDNA 4」が登場しました。採用されたのは「Radeon RX 90」シリーズとなります。

Radeon RX 90シリーズは、命名法則がGeForceを意識したものになっています。最上位モデルは、Radeon RX 9070 XTでアッパーミドルとなっています。AMDはこのシリーズでは、RTX 5090のようなハイエンドラインナップで競合する気は内容で、AMDも一定のシェアを有しているアッパーミドル以下の部分で価格競争を仕掛ける形になるようです。

RDNA 4の特徴を見ていきます。

まずアーキテクチャの更新。Compute Unitの効率改善とクロックの向上による全体的な性能向上が見られています。具体的には、レジスタの扱いが挙げられRます。RDNA 4でのレジスタは、必要時に確保し、終了後に開放することができるようになったことにより、メモリレイテンシの改善と効率向上によるシェーダーの性能向上を果たしました。メモリ自体も256-bitバス幅で20GbpsのGDDR6を新たに採用します。

さらに、第3世代Infinity Cacheとする新しいキャッシュとメモリ構造を採用しました。RX 7900 XTでダイごと分離したInfinity Cacheは、再びモノリシックダイに戻っており、レイテンシが削減された可能性があります。

特に性能が向上したのがレイトレーシングの部分。レイのインターセクション処理用の物理ユニットの個数が2倍になった他、BVHとオリエンテッドバウンディングボックス(OBB)の改善やレイトラバーサルなどの高速化などが図られています。これにより、レイトレーシングの性能が2倍に向上。

また、AI向けにも強化が施されており、RDNA 3と比較して、スパース性なしで1サイクルあたりのFP16のスループットを2倍に向上。スパース性ありだと性能が4倍、INT8に限ると9倍の性能向上となりました。そして、FP8フォーマットに新たに対応します。ピークAI性能(INT4)では、製品として1,000 TOPSを超えるなど性能が向上しています。

その他、H.264の品質が25%、HEVC(H.265)の品質が11%向上、AV1エンコーディングの効率が向上しました。更に、AV1とVP9のデコードが改善され、メモリアクセスが削減されています。全体として、最大8K/80fpsのエンコード・デコードに対応したとしています。

ビデオ再生においては、ビデオフレームのスケジューリングがGPUにオフロードできるようになりました。

接続としては、PCIe 5.0に対応しました。ゲーミングにおいて効果を得ることは少ないですが、CPUとの帯域を要求するようなAIやクリエイティブの分野では一定の効果が見込めます。

そのゲーミングについてですが、シャープニングが改善されており、Radeon Image Sharpening(RIS)がRIS 2として進化。品質の向上が見込まれます。

Ryzen Z2

Ryzen Zシリーズは、ハンドヘルド型のゲームデバイス向けAPUです。

Ryzen Z2はその二世代目です。最上位グレードに「Ryzen Z2 Extream」、メインストリーム「Ryzen Z2」、下位グレードに「Ryzen Z2 Go」がそれぞれ投入されています。

この3種類、CPUの設計から全部違うのでZ2 Extreamをピックアップしますと、Ryzen AI Maxと同じく、Zen 5 + RDNA 3.5という構成になっています。NPUは搭載されていません。

NVIDIA

GeForce RTX 50

昨年、Hopperアーキテクチャの後継であるBlackwell GPUアーキテクチャを搭載した「NVIDIA GB200」をはじめとした製品が投入されましたが、Ada Lovelaceアーキテクチャの後継として「GeForce RTX 50」シリーズが投入されました。

Blackwellアーキテクチャは、CUDAコアにニューラルネットワーク(Neural Shader)を搭載しており、AIの処理が強化されています。Neural Shaderには「RTX Neural Texture Compression」「RTX Neural Materials」「RTX Neural Radiance Cache」が含まれており、圧縮・光線シミュレーションをAIで高速化することができます。

「GeForce RTX 50」の仕様と進化点を考察する - Nishiki-Hub

Blackwell Ultra

Blackwell Ultraは、Blackwellアーキテクチャのマイナーアップデートです。製品としてNVIDIA GB300系に採用されています。

同時に、これを16基搭載したHGX B300 NVL16も同時に投入されています。

Qualcomm

Dragonwing

Qualcommは今年一年組み込みシステム向けの製品拡充が目立ちました。その筆頭となるのは、Dragonwingという新ブランドです。

Snapdragonの組み込み向けラインナップといえるARM搭載のSoCで、Kryo CPUとAdreno GPUに加えてHexagon NPUも搭載しています。

また、今年QualcommはArduinoを買収し、Dragonwing搭載のArduinoも投入しました。

Snapdragon X2 Elite

Snapdragon X2 Eliteは、新しいPC向けSnapdragonです。

第3世代Oryon CPUを搭載しており、プライムコアにパフォーマンスコアを追加したヘテロジニアスマルチコア構成となっています。Snapdragon Xシリーズとしては初めてのヘテロ構成となっています。そして、Arm CPUとして初めて5.0 GHzを達成しています。

CPU内部では、キャッシュ構成が変更されている他、Qualcomm Matrix Engineという行列演算ユニットを搭載しています。おそらく、SVE2とSMEに対応しているため、そのHWユニットだと考えられています。

GPUは規模が3割ほど大きくなっています。

Apple

Apple M5

Apple M5は、Appleの新しいSoCです。現時点でiPad Pro、MacBook Pro、Apple Vision Proに搭載されています。

HWレイトレとHWメッシュシェーダーがアップデートされており、レイトレが45%、メッシュシェーダーが30%性能向上しています。

更に、GPUにNeural Acceleratorが統合されており、GPUベースのAIワークロードで4倍以上のピーク性能を実現しています。

まとめ

さて、2025年は本当に波乱の年となりました。

生成AIから始まった第3次AIブームは、半導体の需要逼迫という形でCPU市場に黒い影を落としています。GPU不足は今に始まったことではありませんが、今はメモリ不足が深刻です。NANDフラッシュにも影響する可能性が高そうで、来年も混乱は続くことになりそうです。

一方で、来年はPanther LakeやNova Lake、Zen 6が待ち構えています。Apple Siliconも周期的にはまもなく大型の更新が入りそうな雰囲気です。そういう部分では、来年も話題に事欠かない年になりそうです。