錦です。
先日12月に予約受付が開始されることが正式発表されたMac Proですが、そのカスタムはわかりにくいものになっています。今回はそのわかりにくいカスタムを紹介していきます。
CPU
CPUは、正直いつもと変わらない感じです。ただバリエーションが多いだけ。おもにCPUの場合は「クロック」をとるか「コア数」をとるか。
クロックを取ると、シングルコアで処理するときの性能が上がりますが、コア数は少なくなります。コア数を取ると、エンコードなどの複数の並列処理が圧倒的に効率的になりますが、クロックはさほど上がりません。よく、ゲームはクロック、創作活動はコア数といわれるような気がします。Mac Proがターゲットとしているのはおもにクリエイティブソフトであるため、コア数を取るといいかと思いますが、昔のソフトを愛用している場合、マルチコアに対応していないなんてことも。また、Mac向けのソフトでもすでに開発が終了していたりする場合は、過去のMacに存在しない28コアCPUなんか使ってもせいぜい使ってくれるのは12コアとか18コアです。
そのため、簡単にまとめると
- 安定性・効率性やマルチコアの性能を求めるならコア数を増やす。
- シングルコアの性能を求めるならクロックを上げる。
こういう感じなると思います。一応、クリエイター向けソフトは基本的にコア数を必要とします。Mac Proのコア数展開は8/12/16/24/28コアです。なお、コア数が多いほうが消費電力が大きくなります。
GPU
さて、Mac Proの中でも難解なカスタムの一つ。GPUです。
Mac ProはシングルGPU・デュアルGPU・クアッドGPUに対応します。Pro 580X・Pro Vgea II・Pro Vega II Duo・Pro W5700X*1という4つのGPUから選択できます。GPUは主にグラフィックに関する処理を司る機構で、映像や画像、CG処理なんかはもちろんですが、DTMに関する性能も上がるため、Mac Proで創作活動を行う場合には見過ごせない選択です。
さて、ラインナップはPro 580とPro Vega II、Pro Vega II Duo・Pro W5700X*2という展開になっています。Pro 580Xは、iMacのPro 580Xと変わりないものです。Vega IIは、iMac Proに搭載されるVega 64Xの更に上位のモデルで、HBM2メモリが16GB搭載されます。Vega II Duoは名前の通り、Vgea IIを2つ搭載したGPUです。そのためVega II Duoは1スロットに2つのGPUがついています。Pro W5700Xは、Radeon Pro W5700の上位のモデルで、vRAMが16GB GDDR6になっている他、アーキテクチャがRDNA(Navi)になっています。性能的にはPro 580XとVega IIの間です。
Mac ProにはVega IIかVega II DuoかPro W5700X*3のどれか1種類を、1つまたは2つ搭載できます。そのため、Vega II Duoカスタムでは最大4つのGPUを搭載することができます。
ただ、ここで問題が。Vgea IIを2つ搭載するVgea II Duoモジュールを1つ搭載するカスタムか、Vega IIモジュールを2つ搭載するカスタムか。
性能はおそらく変わらないと思いますが、効率はVega IIモジュールを2つ搭載するカスタムのほうがいいです。Vega II Duoモジュールは2つのGPUが一つのスロットを共有するのに対し、Vega IIモジュールを2つ搭載するのは、2つのGPUがそれぞれ1つずつスロットを独占するので、理論上は後者のほうが効率的です。ただ、Vega II Duoモジュールを2つ搭載すると、MPXが必要なアクセサリ 例えば「Promise Pegasus R4i 32TB RAID MPX Module」は使えません。
換装
Mac ProのGPUは換装ができるという点にも注目しなければなりません。おそらく、今後Mac Proに搭載できるGPUは増えます。それこそ、Radeon VIIの上位のモデルが登場する可能性もありますし、それを見越した仕様です。そのため、今は下位のPro 580Xを選択しておいて、後々いいのが出たら交換する ということができるわけです。
しかし、Mac Proの厄介なところは、接続が普通のPCと違うところ。普通のPCと同じであれば、流通しているRX 5700やGeForceなんかを搭載できますが、Mac ProはPCIe x16とMPX Connectという独自規格で接続します。実際に、MPXに繋がないとGPUは認識されないのかは不明ですが、配線や、電源の関係上MPXを採用しない製品の搭載は実質不可能かと思われます。そのため、Apple経由で販売されるAMDのGPUしか搭載できないという仕様になりそうです。
RAM
RAMは6チャンネル12スロットのRAMスロットがあります。
なお、RAMはCPUによって選択・搭載・換装できるRAMが異なります。
Appleでは、ラインナップとして、32GB/48GB/96GB/192GB/384GB/768GB/1.5TB(1,536GB)から選択できます。しかし、CPUの選択によっては選べないカスタムがあったり、RAMの種類が異なります。
- 8コアを選択した場合、32GB/48GB/96GB/192GB/384GB/768GBから選択でき、DDR4-2666(2666MHz駆動)のRAMが搭載。
- 12/16コアを選択した場合、32GB/48GB/96GB/192GB/384GB/768GBから選択でき、DDR4-2933(2933MHz駆動)のRAMが搭載。
- 24/28コアを選択した場合、32GB/48GB/96GB/192GB/384GB/768GB/1.5TBから選択でき、DDR4-2933(2933MHz駆動)のRAMが搭載。
そして、768GBカスタムのみ搭載方法が2つあります。これは、128GB RAMを6枚搭載するか、64GB RAMを12枚搭載するかという選択です。これも、GPU同様 分散させたほうが効率的で高速です。そのため64GB RAMを12枚搭載するほうが価格は高くなりますが、効率的です。
換装
そしてこのRAMも換装することができます。RAMはGPUとは違い、一般的な規格 DIMMですので、DDR4メモリであれば基本的に使うことができます。AppleでRAMを増設すると、若干お高めになってしまうため、PCパーツ店でDIMMのDDR4を買ったほうが安くなる場合があります。
なお、このとき注意しないといけないのは搭載できるRAMの最大容量です。8コア/12コア/16コアCPUを選択している場合は1TB以上のRAMを、24/28コアCPUの場合は2TB以上のRAMを搭載できません。注意してください。
また、クロックについてですが、基本的にDDR4メモリなら問題ないと思いますが、もしも互換性問題が怖い場合は、8コアCPUを選んでるならDDR4-2666(2666MHz駆動)*4を、それ以外ならDDR4-2933(2933MHz駆動)*5を購入するといいと思います。ECCについては、あってもなくても多分起動すると思います。
他にも注意しなければならないのがRAMの形です。現在、RAMの交換ができるのはiMacとMac miniのみで、これら2つともSO-DIMMという形のRAMを採用しています。そのため、市場で「Mac対応」と書いてあるものはSO-DIMMである可能性が高いです。Mac ProはDIMMにのみ対応しますので、これらのメモリとは互換性がありません。そのため、換装して購入する際は、Mac対応とかいていなくともDIMMを買わないといけません。
SSD
これも若干ややこしいです。
Mac ProではSSD モジュールを最大2つ搭載できます。ただ、このSSDも独自規格っぽいです。
Appleのカスタムでは、256GBモジュールを1つ搭載する 256GB構成、512GBモジュールを2つ搭載する 1TB構成、1TBモジュールを2つ搭載する 2TB構成、2TBモジュールを2つ搭載する 4TB構成を選択することができます。
おそらくこのモジュールは、今後単体で発売される可能性が高いです。8TBとかもできそうな感じではあります。
この他に、Promise Pegasus R4i 32TB RAID MPX Module Kitなるものが販売予定とのことです。ただ、このアクセサリ(?)*6は、MPXスロットを1つ独占するのでデュアルGPUができないっぽいです。もしデュアルGPUにしたい方は、速度は落ちるかもしれませんが、Thunderbolt 3接続の外部ストレージのほうがいいかもしれません。一応ストレージとしては他にも、MPXかは不明ですがかんたんに装着できるPromise Pegasus J2iというものも発売予定です。
AfterBurner
AfterBurnerは、主に映像・写真といったグラフィック性能に関するもので、ProResとProRes RAW専用のアクセラレーターカードです。FPGAっぽい。
最大3ストリームの8K ProRes RAWまたは12ストリームの4K ProRes RAWを処理できるそうです。一応これはCPU・GPUの性能に関係ない=CPU・GPUの能力を使わずに処理ができるものです。GPUとの違いは、映像処理のみしか有効化されないという点です。
AfterBurnerはMPXではなく、PCIe x16を使用するため、GPUへの干渉はありません。FPGAなので他の処理にも使えそうですけどね。あくまで「ProRes専用」のアクセラレータなんですね。
Pro Display XDR
Pro Display XDRは、基本的に6Kですかが、一部のMacでは5K表示になります。
背面のポートは、Thunderbolt 3(画面入力)とUSB TypeC×3ですが、このUSB TypeCの性能が、6K表示時はUSB 2性能に、5K以下の場合はUSB 3.1Gen1性能に可変するようです。
一応、Mac ProとMacBook Pro 16インチは対応する6Kの解像度の出力に対応していますが、iMac・iMac Proは5Kの出力にしか対応していないため、Pro Display XDRで6Kが利用できるかは不明です。MacBook Airなんかは流石に無理ですかね。eGPUあっても。MacBookはそもそもThunderbolt非搭載だし。