錦です。
今日、朝から「Windwos 10のサポートが終了する」という旨の話が話題になっています。情報の出どころは、Tom’s Hardwareで、日本で話題になったのはGIGAZINEがそれを取り上げたからですね。
しかしこの話、最近発表された話ではなく2015年のWindows 10リリースからアナウンスされていたことなんです。
Windows 10のサポート体制
Windows 10はWindows 7やWindows 8.1のようなメインストリームサポートと延長サポートと呼ばれる従来のライフサイクルとは別に「モダンライフサイクル」があります。
Nishiki-Hubでも数回登場した言葉「Windows as a Service(WaaS)」の一環で、Windows 10についてはほぼ半永久的な開発が約束されています。そのためWin 8.1以前よりもサポートの状況がややこしくなっていますが、実質サポート終了自体は存在しないと考えられています。
Windows 7や8.1と違うのは、放置していてもセキュリティアップデートが提供されるのに対して、Windows 10では放置していると知らず識らずの間にサポートが終了していることがあります。WaaSでは「最新の状態に保っておくことでサポートは継続される」というポリシーが適用されています。
Windows 10の場合、春と秋の年に2回提供される「機能更新プログラム」でWindows 10自体のバージョンが上がりサポートがリリースから最低18ヶ月間提供されます。例えば、先月リリースされたWindows 10 v20H1の「May 2021 Update」は2022年12月13日までサポートが提供され続けます。
サポートとは、毎月第2火曜日(日本時間では水曜日)に提供される月例アップデートを含めたセキュリティアップデートのことで、これが提供されることでOSやそれに付随するソフトウェアの脆弱性が修正されます。サポートが終了したOSはこのアップデートが提供されず、セキュリティのリスクを常に負うことになります。
つまり、そんなに新機能が必要ではないなら12~18ヶ月に1回機能更新プログラムをアップグレードすればいいというわけです。
ちなみに現在のWindows 10のライフサイクルは以下のようになっています。
バージョン | 開始日 | 終了日 |
---|---|---|
20H2 | 2020/10/20 | 2022/5/10 |
2004 | 2020/5/27 | 2021/12/14 |
1909 | 2019/11/12 | 2021/5/11 |
1903 | 2019/5/21 | 2020/12/8 |
1809 | 2018/11/13 | 2020/11/10 |
1803 | 2018/4/30 | 2019/11/12 |
1709 | 2017/10/17 | 2019/4/9 |
1703 | 2017/4/5 | 2018/10/9 |
1607 | 2016/8/2 | 2018/4/10 |
1511 | 2015/11/10 | 2017/10/10 |
1507 | 2015/7/29 | 2017/5/9 |
騒動
今回の騒動はMicrosoftのライフサイクルにこのような一文が添えられているから発生しました。
マイクロソフトは、2025 年 10 月 14 日まで、少なくとも 1 つの Windows 10 半期チャネルを引き続きサポートします。
半期チャネルというのは今説明した、コンシューマー向けのサポート体制のことを指していて、2025年10月14日の時点で、少なくとも1つの"バージョン"をサポートしているということです。ただ、今のWindows 10の開発状況を見るとおそらく2025年以降もサポートが伸びる、あるいは今月下旬に登場するかもしれない新型Windowsの登場によって2025年にはサポートが終了すると考えるのが妥当なのかもしれません(ただ、それがWindows 10 Sun ValleyかWindows 11なのかは別にして)。
LTSC
今説明したのが半期チャネルと呼ばれるものです。Windows 10にはもう一つサポート方法があります。それは「長期サービスチャネル(LTSC)」です。以前まで「長期サービスブランチ(LTSB)」と呼ばれていたものです。
これは一体何なのかと言うと、Windows 7や8.1に近いサポート体制を持つ企業向けのエディションです。Windows 10は、基本的に年に2回の機能更新プログラムで仕様が変わります。この頻度はWindows 7や8.1と比べると非常に速いペースとなっています。Win 7で例えるとService Packが年に2回ほぼ強制的に適用を迫ってくるという感じになるためです。そのため、ソフトウェア・ハードウェア・システム含め、企業などではそのアップデートに対応するのが非常に困難な場合があります。
そのときに役に立つのがLTSCです。LTSCは機能更新プログラムが配信されません。つまり、機能や仕様の追加は行われないうえ、放置していても大丈夫です。言い換えると、LTSCはサポート中のいかなるアップデートでも、大きな仕様の変更はされないと約束されているというわけです(ただしMS Edgeなど一部のコンポーネントは仕様変更あり)。そのため、企業などはソフトウェアの更新などについて、Windows 10のWaaSに左右されなくなります。
LTSCはサポート期間の長さも特徴です。7や8.1は発売から約10年間サポートが設定されていますが、通常のWindows 10は「アップデート毎に18ヶ月間のサポート」と設定されています。LTSCは7や8.1と似ていて、サポート終了日はリリースから10年後に設定されています。
各サポート終了日は以下の通りとなっています。
バージョン | リリース | サポート終了 | |
---|---|---|---|
LTSC 2015 | v1507 | 2015/7/29 | 2025/10/14 |
LTSC 2016 | v1607 | 2016/8/2 | 2026/10/13 |
LTSC 2019 | v1809 | 2018/11/13 | 2029/1/9 |
次期LTSC
LTSCのリリースは不定期で、最新リリースは2018年リリースのLTSC 2019になっています。次期LTSC(LTSC 2022)は2021年の下半期にリリースされることが発表されており、このニュースリリースでは、そのLTSCから、サポートが5年間に縮まることも発表されています。この5年への変更はLTSC 2022からの変更点であり、おそらく2027年12月14日までと考えるのが妥当でしょう。
LTSC 2022のアップデートは、まもなく登場を控えているWindows 10 Sun Valley(あるいは11、またはSun Valley)の新機能を搭載してリリースされるのでしょう。
まとめ
今回は、久しぶりにWindows 10のサポートを解説してみました。Windows 11が出てしまうと今回の話は殆ど大きく変わってしまうのでそれはまた別途記事にします。
2025年というのは、Microsoftがあくまでも慣例として定めたサポート終了日なんじゃないかと思っていて、Windows 10が最後のWindowsになるという(Win 11が出れば嘘になるが)発言自体を信じるとすると2025年までのサポートということに疑問が生じてしまいますね。
今回は、Tom's Hardwareの思い違いとGIGAZINEの影響力の高さからこの話が話題になりましたが、いい機会だしまとめてみました。ご閲覧ありがとうございました。