錦です。
昨夜、Intelが発表した第12世代Core「Alder Lake」についてのアーキテクチャの詳細が明らかになりましたが、同時にAlder Lake自体の詳細も明らかになりました。
前編はこちらから
Alder Lake
Alder Lakeは、クライアント向けのCPUシリーズです。第11世代CoreとなるTiger LakeとRocket Lakeの正当な後継に当たるCPUです。
最大の特徴は、高性能コア(Pコア)と高効率コア(Eコア)という構成からなる「Intel Hybrid Technology」が採用されています。これによって、負荷の少ないタスクにおける消費電力が減少します。また、電力重視か性能重視かを切り替えることも可能です。
Alder LakeではPコアにCore系統となるTiger Lakeに採用された「Willow Cove」の後継となる「Golden Cove」コアを、EコアとしてAtom系統となるLakefieldに採用された「Tremont」の後継となる「Gracemont」をそれぞれ採用しています。ともにIntel 7プロセスに基づいて製造されているということになっています。これらのコアの詳細は前篇の記事ですでに紹介していますので良ければご覧ください。
Windows 11との相性
Alder Lakeは、Intel Hybrid Technologyを採用する2番めのCPUですが、実際にどのようにタスクを割り振るのでしょうか。
それについても説明がなされており、まずAlder Lakeにはハードウェア的に「Intel Thread Director」と呼ばれるOSと協調してCPUのスレッド割当を行う機能が搭載されています。そして、ソフト側ではWindows 11でサポートが追加されているとのことです。具体的には、Intel Thread Directorが、OSやアプリの必要としている処理をモニターし、Win11のソフトウェアのスケジューラーがコアを割り振るというような感じです。
これは、Windows 10でAlder Lakeが使えないということではなく、あくまでWindows 11のほうがAlder Lakeに適した環境であるということを意味しています。なので、一部のベンチなどの結果では、他のCPUに比べてAlder LakeがWin10とWin11でスコアに差が出る可能性もあります。
コアの割り当て方は、高負荷なタスクはPコアに、低負荷なタスクはEコアに割り当てられます。例を上げれば、動画編集などのタスクはPコアで、その裏で動くOSなどのタスクはEコアで処理されるというような感じです。AIなどではPコアがすべて割り当てられます。
なお、負荷が低くなれば、自動的にEコアに処理が切り替わるとのこと。Eコアで処理できるものはEコアで処理したほうが、消費電力も少なくて、いいこと多いですから、これを自動でしてくれるのはありがたいものです。
このIntel Thread Directorが実際に動作している部分は、発表の41:20から見ることができます。
コアの使い方
コアの使い方はかなり柔軟に設定できるようになっているようで、Golden CoveとGracemont、それぞれ片方のみを有効にしたり、両方有効にしたりするなどできるようです。特にアイドリング時は、省電力のGracemontがタスクをこなすので、待機時の消費電力はRocket Lakeから大幅に削減されていることになるでしょう。
LakefieldのTremontで待機時の電力について、Qualcommに対抗できるレベルまで落ち着いているということもあり、それはGracemontにも引き継がれているのでしょう。
シリーズとして
Alder Lakeは第7世代以来となる「すべてのラインナップを一つのシリーズが賄う」シリーズとなっています。Xeon SPの流れを汲むことが定石となっているCore X系統を除く、メインストリームのデスクトップから、モバイル・ウルトラモバイル(超小型)までを広くカバーシリーズとなります。
Intelによれば、タブレットや極薄ノートパソコン向けの9Wから、デスクトップ向けの125Wまでをサポートするとしています。
ちなみに、ここ最近のIntelの迷走っぷりはこちら。
7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |
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Desktop | Kaby Lake | Coffe Lake | Comet Lake | Rocket Lake | Alder Lake | |
Mobile | Coffee Lake Kaby Lake R Kaby Lake G Whiskey Lake Cannon Lake |
Coffee Lake | Comet Lake Ice Lake |
Tiger Lake | ||
Ultra-Mobile | Amber Lake Y | Amber Lake Y Ice Lake |
チップ
AMDやNVIDIA、そしてIntelもマルチチップレットへ向かっている時代になっていますが、Alder Lakeは引き続きモノリシックダイを採用しており、3Dスタッキングなどの技術も採用されていません。PコアとEコア、GPU・メモリコントローラなどが一つのダイにまとめられています。PCHは別チップですが。
パッケージは3種類用意されており、LGA1700ソケット向けダイ、2つ目がモバイル向け(従来のU/H/UP3にあたる)の50x25x1.3mmのダイ、3つめがウルトラモバイル向け(従来のY/UP4にあたる)の28.5x19x1.1mmのダイとなっています。LGA1700以外のソケットはBGAタイプになっているのは変わりありません。また、PCHが同じパッケージに搭載されているのもモバイル・ウルトラモバイル向けのみで、デスクトップ向けはチップセットが別で用意されることになります。
GPUはPC Watchによると、Tiger Lakeに近しいものと説明されているとのことで、Xe-LPが引き続き採用されると見ていいでしょう。最大EU数も、デスクトップ向けが32EU、モバイル向けが96EUとなっています。
コアの構成
コアの構成の話です。リークと混同するのはあまり良く有りませんが、Nishiki-Hubで使っていた表示方式(Pコアを大文字C、Eコアを小文字cで表す)を使用させていただきます。
コアの構成は、最大8C+8cになり、スレッドは最大24スレッド。16コア24スレッドという摩訶不思議なコアスレッド数になる理由は、Pコアに使われるGolden CoveはHTT(Hyper Threading Technology)に対応するが、Eコアに使われるGracemontが対応しないためで、8C16T+8c8t=16C24Tになってしまったというわけです。
で、ターゲットごとの最大の構成は、デスクトップ向けはAlder Lakeの最大構成8C+8c、モバイル向けは6C+8c、ウルトラモバイル向けは2C+8cとなります。これらは最大構成なので、ここから徐々にコア数が少ない廉価版が派生していくことになります。さすがにGracemontだけでプロセッサを構成することはないと思いますが、Golden Coveのみで構成されるSKUも存在することになるのではないでしょうか。
命令
前編の記事で触れてなかった内容について、少しお話をします。
Golden CoveとGracemontはともに系統としているアーキテクチャが異なるため、対応する命令セットが異なります。そのため、Alder Lakeでの命令セットのサポートはGracemontに足並みをそろえます。よって、Golden Coveがサポートしているすべての命令セットが利用できるわけではなく、Golden Coveがサポートする命令セットの中で、Gracemontもサポートする命令セットのみがAlder Lakeでは有効になります。
よって、AVXはサポートされるものの、AVX256のサポートにとどまったり、新たにGolden Coveに追加されたAMX・VNNIなどが利用できず、DL Boostも利用不可となっています。なので、命令セットの充実さでは、Rocket Lakeに劣っており、AIの機能などが一部利用できないという可能性もあります。
LLC
LLCについての変更点。Alder Lakeでは、キャッシュの構成もまた独特なものになっています。まず、コアごとのLLCですが、Golden CoveはWillow Cove同様に1コアあたり3MBのLLCを持っています。Gracemontは4コアで1つのクラスタを構成し、1クラスタあたり3MBのキャッシュが用意されます。
これは、Eコアが4の倍数コア以外になったときにLLCがどうなるか気になりますが、すくともEコアが8コアである構成のSKUが持つEコアだけでのLLCは6MBとなります。なので8C8cの構成では8Cx3MB+2cluster x3MB=30MBとなるわけです。ややこしいね!
ただ、8コアRocket Lakeから、Pコアもキャッシュ容量が1.5倍に増えていることも有り、16MBから考えると倍増近いLLCの容量となっています。
サポートするインターフェイス
Alder Lakeでは、新たなインターフェイスをサポートしています。
Alder Lake内部のバスもかなり強化されており、CPU-GPU-メモリコントローラ間の帯域が1000GB/sとなっている他、以下2つの新規格をサポートしています。ともにAMDよりも早いタイミングでの採用となっています。
メモリ
メモリは新たにDDR5とLPDDR5をサポートします。慣例に従うと、LPDDR5はAlder Lake-Sではサポートされず、Tiger Lakeの後継に当たるモバイル・ウルトラモバイル向けのみの対応にとどまることになるでしょう。
また、DDR5とLPDDR5のサポートが追加されるとともにRocket LakeまでサポートされていたDDR4とTiger LakeまでサポートされていたLPDDR4XもAlder Lakeで引き続き対応することになります。DDR4とDDR5のDIMMに互換性はないため、マザーボードによってDDR4かDDR5か選ばされるということになるわけですが、個人的な予想としてエントリレベルのマザーはDDR4の対応にとどまるのではないでしょうか。
DDR4のサポートが引き続き行われるのは、DDR5の入手性がまだあまりよろしくないことに対する、ある種の救済措置なのではないかと個人的には予想しています。
Alder Lakeがネイティブでサポートする速度・規格は、DDR4-3200・DDR5-4800・LPDDR4X-4266・LPDDR5-5200となっています。DDR4とLPDDR4Xはネイティブサポートのメモリ速度は変わっていません。
PCIe
そして、PCIeはあらたにGen 5のサポートを追加しています。詳しいレーン数などは明らかになっていませんが、Rocket LakeのGen 4のサポートの仕方を模倣するのであれば、CPUから20レーン分のサポートが用意され、x16をGPU用、x4をM.2 SSD用にするというような感じになるのかもしれません。
そもそも、Gen 5に対応した製品がまだそこまで多く出回っておらず、GPUもGeForce RTX 30/NVIDIA RTX A/Radeon RX 6000シリーズすべてGen 4のサポートにとどまっています。可能性としては、IntelのdGPU「Intel Arc」が一番初めにPCIe 5.0に対応するGPUになる可能性が出てきました(同イベントでInte Arcについても情報が公開されましたが、それはこの次の記事でご紹介します)。
プロセスとリリース
製造プロセスは、Intel 7に名前を変えた「Intel 10nm Enhanced SuperFin」を利用しています。
リリースは今年中とのこと。