錦です。
AMDは、Ryzen 7000シリーズを正式に発表しました。
Ryzen 7000
Ryzen 7000シリーズは、Zen 4マイクロアーキテクチャを採用した新世代のCPUラインナップです。TSMC 5nmを用いて製造されています。
Zen 4では前世代から13%IPCが向上しています。それに加え、今回のRyzenシリーズではクロックの大幅向上が特徴となっていて、Ryzen 7 5950XではIntelでもSpecial扱いである5.5GHzを超え5.7GHzまで達しています。IPCの向上とクロックの向上が合わさってシングルスレッド性能では29%も向上しているとしています。
今回ラインナップされたのは「Ryzen 9 7950X」「Ryzen 9 7900X」「Ryzen 7 7700X」「Ryzen 5 7600X」の4つのSKUです。
コア数 | スレッド数 | ベースクロック | ブーストクロック | L2キャッシュ | L3キャッシュ | TDP | USD価格 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Ryzen 9 7950X | 16 | 32 | 4.5GHz | 5.7GHz | 16MB | 64MB | 170W | $699 |
Ryzen 9 7900X | 12 | 24 | 4.7GHz | 5.6GHz | 12MB | 64MB | 170W | $549 |
Ryzen 7 7700X | 8 | 16 | 4.5GHz | 5.4GHz | 8MB | 32MB | 105W | $399 |
Ryzen 5 7600X | 6 | 12 | 4.7GHz | 5.3GHz | 6MB | 32MB | 105W | $299 |
仕様を見ればおわかりいただけます通り、今回登場した全モデルにおいてシングルブーストクロックが5.3GHz以上となっています。それに加え、全コアベースクロックについても4.5GHzと高いクロックとなっています。その代償なのか16コアの7950Xと12コアの7900XについてはTDPが170Wになっています。裏返せば省電力性よりも性能を重視したとも取ることができますが。
Zen 3からZen 4にかけて少し変わった点がL2キャッシュで、Zen 3ではコアあたり0.5MBだったものが1MBに倍増しています。これが性能に同影響するんかはわかりませんが、少なくとも好影響を与えることは間違いないでしょう。キャッシュ周りでは、3D V-Cacheを採用した製品は今回登場していません。さすがにコスト高すぎるか・・・。
L3キャッシュの容量を基にダイ構成を想定すると、7950Xと7900Xが2 CPUダイ+I/Oダイ構造、7700Xと7600Xが1 CPUダイ+I/Oダイ構造であると見られます。
性能
ではAMDが謳う実際の性能を見ていきます。
こちらはAMDのスライドで明らかになった実際の性能です。前世代の最上位Ryzen 9 5950Xと、今世代の最上位Ryzen 9 7950Xが比較されています。順番が前後しますが、先に画像の右側クリエイティブ性能を見ます。
の性能向上があるとしています。Cinebenchや3Dのワークフローにおいては平均して5950X比で大体1.4倍くらいの性能を発揮していることになります。
ゲーミング性能で
- 「DOTA 2」で+32%
- 「Shadow of the Tomb Raider」で+35%
- 「Borderlands」で+6%
- 「CS:GO」で+13%
としています。ゲームによって開きがあるものの、選べば30%強ほどの性能向上となっています。他のゲームでも気になりますね。これはレビューに期待でしょうか。
ついで、Ryzen 9 7950Xと競合のIntel Alder Lakeの実質的な最上位「Core i9-12900K」との比較です。
ゲーミング性能については5950Xより12900Kのほうが上回ってたこともあって5950Xとの比較ほど大きな開きはありませんが、それでもゲームによっては23%の性能向上となっています。
- 「DOTA 2」で+23%
- 「Shadow of the Tomb Raider」で+14%
- 「Borderlands」で同等
- 「CS:GO」で-1%
ただ、ゲームにも向き不向きがあるようで簡単にRyzenがいいとは言えませんね。いくつかのゲームでは12900Kと同等化それを下回る結果になります。やはりこちらもレビュー待ちといったところ(てかそもそも両方ともエグい性能持ってるのであとは効率と価格で決めればいいと思ったりもします)。
クリエイティブ性能では、
となっています。全体的にコア数で圧倒している感じでしょうか。詳細はわかりませんが、結果だけ見るとクリエイティブ性能ではAMDのが上なのかも(もちろんこれはAMDが公表しているデータであるということには留意しなければなりませんが)。
そして、V-Ray Benchmarkでは、Core i9-12900Kに比べて47%高速にレンダリングできるとしています。また、電力の効率については、Wattあたりの性能が47% 12900Xを上回るともしています。
Ryzen 5がCore i9を上回る
つづいて、AMDが提示するシングルスレッド性能にてついて見ましょう。シングルスレッド性能はAMDとIntel、それにAppleを比べたとき、AMDが最も低いという傾向が続いていましたが、最近はAppleが最下位であることが多いです。そして、AMDはIntelを上回ると謳います。
こちらは、Geekbench 5.4を用いて計測されたとされるシングルスコアです。
- Core i9-12900K:最大2040
- Ryzen 5 7600X:最大2175
- Ryzen 7 7700X:最大2225
- Ryzen 9 7900X:最大2250
- Ryzen 9 7950X:最大2275
i9-12900Kを上位モデルのみならず、Ryzen 5 7600Xでも上回っています。シングルスレッド性能はゲーミング性能に直結するのでゲーマーにとっては嬉しい進化と言えます。
そして、非常に興味深いのは、AMDが出してきたF1 2022のゲーミング性能において、ミドルレンジの「Ryzen 5 7600X」が競合の最上位である「Core i9-12900K」と比較して11%も高速であるというスライド。
その他のゲームでも、Core i9-12900Kと比較した性能が
- Middle-earth Shadow of Warで+2%
- F1 2022で+11%
- GTA Vで-3%
- Cyberpunk: 2077で同等
- Rainbow Six Siegeで+17%
となっており、ゲーミング性能において「Ryzen 5 7600X」が「Core i9-12900K」と同等かそれ以上の性能を持っていることがわかります。AMDは平均して5%としています。
もちろん、Ryzen 5 7600Xは、前世代の同じグレードである5600Xにも勝っており、平均して21%高速だそうです。
効率
今回、Ryzen 7000シリーズはTSMC 5nmが初めて採用されています。これによってより電力効率がましています。効率性については、前世代と比較されています。
AMDによれば、Ryzen 5000番台と比べて、同じ性能のときにRyzen 7000番台は5000番台と比較して62%電力が低く、同じ電力のときは最大49%性能が高いとしています。
TDPごとの性能では、65Wで最大74%、105Wで最大37%、170Wでが最大35%高い性能を発揮するとのこと。低い電力帯で高い効率を発揮しているのは純粋に待機電力の効率化や性能の効率につながるので嬉しいところ。
コアの大きさとSOCの効率
そして、パッケージ内のサイズと効率について、Alder LakeのPコアGolden Coveと比較してZen 4はCPUコア+L2キャッシュで50%小さい面積を実現しているとしています。Zen 4のCPU+L2の面積は3.84mm2だそうです。そして、SOC(共有メモリなど)のWattあたりの性能は1.47倍としており、47%効率だとしています。
なお、この世代からI/Oダイのプロセスルールが14nmから6nmに微細化されているとのこと。もともとI/OダイってGlobal Foundriesが製造していましたが、このタイミングでI/OもTSMCに移管されたんですかね。
AVX-512
Zen 4では新たにAVX-512をサポートしています。AVX-512命令は、512ビットの広帯域のベクトル演算命令とそのエンジンです。3D分野やAI・機械学習においてその能力を発揮します。IntelではCore系のプロセッサでは第11世代Rocket Lake・第11世代Tiger Lake、第10世代Ice Lakeでサポートしていましたが、Alder LakeでIntel Hybrid Technologyを理由に削除されましたが、AMDは今回追加となりました。
AVX-512を用いた性能では、前世代に比べてFP32で1.3倍、int8で2.5倍の性能としており、AIやHPC性能も高いとしています。
マザーボードとプラットフォーム
マザーボードとプラットフォームについても発表がありました。
COMPUTEX TAIPEIにて明らかにされたチップセットは「AMD X670E」「AMD X670」「AMD B650」でしたがそれに加えて「AMD B650E」が追加されるとしています。主な違いはPCIe 5.0のレーン数です。
ストレージ のPCIe 5.0 |
グラフィックの PCIe 5.0 |
OC | その他のレーンの PCIe 5.0 |
|
---|---|---|---|---|
X670E | ○ | ○ | ○ | ○ |
X670 | ○ | ○ | ○ | × |
B650E | ○ | ○ | × | × |
B650 | ○ | × | × | × |
X670とB650Eの違いはOCができるかできないかとなっています。
そして、今回大きな変更点としてソケットの変更があり、AM4からAM5に変わりました。改めてその発表があり、AMDはAM4のようにAM5も長く使われるプラットフォームにしていくとしています。
AM5ソケットでもAM4のクーラーがアダプタ等なしにそのまま利用できるのも嬉しく、すでにおおくの魅力的なクーラーや水枕が登場しているものがそのまま使えますよ。
メモリは、DDR4からDDR5に変更されました。Intel 600番台とは異なりDDR4のサポートはありませんが、DDR5メモリもだいぶ値段が落ち着いてきたので大きな問題ではないでしょう。
そして、IntelのXMPに当たる「AMD EXPO Technology」も発表。こちらは、メモリのOCの規格です。これまではXMPをマザーボードによってAMD CPUでも使えるようにしていましたが、それに加える形でEXPOを追加。つまりXMPもそのまま使い続けられるようです。
EXPO対応メモリはADATA、Corsair、GelL、G.Skill、Kingstoneから登場予定で、最大DDR5-6400になるそうです。
なお、定格のメモリクロックは4800MHzとなっています。
発売
Ryzen 7000シリーズの登場は9月27日からグローバル展開となります。日本円での価格は発表されていませんが、おおよそ4万円台からの提供になる見込みです。
マザーボードについてはX670とX670Eが同時展開、B650とB650Eが遅れて10月の登場となります。