錦です。
今回は、Parallels Desktop 18のトライアル期間を使ってWindows 11をM1 MacBook Airで動作させたので、いくつかの検証をしたいと思います。
Parallels
Parallels Desktop 18では、Windows 11の正規版を簡単にインストールすることができるようになりました。簡単に言うと、自分でISOを用意しなくても良くなった上、これまではInsider Previewのみだったので大きな進化です。
インストールにかかった時間もごくごくわずかで、30分位あればParallelsのダウンロードからWindows 11の起動までいけました。
で、今回は色々気になることがあったので検証します。
Windowsからの認識
今回導入したのはWindows 11 Home。こちらもまだライセンス認証していません。私は今Windows 11 Studentのライセンスを持ってるんですけど、これArm使えます?Parallelsを購入するかさえ決めていないのでとりあえずParallels Desktopの無料期間である14日間はライセンス認証しないでおきます。
で、まずWindowsからApple M1がどのように認識されるのかですが「Apple Silicon」として認識されました。ただ、これはParallels Desktopによってこう設定されているようにも見えます。
そして、タスクマネージャーからの表示ですが、CPU使用率はおそらく一致しているのですが、クロックについてはちょっとおかしい表示になっています。
Windowsのタスクマネージャーではずっと3.2GHzに張り付いているように見えますが、同時にmacOSのターミナルからクロックを確認していたところ、最大1.6GHz程度となっており、クロックは最大クロックを示したままとなっています。
GPUについてですが、Windows向けのApple GPUのドライバがないのでParallels Desktopがドライバ代わりになっているように見えます。3DとCopy以外のグラフを表示させることはできませんでした。
エミュレータの差
Rosetta 2とWindowsのエミュレータですが、性能差については後でのべるとして先にサポートされる命令セットをまとめました。
ちょっと長い表になります。
Windows | Mac | |
---|---|---|
AES | ○ | ○ |
MMX | ○ | ○ |
SS | ○ | |
SSE | ○ | ○ |
SSE2 | ○ | ○ |
SSE3 | ○ | ○ |
SSSE3 | ○ | ○ |
SSE4a | ||
SSE4.1 | ○ | ○ |
SSE4.2 | ○ | |
AVX | ||
FPU | ○ | ○ |
FMA3 | ||
MONITOR | ○ | |
FXSR | ○ | ○ |
LAHF-SAHF | ○ | ○ |
CLFSH | ○ | |
CMOV | ○ | ○ |
CX8 | ○ | ○ |
CX16 | ○ | ○ |
PCLMULDQ | ○ | ○ |
POPCNT | ○ | ○ |
RDTSCP | ○ | ○ |
TSC | ○ | ○ |
TSC-INVARIANT | ○ | |
PREFETCHW | ○ | |
DE | ○ | |
DTES64 | ○ | |
EM64T | ○ | |
PAT | ○ | |
PSE36 | ○ | |
SEP | ○ | |
SYSCALLRET | ○ | |
XD | ○ |
こう見ると、微妙な差はあるもののRosetta 2のほうが使える命令は多そうです。ちなみにRosetta 2はIntelのユーティリティに読み込ませると第1世代Coreプロセッサとして認識されます。
ベンチマーク
では、各種ベンチマークを見ていきましょう。
計測したのは、Geekbench 5とCPU-Z、Cinebench R23です。
ではまず、Geekbench 5から。Geekbench 5ではComputeスコアの計測ができませんでした。多分、ドライバが特殊だからでしょうね。
Geekbench 5で計測したのは、macOSのネイティブとRosetta 2、Windows上では4コア割当、6コア割当、8コア割当で計測しました。Geekbench 5はmacOS上ではネイティブ版とRosetta版で計測することができなのですが、Windows上だとエミュレータの計測ができず、ネイティブのみの計測となりました。
スコアを見ると、Rosettaよりも高いという結構予想外の結果に。そもそもWindwos ArmのGeekbench 5って悲惨な結果のものが多いので、Windows 11 Armの中では最も高いスコアをマークしたと言えるでしょう。
もちろん、ネイティブのmacOSに比べると劣りますが、仮想環境でこの劣化にとどめているのはすごいことです。では、このスコアが競合他社と比較してどれほどのものなのかを見ます。
グラフはわかりやすいように1000を始めにしています。さすが、シングルスコアでIntelを打ち破り一時頂点に立ったApple M1。Windows仮想環境上でも、第11世代デスクトップ向けCoreやZen 3ベースのCPUと張り合えるスコアを発揮しています。
そしてマルチですが、だいたい数年前のミドルクラスデスクトップ向けCPUと同じくらいの性能。現代のCPUだと8Cでは結構高めですが、4Cだとミドルレンジくらいになりますかね。
ついで、CPU-Zのスコアです。CPU-ZはARMにネイティブ対応しておらず、x86で動作するようになっています。
まず、CPU-Zでの情報の読み取りを見てみましょう。
CPU-ZではApple Siliconを読み取ることができませんでした。タスクマネージャーで確認したとき同様クロックはすでに3.2GHzに張り付いたままになっていました。おそらくOSとしてしっかりと読み込めてないんでしょうね。キャッシュも読み込めてないのはCPU-Z側の問題かな?
ということで、CPU-Zでのベンチマークスコアを見ていきます。
CPU-Zのベンチマークでは、シングルが458.6、マルチコアが2221.4となりました。CPU-Zはそれほど持っているデータがないので、比較は今回行いませんが、CPU-Z自体の比較機能を見ると、シングルがi5-7600Kくらい、マルチがi7-6700Kくらいの性能となっています。エミュレータを通しても結構いいスコアをマークしていることがわかりますね。
では、最後にCinebench R23を使います。
マルチをまず比較しますがエグいです。先程まで、とくにGeekbench 5はネイティブで動作していたため、WindowsでもmacOSと似たようなスペックで動作していましたが、CinebenchはArmに対応しておらず、Windowsのエミュレータを通した結果こうなりました。
ではここでシングルスコアを比べます。
超単純な表ですが、これ上のマルチの表と合わせて見てみると、macOSのシングルスコアよりも、仮想Windows上のマルチスコアの方が低いあるいは少し高いレベルであるということがわかります。
先程、同じくx86向けのベンチマークであるCPU-Zのスコアを載せましたが、実はCPU-Zの方は悪い結果というわけではなく、それなりに良い結果でした。つまり、CPU-ZとCinebenchの結果の違いとはおそらく比較的性能劣化が少ないワークロードと、劣化が激しいワークロードがあるということを意味しています。そして、CinebenchはレンダリングテストであるためCPUレンダリングにおいて性能劣化の可能性があると判断しました。
で、Blenderでも触るかぁと思ってBlenderをインストールしました。
なんか、結構前に作ったBlenderのファイルが残ってたのでこれを出力することにしましょう。
レンダリングは一瞬で差がわからず(モデルが簡単すぎた)。ただ、Blender自体の動作が非常に不安定なように感じ、急に応答がなくなり強制終了。3D系は弱いのかな?
プロとスタンダード
無料トライアル中は、プロの機能も使えますが、Parallels Desktopにはスタンダードとプロの2種類があります。主な違いはリソースです。
スタンダードプランでは、4コアCPUと8GB RAMと制限されています。Apple M1の場合、性能コアを全部割り振った上で8GBメモリの制限があるという意味です。すなわち、効率コアの恩恵を受けることができません。一方で、プロプランでは、32コアCPUと128GB RAMに一気に増えます(ただしApple Siliconでは18コアと62GBに制限されるそう)。Apple Siliconの性能をWindowsでも存分に活かしたい方はプロで、私のようにOfficeなどちょっとした内容ならスタンダードでいいと思います。
また、スタンダードでは学割が使え、年間半額の5,200円で利用できます。
まとめ
とこんな感じでParallels Desktop 18を触りました。現在は購入検討の段階ですが、個人的に購入方向で検討しています。理由は単純に学割使えるしOffice問題があるためです。
Office(特にWord)はWindowsとMacを行き来するとレイアウトが潰されます。しかもWindowsとMacで機能差があるので、個人的にはmacOSのWordで完結させたいのですが。なので、macOSで完結しなくともMacとして完結できたらそれでいいやと。ちなみに、Microsoft系のアプリは基本安定して動きます。Visual Studioなんかも動きました。
ただ個人的に、容量不足だけはちょっと心配かな。512GBでも不足に感じるかもしれん(Windowsとその周りのファイルが大きくて・・)。
ゲームは・・・。これまた微妙。一応DirectX 11が動くようですが、ドライバがゲームに最適化されているわけではなさそうなので。個人的にはBootCampが早く登場してほしいなぁと思う限りです。
まだあと2週間弱試用できるので、しっかりと検討したいと思います。