錦です。
阪急電鉄、阪神電気鉄道、京阪電気鉄道、神戸鉄道、西武鉄道、小田急電鉄の各社は「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用し、2023年4月から運賃を値上げすることを発表しました。
鉄道駅バリアフリー料金制度
「鉄道駅バリアフリー料金制度」は、令和3年(2021年)12月24日に国土交通省から発表された新しい制度で、鉄道駅のバリアフリー化を主とした新しい制度となっています。
この制度では以下のことが強調されています。
- 都市部において利用者の薄く広い負担も得てバリアフリー化を進める枠組みを構築
- 鉄道駅のバリアフリー化により受益するすべての利用者に薄く広く負担をいただく制度
- 地方部において既存の支援措置を重点化
- 補助率を現行の最大1/3から1/2に拡充
今回この制度の活用を発表した企業は、神鉄を除き大手私鉄に分類されるため前者の都市部にあたります。神鉄も大都市神戸を走ることから都市部にあたります。
一応名目上ではバリアフリー化のための料金なので、バリアフリー設備の利用料と考えればよいでしょう。
各社の値上げ幅とバリアフリー化
では、各社の方針を見ていきます。
阪神
定期外 | 通勤定期 1ヶ月 |
通勤定期 3ヶ月 |
通勤定期 6ヶ月 |
通学定期 | 小児 |
---|---|---|---|---|---|
10円 | 380円 | 1080円 or 1090円 |
2,050円 or 2,060円 |
設定無し | 値上げ後の半額 |
阪神電鉄では神戸高速線を除く全ての路線・区間にて運賃にバリアフリー料金が上乗せされて収受されます。期間は2023年度〜2035年度としていますが、2036年度以降も継続される予定としています。上乗せ開始は2023年4月1日からとなります。
- 2042年度頃を目処に全駅へのホーム柵(可動式または固定式)の整備
- すでに設置済みのエレベーター、エスカレータ等の段差解消施設やバリアフリートイレ等について適切な更新・維持管理
- 段差解消・バリアフリートイレの未整備駅について、敷地が狭隘などの立地に制約はあるが、整備に向けて引き続き検討をすすめる
興味深いのは、全駅への可動式または固定式のホーム柵の設置です。阪神電鉄では大阪側のターミナルである大阪梅田駅には可動式ホームドア、神戸側のターミナルである神戸三宮駅に可動式のロープ型ホーム柵が設置されており今後これが進むものと考えられます。
一応、神戸高速線も料金は対象外ですが、山陽電鉄の管理化である西代駅を除きバリアフリー化の対象にはなっているようです(ただし神戸高速線は神戸高速鉄道が施設保有なので神戸高速鉄道が行うんですかね?)。
阪急
定期外 | 通勤定期 1ヶ月 |
通勤定期 3ヶ月 |
通勤定期 6ヶ月 |
通学定期 | 小児 |
---|---|---|---|---|---|
10円 | 380円 | 1080円 or 1090円 |
2,050円 or 2,060円 |
設定無し | 値上げ後の半額 |
阪急電鉄では神戸高速線を除く全ての路線・区間にて運賃にバリアフリー料金が上乗せされて収受されます。期間は2023年度〜2035年度としていますが、2036年度以降も継続される予定としています。上乗せ開始は2023年4月1日からとなります。
- 2040年度末頃までに全駅にホーム柵(可動式または固定式)の整備
- 神戸線 春日野道駅では2022年中にバリアフリー設備の設置を完了
- 中津駅はエレベータを設置するなどによってバリアフリールートを確保するとともに合わせて可動式ホーム柵をあわせて整備することにより、全線のバリアフリー化を目指す
阪急では、十三駅の一部のホームにすでに可動式ホーム柵(ドア)が設置されています。その拡大を2040年までに行うとのことですね。特に強調されたのは中津駅で、駅の構造上の問題から唯一バリアフリールートが確保できていないが、エレベータを設置するなどで確保するとしました。高速神戸線については阪神電鉄と同様です。
神戸鉄道
神戸鉄道の値上げ額(バリアフリー料金)を見ます。
定期外 | 通勤定期 1ヶ月 |
通勤定期 3ヶ月 |
通勤定期 6ヶ月 |
通学定期 | 小児 |
---|---|---|---|---|---|
10円 | 380円 | 1080円 or 1090円 |
2,050円 or 2,060円 |
設定無し | 値上げ後の半額 |
神戸鉄道では神戸高速線を除く全ての路線・区間にて運賃にバリアフリー料金が上乗せされて収受されます。期間は2023年度〜2030年度としていますが、2031年度以降も継続される予定としています。上乗せ開始は2023年4月1日からとなります。
では、神戸鉄道のバリアフリー化の方針です。
神鉄では、ホーム柵への言及はなく、主にスロープや点字ブロック、エスカレータやエレベータといったバリアフリールートを確保する取り組みが主点です。特に神鉄は超都会の中を走るというわけではありませんので、エスカレータやエレベータ未整備の駅も多く、その設置を急ぐといったないようでした。
京阪
京阪の値上げ額(バリアフリー料金)を見ます。
定期外 | 通勤定期 1ヶ月 |
通勤定期 3ヶ月 |
通勤定期 6ヶ月 |
通学定期 | 小児 |
---|---|---|---|---|---|
10円 | 380円 | 1050円 or 1,060円 |
1,990円 or 2,000円 |
設定無し | 値上げ後の半額 |
京阪電鉄では、京阪線(本線・鴨東線・中之島線・交野線・宇治線)を対象として、運賃にバリアフリー料金が上乗せされて収受されます。期間は2023年4月1日からとしており、期間は2023年度〜2025年度、2026年度以降は検討予定としています。
- ホームドアを4駅8番線に整備
- 2023年度には枚方市駅に設置予定
- テレビ電話機能付きインターホンの前駅設置
- 駅放送システム更新による放送内容の充実や行先表示器の新設などによって、運行情報の提供強化
- エレベータ3駅6基の更新
- 筆談アプリ搭載案内用タブレットの配備
- 2編成12両の車両更新(新車導入)
京阪はホームドアの全駅設置ではなく、重点的な設置を方針としました。来年度の枚方市駅への設置は今回が初めての情報かと。また、ホームドア導入によりドア位置を合わせるため2編成12両の車両更新を計画に含めています。これはおそらく新車の導入と見られます。
西武
西武の値上げ額(バリアフリー料金)を見ます。
定期外 | 通勤定期 1ヶ月 |
通勤定期 3ヶ月 |
通勤定期 6ヶ月 |
通学定期 | 小児 |
---|---|---|---|---|---|
10円 | 600円 | 1,710円 | 3,240円 | 設定無し | 値上げ後の半額 |
西武鉄道では、全線を対象に料金が徴収されます。1乗車あたり10円を基本としています。徴収開始時期は2023年3月頃としています。この頃にダイヤ改正でもあるんですかね。
- 2030年度までに28駅84番線にホームドアを整備
- 2025年度までに6駅17番線のホームドア整備の拡大
- 2026~2030年度に19駅45番線のホームドア整備の拡大
- 2駅1箇所にスロープを設置
- 2030年度までに64駅に運行情報提供設備を設置
- 2025年度までに25駅(内22駅で今回の制度を活用)
- 2026~2030年度に39駅
- 内方栓付き点状ブロックの設置
- 視覚障害者用設備の設置
- ホームと段差隙間の縮小
- 車両のフリースペースの整備
小田急
定期外 | 通勤定期 1ヶ月 |
通勤定期 3ヶ月 |
通勤定期 6ヶ月 |
通学定期 | 小児 |
---|---|---|---|---|---|
10円 | 600円 | 1,710円 | 3,240円 | 設定無し | 設定無し(一乗車一律50円) |
小田急電鉄では、全線を対象に料金が徴収されます。特徴は小田急が実施している小児料金の一律50円については維持するという点で、小児料金にたいしての設定がない点です。徴収開始時期は2023年3月頃としています。
- 2032年度までに小田原線 新宿駅〜本厚木駅の各駅と江ノ島線の中央林間駅・大和駅・藤沢駅の計37駅107番線の整備完了を目指す(登戸駅は一部ホームのみ)
- ホームドア設置に合わせてホームと車両の間にある段差・隙間を縮小することを目的にホームの嵩上げや櫛ゴムの整備等を2032年度までに96番線で実施
- 老朽化しているエレベータを42基、エスカレータを33基更新
- 運行情報提供設備も順次更新
まとめ
定期外 | 通勤定期 1ヶ月 |
通勤定期 3ヶ月 |
通勤定期 6ヶ月 |
通学定期 | 小児 | 主な方針 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
阪神 | 10円 | 380円 | 1080円 or 1090円 |
2,050円 or 2,060円 |
設定無し | 値上げ後の半額 | 全駅ホーム柵設置 |
阪急 | |||||||
神鉄 | EV等設置 | ||||||
京阪 | 370円 | 1,050円 or 1,060円 |
1,990円 or 2,000円 |
主要駅ホーム柵設置 新車導入 |
|||
西武 | 600円 | 1,710円 | 3,240円 | 主要駅ホーム柵設置 | |||
小田急 | 600円 | 1,710円 | 3,240円 | 設定無し |