Nishiki-Hub

国内外のPC/PCパーツ/スマホ/Appleなどの最新情報を取り上げています

ArmとQualcommのライセンス対立が激化 ~ ArmがNuvia向けライセンスを解消することを通告した模様

3行まとめ

ArmとQualcommは、ライセンス問題で対立を繰り広げていますが、Bloombergによると、ArmがQualcommに対するライセンスを取り下げることを通告したことがわかりました。なお、この通告には60日間の猶予が与えられています。

ライセンスを巡る対立

Armは、同社が開発した命令セット(ISA)や、そのISAを採用した「Cortex」や「Neoverse」といったCPUのアーキテクチャなどの知的財産(IP)を提供するライセンスを販売することをビジネスにしているファブレス半導体企業です。

Armが提供するライセンスには、ALAとTLAの2種類があり、ALAはARM ISA(命令セット)を利用することができるライセンスで、TLAはArmが開発したARMベースの成果物を利用することができるライセンスです。

具体例を上げるとAppleは、ALAを締結し、ARM ISAを採用する自社のアーキテクチャを開発しています。他方でMediaTekは、TLAを締結し、Armが開発したCortexを用いてSoCを開発しています。

Qualcommは、長年TLAを利用してSnapdragonシリーズにCortexシリーズのCPUデザインを搭載してきました。しかし、2021年にAppleから独立したエンジニアが設立したNuviaを買収した事により、事情が変わります。NuviaはALAを締結しており、ARM ISAを用いた自社のアーキテクチャを開発しています。

Nuviaの買収により、QualcommはNuviaとして契約したALAに基づき、自社設計のアーキテクチャの開発を行いました。しかし、Armはこの動きについて、禁止された"ライセンスの譲渡である"として契約違反と主張し、2022年に提訴しました。

その後、Qualcommは、ALAに基づくARM ISAをベースとした独自IPであるOryonアーキテクチャを発表し、実際の製品として「Snapdragon X Elite」と「Snapdragon X Plus」を今年6月に発表・発売、また昨日には第2世代Oryonを採用すると謳うモバイル向けの「Snapdragon 8 Elite」を発表しています。

ライセンス解消

Armは最近、Qualcommに対してライセンス契約の解消を通告したようです。この通告は60日間の猶予が設定されており、Qualcommにはその間のアクションが求められます。

Qualcommは日本経済新聞やBloomberg、ロイターの取材に対してArmを非難する内容のコメントを寄せており、Armはコメントしていません。

今後

もし、この通告通りにライセンスが解消された場合、MicrosoftやHP、Lenovoなどが発表あるいは販売しているCopilot+PCや、Pixelなどの一部を除いたAndroidスマートフォンの多くの販売が停止される可能性があり、市場が大混乱するおそれがあります。

前述の通り、Armは契約解除までに60日間の猶予を与えており、この間の両者の対応に注目が集まります。ロイターは裁判よりも前に両者が和解するだろうと楽観視するアナリストや投資家の意見も報じています。

なお、ArmとQualcommの法廷闘争は12月からデラウェア州の連邦裁判所で審理が始まる見込みです。

関連リンク