Nishiki-Hub

国内外のPC/PCパーツ/スマホ/Appleなどの最新情報を取り上げています

Qualcomm、Oryon CPUの戦略を説明 〜 スマートフォンなどにも展開する計画

錦です。

Qualcommは、Snapdragon Summit最終日となる現地時間17日、「Oryon」CPUのより詳しい戦略を明らかにしました。

Oryon CPU

Oryon CPUは、Snapdragon Summitの2日目に発表されたQualcommの新しいCPUブランドです。現在、QualcommのCPUブランドは「Kryo」ですがこれを置き換えるものになると見られます。

KryoとOryonはともにArmが開発している「ARM」命令セット(ISA)をベースにするものの、KryoはArmが設計したCPUコア「Cortex」を用いたCPUであるのに対して、OryonはQualcommの独自設計のCPUコアを用いたCPUであるという違いがあります。Qualcommとしては、同じくARM ISAを用いるものの独自CPUを用いているApple SiliconにCortexが性能で劣っている状況から脱して、別の競合であるMediaTekのDimensityやSamsungのExynosと差別化を図りたいという思惑が受け取れます。

Oryon CPUはブランド名で、アーキテクチャ名ではないと見られるものの現時点でアーキテクチャ名が伏せられています。

nishikiout.hatenablog.com

戦略

Oryonは、Apple Mシリーズを主な競合としていますが、おそらくターゲットとしているのはAppleアーキテクチャの方で、スマートフォン向けにもOryonは展開されるそうです。つまり、アーキテクチャスマートフォンからパソコン、そしてIoT向けSoCやXR SoCで共通させるということになります。これはIntelAMDAppleなど多くの半導体メーカーの戦略と一致しています。ただ、面白いのはQualcommはCortexを締め出そうとしているということです。

Qualcommは最先端の技術をまずスマートフォン向けのSnapdragon 8シリーズあるいは、Snapdragon 8+シリーズから投入していきますが、OryonについてはまずPC向けから導入されることになります。つまり、Snapdragon 8cxの後継からOryonが投入されていくことになります。

そしてSnapdragon 8に搭載され、Snapdragon 8 XRに続く・・・という流れでしょう。

SnapdragonはIntel AMDの牙城を崩せるか

Snapdragonの製品自体は、Apple Siliconと競合する関係に向かうと見られますが、実際にはIntelAMDが寡占しているWindowsラップトップ史上でどれだけ存在感を発揮できるのかがしばらくの課題になるような気もします。Microsoft自体はSnapdragonをベースとした「Microsoft SQ」シリーズを自社の主力タブレットPC製品の一つである「Surface Pro 9 5G」に採用するなどWindows on ARMの取り組みを加速しています。

その一方で、SnapdragonはIntelの数世代前のCPUに性能が追いつくのがやっとという状態なので、まずはOryonで性能をIntelAMDに追いつかせることになるでしょう。

そしてもう一つの大きな課題、Armにネイティブ対応したソフトウェアを増やすことも重要視しているようで、Adobeは徐々にArmネイティブ製品を増加していることを例に挙げて移行が進んでいることをアピールしました。実際、Microsoftと協力して、Windows Dev Kitをリリースしており、開発者にArmへのネイティブ対応を積極的に呼びかけています。

最後に、Arm PCへの移行です。やはり、Snapdragonの存在感を示すには、個人の購入のみならず、企業の集団導入も大きな鍵となるでしょう。ただし、企業として過去の資産をそのまま利用することができるIntelAMD CPUを搭載するPCのほうが負担も少なく嬉しいものです。QualcommとしてはWindowsエミュレータなどで移行のハードルを下げたいところでしょう。

この点については、今回の発表で大手金融グループであるCitiが導入を開始することを明らかにしました。実際、Snapdragonデバイスを導入すると、バッテリー持ちは格段に良くなったり、発熱が少ないことからデバイス自体が軽量になったりというメリットも有るため、Qualcommとしてはそこをアピールしていきたいものでしょう。

鍵となるのは2024

Qualcommは「我々の製品の本格的な普及という点で、2024年は転換点になる」としており、Oryonが実際に市場に出回るのは2024年になることでしょう。どんなラインナップで攻勢をかけてくるのか、個人的には楽しみです。

関連リンク