錦です。
AMDやIntel、TSMCを始めとした大手IT関連企業が中心となって「Universal Chiplet Interconnect Express(UCIe)」と呼ばれる新しい標準と、それを策定する業界団体が設立されました。
UCIe
「Universal Chiplet Interconnect Express」(以下、UCIe)は、現在主流になりつつあるチップレット構造において、チップレット間の通信(インターコネクト)を標準化した規格です。
また、UCIe策定のための同名のの業界団体の設立も発表され、Advanced Semiconductor Engineering, Inc. (ASE)、 AMD、Arm、Google Cloud、Intel、Meta、Microsoft、Qualcomm、Samsung、TSMCがプロモーターとして参画します。ここで注目したいのはIntel、Samsung、TSMCという主要な3つのファウンダリ企業が参画している点と、Intel、AMD、Arm、Qualcommというファブレス(IntelはIDM)の主流企業が参画しているという点です。このグループは今年後半によりオープンなコンソーシアムを設立するとしています。
UCIeの最終的な目標は、プロトコルの追加、先進的なチップレットのフォームファクタを創ること、チップレットの管理をすることなどとされています(ゴールには「チップレットの管理」とだけ書かれてたのでこの世のすべてのチップレットを管理してやるぜ!というよりかはチップレットの管理システムを創るというようなニュアンスかと)。具体的には、チップレットのためにオープンでユビキタス*1なエコシステムを確立することだそう。
私の解釈が正しければ、Intel CPUにAMD GPU、Qualcomm モデムチップを載せて「超・異種混合」パッケージが(実現するか、動作するかどうかは別にして)理論上可能になるということみたいです。
UCIe 1.0
チップレット構造が主流になったことで、機構によって開発元や製造プロセスが異なるものを同じパッケージに搭載できるようになりました。例えば、これはチップレットではないかもしれませんが、Intelの「Kaby Lake-G」はGPUがCPUと別のダイになっていることでIntel CPUにAMDのGPUを同じパッケージに載せることができた他、AMDのRyzenではCPUダイとI/Oダイを別にすることによって製造プロセスが異なる機構を同じパッケージに載せることができるようになりました。
UCIeは異種混合型のSoCを促進するための規格で、その初めとなるが「UCIe 1.0」です。UCIe自体はダイ・ツー・ダイのI/O物理レイヤー、ダイ・ツー・ダイのプロトコル・ソフトウェアをターゲットにしています。
UCIeについては、PCIeのチップレットインターコネクト版のようなもの、PCIeとCXL(Compute Express Link)のプロトコルを採用しています。ただし、PCIeではPCIeのようと(SSDの接続やGPU接続など)では高速ですが、インターコネクトとしては低速すぎるということから、インターコネクト用に高速化したのがUCIeであるとのこと(って解釈でいいのかな)。多分、このプロトコルは将来的に独自のものになる(PCIeと互換性を保ちながら)と見られます。
現在AMDがInfinity Fabricを展開していますが、似たような役割を持つのがUCIeです。
説明
技術的な解説を一応しますが、かなり難しいので間違えていたらすみません。
まず内部的にはUCIeはIntelのAIBテクノロジーをベースになっています。これは既にオープン化された技術です。
そもそもUCIeが何をするコネクタなのかという点ですが、UCIeはチップレット間の通信に必要な規格を統一するために電気信号の規格・物理レーンの数・バンプピッチをカバーしています。これはすなわち、チップレット間のデータの物理的な「送り方」と「受け取り方」を定義しています。曖昧に言うと、「ダイ・ツー・ダイ」の「ダイ」の部分を定義した規格であるということです。現実世界で例えるなら、「郵便ポストに入れる」というのと「郵便受けで受け取る」が定義されているような形です。
対して「ツー」の部分、送られる方法の部分は定義されていません。いわゆるブリッジ・パッケージングの部分ですが、定義されていないというよりかは、どの規格にも依存しないというのが正解みたい。
前述の郵便で例えると、UCIeは「郵便ポストに入れる」という行為と「郵便受けから受け取る」という行為は決まっているものの、送信と受信を結ぶ輸送方法は決まっておらず、それはバイクかもしれないし、徒歩かもしれない、馬かもしれないというようなそんな感じ。輸送方法の例としては、EMIBやForveros、Infinity Fabricアンドモアといった感じになるそうです。
なお、UCIeには「Advanced Package」の仕様があります。こちらは前述の「Standard Package」より踏み込んだ仕様が策定されていて、ちょっとその部分は難しすぎたので省略します。
関連リンク
*1:どんな用途にも使えるような みたいな意味