そういえば、8月22日にARMのNASDAQへの上場申請が発表されましたね。その話をしましょう。
ARMの流れ
ARMは英国・ケンブリッジに本社を置く、Armアーキテクチャの命令セット(ISA)及び、ARMベースのIPを提供するファブレス半導体企業です。大本をたどるとApple・エイコーン・VLSIによる合弁企業として立ち上がった歴史がありますが、現在は特にAppleについて特筆すると経営にたいして大きな影響力はありません。
ARMは2016年にソフトバンクにより3.3兆円で買収され、100%の株式をソフトバンクと関連企業が保有しています。
これが大きく動いたのは2020年9月の出来事です。ソフトバンクは、ARMをNVIDIAに4.2兆円で売却することを発表しました。ここからゴタゴタが始まります。
まず、ARMが持つ知的財産の市場での重要度についてが大きな課題となりました。ARMは2016年にソフトバンクに買収されるまでは上場していました。その後ソフトバンクに買収されていますが、ソフトバンクは半導体製造企業ではないため基本的にARMは半導体市場において中立を保つことができました。一方で、ARMを用いてTegraやGraceなどの事業を展開していたNVIDIAがARMを買収してしまうと、市場競争に大きな影響を与えると考えられました。
この影響で、主にソフトバンクがある日本、ARMがある英国、NVIDIAがある米国、ちょっと色々あってゴタゴタに参加している中国の各市場当局からの反対にあい、2022年2月に買収を断念しました。ただ、このときにソフトバンクとNVIDIAの間で協定が結ばれ、NVIDIAはこれまでに買収にかかった費用(12.5億米ドル)は放棄するものの、今後20年間のARMライセンスを無償で保持することになりました。
そしてソフトバンクは、なんとかARMで利益をあげようと、新規株式公開(IPO)を目指すこととなり、2023年に入って規制当局に上場申請をし、先月23日にNASDAQへ上場申請となりました。
上場後の話
さて、ここからは今後の話をしていきましょう。
まず、ARMとソフトバンクは、評価額の目標を500億ドル〜550億ドルとしていると報じられています。これは、ソフトバンクがARMの株式25%を取得したときの評価額640億ドルより下がっています。
そして、ロイターによると、Armが投資協議を進めるうちにApple、Samsung、NVIDIA、Intel、Cadence Design Systems、Synopsys、Alphabet、AMDなどが2500万〜1億ドルの投資を行うことで同意した事がわかりました。これらの企業に売却するためにARMとソフトバンクで10%の確保するとのことで、少なくともこれらの企業は合計で10%の株式を確保するそう。
ロイターによると、Amazonはこの協議に参加していたものの、この枠組みでの投資に参加しないことを決定したようです。
買収阻止できるか
さて、ここから気になるのは、ARMが上場後、TOBなどによりARMがどこかに買収されるおそれはあります。そうしないためにも時価総額を高め、買収を防止することが必要です。特に、この10%の株式の重みがどうなるかは不明ですが、AppleやQualcomm、Samsung、Googleなど、ARMがどこかに買収され独占されると困る企業は多いため、上場後のこれらの企業の対応が気になります。