Nishiki-Hub

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2023年のテクノロジー系の話題を振り返る

さて、今年も残すところあと少し。今回は2023年をNishiki-Hubで振り返ります。

1年を通して

AI

やはり、この一年間キーワードになったのは「AI」です。

2022年にChatGPTやStable Diffusionなどの生成AIの登場から「第3次AIブーム」が発生しました。これは2023年になると更に広まり、Googleの「Bard」やMicrosoftの「Copilot」、音楽生成の「SunoAI」などの登場へ繋がっています。来年にはもっと生成AIを用いたサービスが増えるでしょう。Nishiki-Hubとしてもなにか実現できないか模索しているところです。

その生成AIを支えたのは半導体であることに間違いありません。半導体も今年様々な事が起きました。

コンシューマレベルのCPU/GPUでいうと、ラップトップ向けCPUではNPUが統合されるようになりました。Qualcommはもとより、AMDRyzen AI、IntelはAI BoostをそれぞれNPUとして搭載しました。これらのNPUはWindowsMLやDirectMLなどによってWindowsで扱えるようになり、AIとともにGUIGPUに次ぐ革命とまで言われました。QualcommもCPU・GPUとともにNPUを大幅に強化した「Snapdragon X Elite」を発表しましたね。

さらに、AMDは2024年にAI性能をAPU全体で3倍に引き上げる計画を表明しています。

さらに、NVIDIAは「Grace Hopper Superchip」を「GH200」として製品化。2024年以降にはおそらくGH200をベースとしたスーパーコンピューターがTOP500のランキング上位に食い込んでくるでしょう。 AMDも負けていません。Instinct MI300XはH100よりも高い性能を発揮していることが確認されています。NVIDIAAMDの戦いに、Intelも「Intel Datacenter GPU Max」でAI向けGPUで優位に立とうとしています。TOP500では、Intelが「Max」という新しいブランドで導入した「Sapphire Rapids-Max」と「Intel Datacenter GPU Max」で構成されたスパコン「Aurora」が富岳を上回る2位という順位になりました。

国内に目を向けます。日本でも、経産省などが主体で国産LLMの開発を進めています。サイバーエージェントは社内で日本語特化型の大規模言語モデル(LLM)を開発し公開しました*1。さらに、ソフトバンクは子会社SB Intuitionsが2024年に、でNTTは2023年度内に国産生成AIを提供する計画を明らかにしています。*2*3

AIインフラでは、さくらインターネットがAIのトレーニングで屈指の性能を誇る「NVIDIA H100」を2,000基以上採用し、2 EFLOPSのクラウドインフラを整備することを発表、2024年にサービスを開始します*4。これによって、国内の演算リソースも来年以降に引き続き拡張されていくことが確定しています。

経産省NVIDIAのCEO ジェンセン・ファン氏と度々面会を行い、日本への投資とGPUの供給の増加の約束を得ました*5

また、スパコン「富岳」を用いた和製の生成AIの開発も、東工大富士通などによって開発が進められています*6

省電力

一方で省電力化も重要となりました。今年は、ロシアによるウクライナへの侵攻などもそのまま影響しエネルギーに対する意識が高まりました。世界のエネルギーを数%という量で消費するデータセンターでもこの動きは重要となり「高密度」プロセッサが重視される時代になりました。その結果、AMDから「Bergamo」という名称でソケットあたり最大128コア256スレッドというx86史上最大のCPUが登場したほか、Arm系ベンダーでは、Ampereが「Amepre One」で最大192コア、AWSが「Graviton4」で96コア、Microsoftが「Cobalt 100」で128コアを実現。そして、NVIDIAは72コアを実現した「Grace」CPUを製品化しました。Intelもソケットあたり288コアのCPU「Sierra Forest」を予告しているため、来年は高密度プロセッサが出揃い、エネルギー問題に対しての対応が見られるはずです。

コンシューマレベルでも省電力化が進みました。Apple Siliconの登場によって特にモバイルPCにおいて省電力の競争が高まりました。結果として、AMDはZen 4とZen 4cのハイブリットアーキテクチャを部分的に導入。Intelも「Meteor Lake」でPコア・Eコアとともに新しくLP Eコアを導入した新しいアーキテクチャを採用し、更にタイル構造の利点を生かした「省電力アイランド」の設計を導入することでアイドル時の省電力化を実現します。

そして、Qualcommは圧倒的な省電力を実現しているものの、性能が低かったという欠点を、独自アーキテクチャの採用で解消し、さらに競合を大きく上回るAI性能を誇る「Snapdragon X Elite」を発表しました。2024年に搭載製品が登場します。AppleもM3シリーズを投入し、2024年に向けた各社のの動きがよく分かる年末になりました。

製造技術

製造技術も重要です。

まず、IntelはMeteor Lakeで「Intel 4」プロセスを導入しました。そして、Appleは「Apple A17 Pro」「Apple M3」シリーズにTSMC 3nmプロセスを世界で初めて採用しました。これにより半導体の製造技術の世代が進みました。ただ、GAAFETのプロセスの採用例が今のところ見つかっていないのがちょっと残念ですかね。みんなSamsung見てあげてよ!!

そして、国内ではトヨタソフトバンク、キオクシア、NTT、ソニーデンソーNEC三菱UFJ銀行の8社の出資で誕生し、IBMから技術供与を受けたRapidusは改めて2nm製造への道筋を示しました。特に、経産省AppleNVIDIAAMDなどの世界的に重要なファブレス企業を集めた会合では各社がRapidusに関心を示し、ジムケラー氏がCEOを務めるTenstorrentが提携を発表するなど面白いことになってきました。

そして、岸田首相肝いりの政策である半導体企業の誘致ですが、こちらも今年大きな進展がありました。Micronは広島でEUVプロセス導入を発表したほか、SamsungIntelなどの世界的半導体企業が国内に開発拠点を設置することを表明するなどしています。

さらには、TSMCが第1工場の12nmより先端なプロセスの製造を行う、第2工場・第3工場を検討しているとまであるのだから、岸田首相の半導体政策は大いに成功していると見ます。

製造技術についても、キヤノンがナノプリントイン技術を実現した半導体製造装置「FPA-1200NZ2C」を発売しました。国産半導体の再起に道しるべができました。

最近の話題がもっぱら半導体に傾倒しすぎな気がするので、そろそろ元に戻そうかな・・・。と思いました。

とまぁ、割と今年は長期的な話題が多かった印象です。2024年や2025年、あるいはそれ以降に実現することが多かったです。この先の世界情勢の予測はできませんが、テクノロジーがより面白く、楽しく進化することを切に願います。

(以下、参考文献)