日本経済新聞(Nikkei Asia)が、日本のキオクシアと米国のWestern Digitalの合併が打ち切りになったと報じています。背景には、キオクシアに企業連合の一部として投資しているSK Hynixがこの合併に反対を表明したことがあるようです。
経緯
経緯としては結構色々あります。
KIOXIA(キオクシア)は、東芝の経営難によって半導体事業が切り離されて独立した企業です。一度は上場を目指しましたが、米国の対中輸出制限やら新型コロナの影響で上場が延期。現在も東芝が40%以上の株式を保有し筆頭株主となっています。これが、KIOXIA単体での現状です。
KIOXIAとWestern Digitalの関係を見ていきましょう。
1992年、東芝は四日市工場を発足させ、93年に16Mbit DRAMの生産を開始しました。その後2000年にSanDiskと東芝が連携を開始、2002年からSanDisk製品の製造が四日市工場で始まります(このときSanDiskの製造拠点が四日市に移りました)。
時代は流れ2015年、WDはSanDiskを買収しました。このときにSanDiskと東芝の連携は、WDと東芝の連携として引き継がれました。
一方、東芝は2016年に巨額の損失を計上し経営難に陥りました。東芝は2015年の粉飾決算の影響があり、債権手段が限られる中で、すでにこの時点で東芝メディカルシステムズという優良子会社をキヤノンに買収したばかりであり、債務超過状態から脱するために、半導体メモリ事業の売却を余儀なくされました。
そして、2017年に東芝から半導体メモリ事業が東芝メモリとして独立しました。東芝はその後、ベインキャピタルを中心とした企業連合が買収目的会社Pangeaを立ち上げ、東芝保有の全株式を2兆円で譲受しました。この際、東芝メモリは、日HOYA・米Apple・米Kingstone・米Seagate・米Del・韓SK Hynixlなどから間接的に出資を受けました。その後、東芝は東芝メモリに再出資し、現在は40.64%の株式を保有しています。
Pangeaはその後東芝メモリを吸収合併し、元々の東芝メモリが消滅、Pangeaが東芝メモリへ社名を変更。
更に2019年に東芝メモリが東芝メモリホールディングスに株式を移転し、東芝メモリはその傘下になりました。同年、東芝メモリホールディングスはキオクシアホールディングス、東芝メモリはキオクシアに社名をそれぞれ変更。現在に至ります。
WDは結局、KIOXIAの大量の株式保有にこの時点で成功しておらず、あくまで提携先となっていました。
ところが2021年、WDがキオクシアを買収すると報じられました。そして最近になってこの話に進展があり、10月中に合併が成立するとまで報じられました。しかし、先述のPangeaの時点で出資を行ったSK Hynixがこれに反対を表明。WDが交渉の打ち切りを通告したということになります。
提携は継続
Nikkei Asiaは、WDとキオクシアは引き続き提携を継続すると予想されるとしており、おそらく現状維持が続くものと見られます。ただ、キオクシアとしては、一刻も早く東芝保有株を現金化したそうなので、上場に向けて動くのか、注目が集まります。