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JASM(TSMC)、日本での6 / 7 nmの製造とトヨタの資本参加を発表 〜 熊本に第二工場が27年末に稼働予定

3行まとめ

TSMCの日本国内の工場を運営する子会社であるJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)は、熊本県に国内2件目となる工場の建設と、トヨタ自動車の資本参加を発表しました。

トヨタの資本参加

JASMは、TSMCの子会社で、デンソーとソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)が少数株主として参加する企業で、日本国内での半導体製造事業を行います。具体的には、熊本県菊陽町にて建設されている工場の管理や運営が中心となります。

この度、後述する第二工場の建設発表と合わせてJASMの少数株主に新たにトヨタ自動車が参加することが発表されました。新たな株式比率は、TSMCが約86.5%、SSSが6.0%、デンソーが5.5%、トヨタ自動車が2.0%となります。

第二工場

TSMCは、日本政府の支援を受けて日本国内に工場を建設する計画を進めています。その1つ目となるのが、今年の24日に開所式が行われ、年内に稼働開始する熊本工場(以下、第一工場)です。第一工場では、デンソーとSSSなどの日本国内での需要に応える22/28nmプロセス、12/16nm FinFETの製造が行われます。

つづく第二工場ですが、計画の存在自体は以前から報道されていましたが、先月末、工場が位置する菊陽町選出となる農林水産大臣から明らかになっていました。この際、一時的にTSMCが否定しましたが、今回正式に発表されました。

第二工場では、第一工場と合わせて40nm、22/28nm、12/16nm、6/7nmの製造が行われます。現時点ではそれぞれのプロセスルールでそれぞれ月10枚以上の12インチウェハーの製造できる能力を提供する予定であるとしています。これらの半導体は、自動車・産業・民生・HPC向けとしています。これに国外顧客が含まれるかは不明ですが、基本的に国内の企業向けの生産が中心になる見込みです。

特に重要なのが、6nmと7nmという比較的先端のプロセスが稼働するということです。TSMC 7nmはEUVを活用することになっているため、MicronやRapidusに続き3例目の国内EUV採用になる見込みです。

稼働予定時期は2027年末で年末までに着工します。おそらく、第一工場が稼働してからの着工となります。2027年末の時点でRapidusが稼働できていれば2件目の一桁プロセスの稼働となります。

さらに、JASMはこれらの工場によって3,400人以上のハイテク専門職を採用する見込みであることを明らかにしています。また、第一工場と第二工場をあわせて、JASMへの投資は、日本政府からの支援を含めて200億米ドルを超えるとしています。

一言

岸田政権による半導体製造事業を誘致する政策は実際に実を結んでいます。実際、TSMCだけでなく、SamsungやMicronなどの国内投資が大きく進んでいる他、海外企業に比べて額が少ないという懸念はあるもののキオクシアやRapidusへの支援も進んでいます。さらに、これらの工場の誘致は国内の雇用を産んでおり、熊本県では700人の雇用が生まれていますし、先述の通り3000人を超える雇用も生まれる見込みです。更に、東大などでは1nm台のプロセス製造についても研究が行われています。

今後の懸念点といえばRapidusで、IBMがRapidusに共有している技術を巡るIBMとGlobalFoundriesの米国での訴訟や、実際に2027年に2nmプロセスを稼働できるか。ここに注目したいところ。これが大きく遅延してしまうと、先端半導体市場における2nmの競争で大きく遅れを取ることになってしまいます。

また、政治とカネ問題で西村大臣が更迭され、更には議員辞職も視野に入ってきたことから、政策が維持されるかの不安などはあります。特に現在は、岸田政権自体の存亡も危うい状態となっているため、半導体政策が最後まで実行されるかかなり疑問です。正直、政策の急転換で半導体事業が撤退する上、支援の停止によってRapidusやキオクシアがコケるというのが想定する中での最悪の事例となります。

今後もこの話題には注目したいところです。

おことわり

この記事は、半導体に関わる政治的情勢をまとめたものであり、特定の政党を支持、あるいは批判することを目的としたものではありません。

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