錦です。
Intelは先程、同社の22年ぶりとなるディスクリートGPU「Iris Xe Max」を発表しました。
Xe Max
Xe Maxは実質的にはTiger Lakeのグラフィックス部分がベースになっています。素のGPUの部分でいうと、Tiger Lakeと共通しています。では詳しく見ていきます。
同製品のアーキテクチャは、名前の通り「Xe Graphics」になっています。このアーキテクチャを採用するGPU自体は、前述の通りTiger Lakeに内蔵されるiGPUに採用されているほか、第11世代デスクトップ向けCoreであるRocket Lake-SのiGPUにも採用されている、Intel最新のグラフィックスアーキテクチャです。Tiger Lake同様10nm SuperFinプロセスが採用されています。開発コードはDG1。CPUとの接続は、PCIe 4.0 x4。
具体的な製品の仕様を見ていきます。実行ユニット(EU)は96コア、ハードウェアエンコーダ・デコーダはTiger LakeのiGPUの2倍の量が搭載されており、スループットも2倍になっています。クロックはターボブースト時最大1.65GHzと、Tiger Lakeのクロックから上げられています。
次いで、メモリ仕様を確認してみます。ビデオメモリには4GB LPDDR4-4267が搭載されており、最大68GB/sの帯域を実現しています。メモリインターフェイスは128bitになっています。
出力は、最大4台に対応。解像度はDisplayPort出力で8Kまで対応します。インターフェイスはeDP 1.4(内蔵)とDP 1.4、HDMI 2.0bとなっています。
消費電力は可変TDPとなっており、搭載パソコンのメーカーが設定するようになっています。
Deep Link
IntelのGPUの強みとして、CPUとiGPUそしてdGPUを一体して動作させる事ができるDeep Link機能があります。これが、Iris Xe Maxの最大の特徴であり、Intelプラットフォームとして最大の魅力でもあります。
Iris Xe Maxは、当面 第11世代Coreとの組み合わせでのみ提供されます。そのため、第11世代Coreとの連携機能があります。それがDeep Linkです。具体的には、CPU搭載のGPU(iGPU)と、Xe Max(dGPU)をまとめて1つのGPUとして扱うという機能になっています。Deep Linkによる連携は、タスクの振り分けだけでなく、電力も動的にシェアされる「Dynamic Power Share」があるので、iGPUとdGPU両方の性能を効率よく最大限引き出す事ができます。
Deep Linkによる、性能向上の度合いですが、競合他社製品となり「Dynamic Power Share」が使えないGeForce MX 350とIntel CPUの組み合わせよりも電力の無駄がなくなり、最適なTDPの割り振りが可能になるため、Intel Xe Maxとの組み合わせのほうが1.4倍性能が高いとしています。
Deep Linkでは、iGPUとdGPUに加え、CPUもその"枠"に入ることになります。ディープラーニングの推論を利用する場合、CPUと2つのGPUを効率よく利用でき、最大で7倍程度の性能を発揮するとのこと。また、Xe Maxは、Deep Learning Boostにも対応しています。
ハードウェアエンコーダ・デコーダも、iGPUとdGPUで共有して作業を行うため、非常に速いものになっています。Intelの発表によれば、Deep Linkを使用したときにRTX 2080 Super Max-Qに内蔵されるNVENCの2倍のスループットを実現しているとのこと*1。実際にはiGPUだけでNVENCを超えているようですが。
Deep Linkが使えない3D部分
Deep Linkが利用できるのは、主にエンコーダやAIという部分に限られており、3Dゲームを遊ぶにはマルチGPUに対応していないため、iGPUかdGPUのどちらかしか利用できません。Intel Xe Maxの性能では、AAAタイトルを30fps以上でプレイすることができるとしていますが、少し残念です。
Intelは、Deep Linkへの対応を開発者に促しており、OpenVIVOの開発キット、Intel Media SDKなどを用意しXe Maxへの対応が用意になるとしています。XSplitやOBSなどがすでにこれに対応しており、Deep Linkを利用することができる他、BlenderやCyberLinkなどの製品もまもなく対応予定だとしています。
製品
Iris Xe Max搭載製品は、Intelが現状発表しているメーカーとして、Acer、ASUS、Dellの3社が発売予定で、米国では10月31日から販売されます。とくにASUSの製品については、Nishiki-Hubで取り上げていますので御覧ください。
Source:Intel ARK、PC Watch、Wccftech
*1:将来のソフトウェアアップデートで提供