錦です。
Intelは、Computex Taipeiの発表に先立ち「Meteor Lake」を一部の記者に対してプレビューしたようです。
- IntelのMeteor Lake搭載ノート、dGPUなしでStable Diffusionを高速処理 - PC Watch
- ASCII.jp:Meteor LakeにはAI専用エンジンが搭載!?インテルブリーフィングまとめ
- Intelが次世代CPU「Meteor Lake」の概要をチラ見せ 全モデルに「AIエンジン」を搭載 - ITmedia PC USER
主軸は「AI」
第14世代Coreプロセッサとなる「Meteor Lake」の中心となっているのは、その構造とNPUです。Meteor LakeではIntelのCore系統のプロセッサでは初めての「タイル構造」を採用しています。このタイル構造とは、チップレット構造のようなもので、Intel 22nmで製造されるベースタイルの上に、Intel 4で製造されるCompute Tile、TSMC N5で製造されるGPUタイル、TSMC N6で製造されるSOCタイル、TSMC N6で製造されるI/Oタイルが積層された構造のことです。
いくつかこのパッケージングと製造技術については特筆すべき点があります。まず、Compute Tile(CPU部)の製造プロセス。第12世代Alder LakeでIntel 7となりましたが、この世代ではIntel 4(旧Intel 7nm)で製造されます。このタイミングでアーキテクチャも更新される模様です。パッケージングには3Dパッケージング技術のFoverosを採用。コンシューマ向けCPUではLakefield以来の採用になりますかね?ちなみに今回発表された製造技術については、これだけではなく他にもいくつか発表されていますが、それは後述。
そして、今回の発表の主軸になっているのはNPU/VPUの部分。いわゆるAIエンジンです。Intelは第13世代Raptor Lakeで非常に限られた範囲でAIエンジンを搭載しました。Meteor LakeではこれがすべてのSKUに展開されるようになります。
機械学習機能については、PC勢よりもモバイル勢の方が早く対応していました。Appleが「Neural Engine」としてNPUに相当するものを2017年から、QualcommもSnapdragonに「Hexagon」として投入しています。PC勢では、AMDがRyzen 7040シリーズの一部で機能を提供しています。
IntelのAIエンジンは、2016年に買収されたMovidiusの技術に基づくものになっています。Movidiusの特徴として、チップの内部にメモリを内蔵していることにより消費電力を抑えながらAI推論を行うことができるというものです。どうやらその省電力性は非常に高く、1W未満とも。
これがMeteor Lakeに統合されます。
ちなみに、余談ですがAMDも自社の技術ではなく、買収したXilinxのFPGAをベースにしています。
第3世代
現在、Movidius由来のVPUの製品は提供されていませんが、その技術をベースとして「Keem Bay」というものが提供されています。Intelは最初の製品を第1世代とすると、Keem Bayが第2世代、そしてMeteor Lakeに搭載されるものはその後継となる第3世代のものになると説明しています。
Intelのジョン・レイフィールド クライアントAI事業部長 兼 副社長によると、CPUやGPUで処理する場合に比較してMeteor LakeのNPUでは10倍高い処理能力と5倍高い消費電力を実現するとのこと。
PC Watchが画像生成AI「Stable Diffusion」をMeteor Lake搭載ラップトップで実行するデモの動画を掲載しています。
この動画によると、dGPUがなくとも30秒程度で画像が生成されています。
今回の特徴は正しくdGPUなし、かつCPUとGPUに負荷をかけずにAIを利用できるというものです。先述の通り、CPU自体にAI機能が統合されているのはAMDの一部の製品とAppleとQualcommなどのArm系製品のみです。それ以外の製品では、AIの高速化のためにNVIDIAのTensorコア(DLSS)を利用したり、AMDのAIアクセラレータを利用したりと、dGPUのパワーを使うものも多かったのです。
それがMeteor Lakeではそうした別のアクセラレータを必要とせず、CPU自体に統合し、そして消費電力もかなり抑えることができたということになります。
【余談】ソフトウェア側の対応
ここ数日で記事にはしていませんでしたが、IntelとAMDのAI機能について相次いで今回とは別の発表がありました。
双方に共通していることはAI機能の開放という点。あまり言及はされていませんが、当初AMDもIntelもAI機能を提供するのはMicrosoftが提供した「Windows Studio」のみという話のハズだったのですが、いつの間にかONNXランタイムなどで使えるようになっていましたね。個人的には広げるべきだと思ってましたし、なぜ初めからこうしなかったのか謎ではあります・・・。
あと、Ryzen 7040シリーズ全部にAI機能付いてるわけじゃないらしいです。
GPUはArcベースに
IntelがXe Graphicsを発表した時、4つのアーキテクチャで展開されることが発表されていましたが。まず、省電力製品向けの「Xe-LP」。こちらはTiger Lake、Alder Lake、Raptor LakeのiGPUとして採用された他、Iris Xe MaxとしてdGPUも提供されました。「Xe-HPC」はハイエンドコンピューティング向けに提供されており、こちらは今年初めに「Data Center GPU Max」として発表。「Xe-HP」についてはHPCとHPGのベースとしてアナウンスされました。
そして「Xe-HPG」はIntel Arc Aシリーズとして製品が提供されています。Intelは今回、Meteor Lakeに統合されるグラフィックについて、このArcシリーズをベースにしたモノとなることを発表しました。同様に自社のdGPUをiGPUとして統合する試みははるか昔からAMDがAPUで行ってきた取り組みであり、Intelも同様の取り組みを行ったと考えられます。
Arcベースになったことにより、Meteor LakeではiGPUで「Xe Super Sampling」や「ハードウェアレイトレーシング」、「ハードウェアAV1デコード・エンコード」が可能になります。
Ultra Low Power目指す製造プロセス
今回の発表では製造プロセスについての将来についても話がったようですがが、ちょっとだけこの記事と趣旨が異なるので次のページへ。