錦です。
今回はちょっと解説系の記事を。昨年の春頃に編集後記とnoteにてミニLEDについて解説したのですが、今回はマイクロLEDにも触れてみようと思います。
【編集後記】iPad ProのミニLEDとは一体なんなのか - Nishiki-Hub
ミニLED
ミニLEDについては、これが2回目ですのでざっと取り上げます。
液晶ディスプレイの仕組み
普通、液晶ディスプレイというのは、教会などにあるステンドグラスのような仕組みで発色しています。液晶ディスプレイでは一画素中にRGBのフィルタが均等に配置されており、「液晶」はそれら通す光を制御するシャッターのような役割です。
ステンドグラスを通じて例えば床になにかを表現するとして、ステンドグラスだけでは色が出ません。光が必要です。これは液晶ディスプレイも同じで、あくまで一画素内で行われていることは色の切り替えのみなので後ろから光(バックライト)を当ててやる必要があります。
ミニLEDというのはあくまでこのバックライトの技術であり、液晶自体が表現できる色の種類を増やすというものではありません。ちなみに、バックライトにはLED以外にも蛍光灯など白色の光を安定して均等に発光できる方法が用いられますが、今回はLEDに絞っています。
バックライト
バックライトの当て方には大きく2種類あります。一つが主流の「サイドライト方式」、もう一つが「直下型バックライト」。多くのスマートフォンに採用されている液晶ディスプレイには「サイドライト方式」が用いられています。
「サイドライト方式」とは、一つのLEDが発した光を「導光板」を通じてディスプレイ内に広げるという方式です。この利点は搭載するLEDの数が少なくすみ、設計も容易です。基本的にサイドライト方式において元のLEDは画面のエッジ(縁)部分に搭載されます。画素自体が発行するOLEDスマートフォンに比べて液晶ディスプレイのスマートフォンのほうがエッジが太くなるのはこれが影響しています。
「直下型バックライト」とは、サイドライト方式の逆で導光板を用いずLEDが直接液晶に光を当てます。導光板を用いませんので、LEDは画面にびっしりと詰められています。LEDの数が多いですので輝度も高くなり、コントラストも高くなります。
コントラスト比というのは一つの画像での真っ黒な部分と真っ白な部分の輝度の差です。コントラスト比が高ければ高いほど画像にメリハリが付き、ダイナミックレンジも高くなります。そうすると迫力のある映像が映し出されます。例えば、紺色とオレンジがあるとして、紺色のほうが暗い表現になりますよね。そうしたときに色だけでなく輝度も若干変わります。その差がコントラスト比です。
サイドライト方式の致命的な欠点としてコントラスト比を高められないというものがあります。理由は、黒の表現に限界があるためです。サイドライト方式は少ないLEDで画面すべての輝度を操りますので、例えば一部分だけ真っ黒だけど他の部分は色を出しているという場合、サイドライト方式では黒の部分にも均等に光があたってしまい真っ黒を表現できません。そのためコントラスト比はせいぜい2000:1程度に収まります。
一方、直下型バックライトは、画面に大量バックライトを搭載していますので画面の部分ごとに輝度を操るということができます。なので、直下型バックライトの場合、LEDの多さによる輝度の向上も相まって、1,000,000(百万):1というコントラスト比も実現できます。
ただ、LEDも画素レベルまで小さくすることはできません。一画素というのはかなり小さいもので、現代の技術を持ってしても一画素に1LEDは実現できません。なので、画素自体が発行するため1画素レベルで輝度の調整ができるOLEDのコントラスト比 2,000,000:1には及びません。ちなみにこの話は後で紹介するマイクロLEDの話に続きます。
ミニLEDとは
LEDは発光ダイオードと呼ばれ、半導体の一種です。半導体であるということは微細化が進みます。
その結果、タブレットやラップトップのような薄型ディスプレイでも直下型バックライトを実現できるようになりました。これに用いられている「微細化されたLED」というのが「ミニLED」です。
ちなみにミニLEDはOLEDの進化系だということをよく聞きますが、これは大きな間違いであり、OLEDのほうが優れている点は結構あります。ただ、大画面化できないなど、OLEDのデメリットをカバーできるのがミニLEDです。これについて詳しい内容な前回の記事に書いていますのでよろしければぜひ。
マイクロLED
そして本題。マイクロLEDについてです。
マイクロLEDについて想像してもらうのに一番効果的なのは、駅の電光掲示板ですかね。
このような掲示板やデジタルサイネージの一部は、画素自体にLEDが埋め込まれています。これにより、画像を表現できます。しかし、これを実用化するには画素が大きすぎて密度が低すぎます。ただ、LEDを微細化すれば使えますよね。それが「マイクロLED」です。
従来のディスプレイ技術とマイクロLEDの大きな点はLEDが画素に用いられるという点です。マイクロLEDはバックライトを必要とせず、画素自体が色そして光を発します。これによりOLEDなみのコントラスト比が実現できる上、輝度も大幅に高めることができます。また大画面化もしやすく長寿命。OLEDの欠点をほぼ全て克服することができます。OLEDの進化系はマイクロLEDだったのです。
とは言ってもマイクロLEDが普及するのはまだ先のことになるみたい。というのもまだ成熟前の技術でコストが高すぎるという問題があるためです。これについては技術の進歩に期待するのみといった感じでしょうか。
ちなみに、マイクロLEDがターゲットにしているのはモバイルやVR/ARヘッドセットなどになります。