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【編集後記】USB-Cに統一されるのは手放しに歓迎していいものではない

錦です。

EUで、全てのモバイルデバイスにおいて「USB-C」充電端子への統一を義務化する法律が可決されたことが日本を含め世界で話題になりました。今回はその話です。

USB-C統一

USB-C(USB Type-C)は2014年頃から採用が進められているUSBの規格の一つです。というよりかは、最近のUSB規格はUSB-Cのみが進化しています。

USB-Cはリバーシブルかつ高規格、そしてオープンであるということから多くのデバイスに採用されています。例えば、Androidスマートフォンでは多くのデバイスに搭載されています。また、ゲーム機ではSwitchのようなハンドヘルド型のコンソール・ゲーミングPCがUSB-Cを採用しています。

それ以外にも玩具や業務用端末、照明などの小規模家具で採用が進んでいます。

その中で、USB-Cに対応していないデバイスもあります。間違いなく今回の決定の槍玉に挙げられているのはiPhoneiPadを筆頭にしたAppleアクセサリでしょう。これらのデバイスでは一部を除いてUSB-Cを使うことができず充電ケーブルの統一に大きな障壁を与えています。確かに持っているすべてのデバイスがUSB-Cに対応してくれれば、充電器のケーブルも少なくとも1本減らせる可能性が高まるわけで、歓迎されるものです。

しかし、今回の決定はそう手放しに歓迎していいものではないと考えるのです。

メリット

USB-C統一のデメリットをお話する前に先にメリットをまとめていきましょう

端子の種類を減らせる

今回のEUの決定のおいて、裏の事情はいくらでも勘ぐれるのですが、大義名分となっているのは「電子ゴミの量を抑える」というもの。すべての充電式デバイスが、それぞれ独自の規格を採用すると買い替えた後、もともと使用していたケーブルや充電器はそのままゴミになってしまいます。特に充電器部分は希少金属や有害物質を含んでいるものもあり、簡単に捨てられないものもあり、ユーザーから見ても扱いに困るものです。

そして、SDGsが叫ばれる中、そういった希少金属を含む充電器やケーブルはリサイクルされるべきですが、もちろんすべてがそういうわけではなく、これまた行政や業者が取り扱いにくいタイプのゴミになってしまいます。USB-Cに統一することで、ケーブルや充電器が壊れない限り使い続けることができ、電子ゴミを減らせるという算段なのです。これは感覚として理解いただけると思います。

規格乱立を防止する

第二の理由として、「類似規格の乱立を防止」が考えられます。これは前述の「種類を減らせる」というメリットに通づるものがあります。

これの代表例はやはり「Lightning」でしょう。USBと物理的な互換性がない端子の乱立があると、前述の電子ゴミの問題や、そもそもユーザーとして扱いにくくなってしまうという問題に繋がります。特に「デジタルデバイド情報格差)」をなくすことは日本のみならず世界の目標であるので、わかりやすいUSBに統一すればそういった世界に一歩すすめることができるでしょう。

独占の防止

最後に言えるのは「独占を防ぐ事ができる」という点。正直EUからするとこの問題に対処するというのが一番大きいと思うのですが。

またまたLightningを例に上げましょう。Lightningは、Appleが特許を持つ規格としてその仕様にはライセンスやApple認定のチップをケーブルやアクセサリに搭載する必要があります。よくMFi認証なんて言うと思いますが、そのたぐいです。このMFi認証は、ユーザーに信頼できる製品であることを示すのに一役買っていますが、その反面Appleの認証がないとLightningアクセサリを製造・販売できないという問題があります。これは事実上の支配であり、これまでも何度か問題になっています。

USB-Cにも特許は存在し、特許使用料とライセンス自体は存在するものの、それらはAppleIntelルネサスなどで構成された業界団体「USB-IF」が管理している上オープンかつ安価なので、誰かが独占するという問題は防げます。これは、汎用的かつ影響の大きい規格を特定の企業が保有していない(する可能性を防ぐことができる)という点で、EUからしても安全保障という部分で利点に働くことになります。

デメリット

それではデメリットをまとめていきます。

規格の限界

まず、USB-Cの限界からお話します。正直USB-Cの限界がいかほどなのかと言われれば正直「謎」です。

そもそも現時点で最大80Gbps、双方向で120Gbpsの転送速度があるので世界でも最も優れた汎用規格の一つであることには間違いないのですが、データもリッチになっていく中でUSBにも限界がるわけです。

USB-Cはおそらくこれ以上ピンの数を増やすことができません。そして、USB4では持っているすべてのピンを使う規格となっています。現段階(USB4 Version X)は信号を改良したり圧縮技術を駆使することによって速度の向上を図っています。そのため、USB 2.0からUSB 3.0、そしてUSB 3.2で追加されたデュアルリンクのようにピン数を増やして拡張するということはできず、現時点でピンあたりの性能を上げることしかできず、そしてその限界がいずれ訪れる可能性があります(ただ、PCIeが信号の改良でそれなりに進化しているので一概に限界が来るとも言えないんですけどね)。

技術革新は続く

そして、USB-Cは「汎用シリアルバスの最終形態」のように扱われることもありますが、実際には今後さらに進化したポートが出てくることもありえなくはないです。

もちろん、今回の法律の内容を見る限りUSB-Cしか搭載してはいけない!というわけではなく、USB-Cを少なくとも給電用に搭載しろということみたいなので、USB-C + 未来のポート という組み合わせもできなくはないですが。

電源供給の限界

この法律の対象となっているのは、スマホやゲーム機などの小さな機器だけでなく、モバイルPCなども対象になっています。つまり、ゲーミングPCやプロ向けPCのような電力を大食いするPCも対象となっています。

USB-CにはUSB-PD(Power Delivery)と呼ばれる給電規格が存在しており、この規格の最上位であるUSB-PD EPRでは240Wでの給電が可能となっています。一般的なラップトップではこの出力で全然問題ないと思うのですが、ゲーミングPCなどではなぜかデスクトップ向け最上位CPUを搭載するようなモンスターPCもあり、240Wでまかなえるか怪しいものもあります。

前述の通り、給電対応のUSB-Cを搭載すれば、他にもポートを搭載してもいい(?)みたいなので、これまで通りDCも搭載していいと思うんですけどね・・・。

そもそも「USB-C」が複雑

あと、USB-C自体は結構複雑です。最近になって給電・転送速度双方がわかりやすいロゴになりましたが、それでも複雑です。USB-IFもこの複雑さをわかりやすくするようにはしているみたいですが、USB4 Version 2が出た手前、複雑さに拍車をかける結果になってしまいそうな予感。

USB自体が複雑な上、Alt Modeもあり、ポートによって機能に対応する・しないもあるなど、一概にUSB-Cと言ってもできることとできないことは機種によって異なってしまいます。この点については以下の記事で詳しくまとめていますのでよろしければ御覧ください。

わかりにくすぎる「USB-C」形状をまとめる。 - Nishiki-Hub

私は、Lightning廃止には大いに賛成ではあります。だってiPadMacもUSB-Cなんだよ?お前のためにLightning持ち歩いてるんだよと。

ただ、USB-Cに統一しろと義務付けるのもどうかと思います。結局の所、便利なポートであれば多くの企業が採用するわけで、採用しないという決定にも(商業的策略を含めて)なにか理由があるはずなのです。もしかしたらそれはUSB-Cを搭載できない技術的な問題かもしれないし、USB-Cの欠点なのかもしれないし。

これから、目に見えてUSB-Cだけで生活できるというのは、たしかに便利ではありますが、弊害が出ないことを願います。