錦です。
Intelが5G事業から撤退した理由が、AppleとQualcommの和解によるものであることがわかりました。
ほぼ同時に起きた二つの発表
日本時間17日、朝からAppleとQualcommが全面的に和解し、QualcommがまたAppleにチップを提供することが決まりました。その数時間後、Intelは 出荷を2020年と先延ばししていたモバイル向けの5Gモデムチップ事業からの撤退を発表しました。
この二つについては、iPhoneが結び目となり、深く結びついています。
そもそも、AppleとQualcommが係争を始めたのは2017年の頭で、独禁法・特許侵害などをめぐって数多くの訴訟が繰り広げられていました。特に、iPhoneのモデムについては、Qualcommが特許侵害を訴え、ドイツ・中国では、その訴えが認められてiPhoneの販売停止に追い込まれていました。もともと採用されていたQualcomm製のチップは、iPhone8以降採用されなくなり、代わりに採用されたのはIntel製のものでした。
5G
5Gについて、Intelは若干の遅れをもとから見せていました。5G自体は2018年に既にうたわれており、後半にはQualcommが Snapdragon 855で5G対応を施し、世界で先進していました。Snapdragon 855で対応した結果、CES 2019やWMC 2019などで発表された「春先のスマートフォン」の多くが5Gに対応しています。
しかし、これでもIntelは遅れを見せ続け、年内の出荷はおろか、2020年の出荷も危うい状況と報じられました。Intelのモデムの影響をもろ受けるのはiPhoneであり、iPhoneでの5G対応は早くて2021年と予想されていたほど。これは、2019年ですでに対応しているスマートフォンがある中では2年半近くの遅れであり、かなりの痛手になります。
Appleも、この遅れを危険視したのか、Qualcommとの独禁法の裁判の証言で「Intel以外にも供給元を考えている」とも発言していました。
和解と撤退
AppleとQualcommの和解は、パッと見た感じQualcommがかなり得をするように見えます。和解には、Appleからの特許料などの支払いが含まれており、Appleの株価(AAPL)にはそれほど大きな波は見られなかったものの、Qualcommの株価(QCOM)にはわかりやすい株価の上昇がみられました。
しかし当たり前ですが、実際にはAppleにも得があります。それは、Qualcommの技術です。モバイルデバイスでのQualcommの技術は高く、iPhoneでもモデムを中心にその技術が活用されています。係争により、その技術力が使えない=5Gの採用が遅くなる。だったのが、Qualcommの技術を使える=5G採用もそれほど遅くはならないということです。
これに大きな影響を受けたのはどうやらIntelのようで、Intel CEOはWSJに対し「AppleとQualcommの和解を見て5G撤退を決めた」と語っています。
なお、Intelは4Gモデムについての提供の存続は行うものと発表しており、もし今年の新型iPhoneが5G対応でない場合、Intel製のモデムが採用されるとみられます。