錦です。
iPhoneというのは、大体発売から5~6バージョンサポートされますが、毎年徐々にサポート期間が長くなってきています。その中でも異様にサポート期間が長いやつが居ます。iPhone 5sです。
iPhone 5s
iPhone 5sは、2013年に発表・発売されたフラグシップモデルで、大きな変更点としてTouch IDが初めて搭載されたデバイスです。2013年というと・・・。もう8年前とかになるわけですが、割と今でも現役です。今回はそういう話。
iOS 12
iOSのメジャーアップデートで互換性が無いデバイスというのは、今後のアップデートは全くリリースされないということを意味しています*1。WindowsやAndroidのように、OSのバージョンが変わっても、元のバージョンが引き続きサポートされることはiOSではiOS 11までありませんでした。ただし例外として、重要なアップデート(例えば日付問題とか)は古いiOSに向けてもリリースされるということが有りました。
ただし、iOS 12だけは事情が違いました。なぜかiOS 13がリリースされた後でもアップデートが続いております。iOS 13で何が起こったのか。それは、iPhone 5sとiPhone 6のサポート終了です。
iOS 12.4.3
iOS 12に異変が起きたのは「iOS 12.4.3」。iOS 12.4.3はNishiki-Hubの過去記事によれば2019年10月29日にリリースされています。しかし、iOS 12の後継となるメジャーアップデートであるiOS 13はその一ヶ月前 2019年9月20日にリリースされています。つまり、この時点でiOS 12がアップデートされるのは異例の出来事でした。
iOS 12.4.3のアップデート内容は「セキュリティの更新」。具体的には、同日にリリースされたiOS 13.2の脆弱性と同じ脆弱性「CVE-2019-8796」を修正するためのものでした。この脆弱性はAirDropに存在するもので、このとき私が考えたのは「AirDropって旧デバイスでも使えるから、両方でアップデートしないと意味ないからなんだろうなぁ」というもの。実際これの真意はわかりませんが、それなりに重要なアップデートであるのには間違いは有りません。
アクセサリサポートはなかった
iOS 12.4.3と同日にリリースされたiOS 13.2はAirPods Proのサポート(具体的には機能のサポート)が含まれていますが、iOS 12.4.3には追加されませんでした。すなわち、iPhone 6やiPhone 5sへのアップデートはアクセサリの対応デバイスを増やすためではなく、セキュリティに問題があるからアップデートされたにすぎないということです。
これ以降も、AirPods MaxやHomePod miniなどのデバイスが発売されていきますが、iOS 12ではサポートは追加されませんでした。
iOS 12.5で機能追加
そのご、iOS 12.4はiOS 12.4.9までアップデートが続きました。それまでもすべてセキュリティの修正。
しかし、2020年12月14日。突如としてiOS 12.5がリリースされました。これはiOS 12の機能アップデートです。そうです。iOS 14がリリースされているのにもかかわらずiOS 12に機能が追加されたのです。
追加された機能は「接触通知」。日本では「COCOA」という名前でニュースなどでも話題になりましたが、直近で一定の条件で接した相手が、新型コロナに感染していることが判明したら通知するというシステムですね。iOS 13ではiOS 13.5で追加されていました。それがiOS 12にも追加されたわけです。これにより、暴露通知がiPhone 5sやiPhone 6でも使えるようになりました。
機能が必要緊急であったとはいえ、通常サポートが終了した後に機能が追加されるのは異例中の異例であり、金輪際起こり得ないようなことでしょう。
ついに9年目に
iOS 15の正式リリースによって流石にiOS 12のサポートは終わっただろうと思われていた矢先、iOS 15のリリース後となる2021年9月24日。iOS 12.5.5がリリースされました。ついにiPhone 5sのサポート期間が8周年を迎え9年目に突入する事になりました。これまでこれほど長くサポートされたiPhoneはない上、Androidスマートフォンでも9年目は流石にありません。
なぜiOS 12だけ?
iPhone 5sの前世代にあたるiPhone 5はiOS 11へのアップデートができずiOS 10.5あたりでアップデートが止まっているはずです。無論iOS 10は日付問題や重大なセキュリティ問題が発生した数回(多分2回)を除きアップデートされていません。過去のiOSも同様です。
では、なぜiOS 12だけここまで引き伸ばされているのでしょうか。
ここではあくまで私の仮定に過ぎませんが、理由を考えてみたいと思います。
理由
iPhone 5sのチップはApple A7チップです。そして、A7をベースとして改良されたのがiPhone 6に搭載されるApple A8。これ。
Apple A8チップは、iPhone 6/6 Plusの他、iPod Touch第6世代やApple TV第4世代にも搭載されています。これらのデバイスは既にiOSのサポートが終わっており、iPhone 6同様iOS 12のサポートが延々とリリースされている状態です。ただし、Apple A8を搭載しながらiOS 13/14/15のアップデートを享受しているものがあります。それがiPad mini 4とHomePodです。つまり、パフォーマンス的にはiOS 15でApple 8は問題なく動作するということです。
おそらく、iPhone 6がiOS 13にアップデートできなかった理由はメモリが1GBであるということが要因となっているでしょう。実際iOS 13以降をサポートするデバイスは、すべて2GBのメモリを積んでいます。これまた仮定ですがiOS 13で追加された主力機能の1つである「オートメーション」などの機能は、多くのメモリを必要としており、最高のエクスペリエンスを実現するには1GBしか搭載しないiPhone 6は不向きであったためiOS 13にアップデート出来なかったのではないかと思っています。
Appleはどこかのタイミングで路線変更を行いました。おそらくサービス部門を拡張したあたりだと思いますが、買い替えサイクルを引き伸ばしても問題ないという結論にAppleが至った可能性があります。
iPhone 6sは2015年に発売されたiPhoneながら7年目となるメジャーアップデートiOS 15に対応しています。実際、Appleが2年も連続でiOSからiPhoneを脱落しなかった例が過去にないので、おそらくiPhone 6sを延命している段階でしょう。
で、AppleはiPhone 6や5sについてももっと長く使えるようにしたいと考えているのでしょう。本意としてはおそらく新機能をiPhone 6やiPhone 5sでも試してほしいと思ってるはずです。ただし前述の通りiPhone 6や5sではメモリの問題からユーザーエクスペリエンスが大幅に下がってしまう可能性があります。その結果、iPhone 5s/6が快適に実行することができるiOS 12を延命させる事によってiPhone 5sやiPhone 6に対しても最新のセキュリティアップデートを提供し、より長く安全にデバイスを使ってもらうことができるようになったわけです。
Apple A8が今だにiOS 15でサポートされているところを見ると、本当に長い期間使ってもらうためにAppleが努力しているようにも感じます。
iPhone 6sもこうなるかも
iPhone 6sはおそらくiOS 15を持ってサポートが終了するでしょう。いくらなんでもApple A9がここまで戦ってこれたのがある意味すごいと思う。
ただ、iOS 15リリース時点から最新のアップデートを適用しなくても、もともとのiOSにもセキュリティアップデートが届くようになりました。具体的に説明すると、iOS 15がリリースされた今でもiOS 14のサポートは続いているという状態です。おそらくiOS 14.8はその準備アップデートの意味もあるのでしょう。
でこの流れはこの先も続くと見られ、iOSがmacOSと同じアップデートサイクルを歩むのであれば、iOS 17リリースくらいまではiOS 14はサポートされるはず。ならiOS 15はiOS 18リリースくらいまではサポートされるはずだと言うことです。もしこうなればiPhone 6sは5s同様に9年間のサポートとなります。この流れはおそらく続きます。
実際に、Appleが旧バージョンの継続サポートを行う方針になっている事自体が今回の私の意見の裏付けになっているかもしれません。
3バージョン並行
そして、現在はiOS史上初めてかつ極めて異例な状態として、iOS 12とiOS 14、そしてiOS 15の3バージョンが並行してサポートされているという状態になっています。
iOSもどんどんmacOSのようなサイクルになり始めましたが、これは悪いことではなく、逆に「使い慣れたモデルをずっと使い続けることができる」といういいことなのです。実際、私のiPhone 6は現役ですし、物持ちが良い方はスマートフォンを何十年と使い続けることができるでしょう。そして、技術の発展によってスマホの平均寿命や、平均買い替え周期も年々長くなってきており、時代に合わせた変更といえば変更なのかもしれません。
個人的には、Appleが最新版以外のサポートを続ける事によって、最新の機能やデザインを好まない人の救済策にもなっていいことだと感じました。以上です。