錦です。
Qualcommは、昨日発表された「Snapdragon 8 Gen 1」について、詳細な仕様を発表しました。
Qualcomm、スマホ向けハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 1」を発表 〜 GPUが30%性能向上するなど大型アップデート 10Gbpsの5Gにも対応 - Nishiki-Hub
Snapdragon 8 Gen 1
Snapdragon 8 Gen 1はSnapdragon 888の後継となる最新のハイエンドスマートフォン向けのSoCです。概略は昨日Nishiki-Hubでも取り上げていますのでそちらを参照いただければと思います。
簡単に説明すると、GPUが30%の性能向上と25%の省電力化、CPUにCortex-X2が採用されるといった感じです。今回はその詳細な仕様が明らかになったので紹介していきます。
早見
とりあえず、表にしましたのでそれをご覧ください。
CPU
CPUには新型のKryoが採用されました。ブランドの方針の変更により、名前は単にKryoのみとなっています。これは、後で紹介するAdreno・Hexagon・Spectraも同様になっています。この記事で単にKryoやAdrenoなどとしている場合は新型のことです。
KryoはSnapdragon 888のKryo 680に引き続き8コアとなっており、構成も1xプライマリコア+3x高性能コア+4x高効率コアで変わりません。ただし、プライマリコアには最新のArmのマイクロアーキテクチャであるARM v9の「Cortex-X2」が採用されました。Cortex-X2のL2キャッシュは1MB用意されており、低レイテンシ+大キャッシュでシングルスレッド性能を高めています。
あと、おそらくプライマリコアは最大3GHzまでクロックが上がるとのことで、888の2.84GHzから伸びます。クロックの向上とマイクロアーキテクチャの向上によりかなり性能が向上しているみたい。
高性能コア・高効率コアについてはどのCPUを使っているかまでは明らかではありませんが、高性能コアが最大2.5GHz、高効率コアが1.8GHzまでクロックが上がります。パフォーマンスコアがKryo 680から100MHzクロックが向上しますが、高効率コアのクロックは変わりません(というか効率コアは上げる必要ないから当たり前か)。
実際の性能ですが、現時点で公開されているのがベンチマーク開始10分以降のグラフのみ。Qualcommは名前を伏せていますが、確実にApple A15のことを指している比較対象とのグラフを見ると、Snapdragon 8 Gen 1が凌駕していますが、AppleのSoCは出だしの性能がよく、Snapdragonは継続力がすごいので正直個のグラフだけでは・・・。
ただ、Snapdragonは例年12月の半ばに総裁なベンチマーク結果(あるいはテスト機の配布)を行うので、それ辺りで明らかになるのではないかと見られます。
GPU
GPUはAdrenoを採用。ただ、QualcommはAdrenoのコア数などを明らかにしないのでGPUとしての仕様は昨日お伝えしたものから変わるものはありません。なので昨日の記事と同じことを言います。
Snapdragon 888に搭載されたAdreno 660に比べて30%の描画性能の向上と、25%消費電力が削減されているとのこと。
電力効率の話として、Snapdragon 888と比較して、同じ消費電力で2倍のフレームを生成できる「Adreno Frame Motion Engine」が提供されるほかゲーム向け機能としては、そのFrame Motiton Engineの他にもVRS Pro(可変レートシェーディング)、Adreno Control Panelといった新機能が追加されている他、もちろんSnapdragon Elite Gamingの機能も包括しています。
Adreno Control Panelは、NVIDIA Cotrol PanelやRadeon Softwareのようなもので、ここからGPUの各設定やドライバのアップデートが可能になっています。
画像処理
Snapdragon 8 Gen 1では画像処理部分であるSpectra(ISP)において大幅な強化が加えられています。
Spectraは、3基のISPを搭載。そしてISP自体の強化もあり、ISP単体では18-bitの入力に対応するほか、3.2Giga Pixel/s(毎秒32億画素)の処理が可能になりました。センサー側の対応には左右されるものの、これは18bit RAWの撮影にチップ側が対応したことを意味しており、大幅な強化と言えるでしょう。
8Kの動画撮影では、HDRに対応しています(無論これもセンサーの対応が必要)。
また、低照度での撮影では、従来14bit 6枚の写真を組み合わせていましたが、新Spectraは18bit 30枚を組み合わせて1枚を生成するという強化を経ています。
対応するカメラ構成は、トリプルが最大36MPx3に対応、デュアルカメラなら最大64MP+36MPに対応、シングルの場合MFNR(マルチフレームノイズ低減)やZSL(シャッター遅延低減)、30fpsに対応するなら最大108MP、対応しないなら最大200MPまで対応します。
AI
Snapdragonは、AI機能の処理部分です。DSP・CPU・GPUが協力してAIの処理を行います。実際にはソフトウェアによってCPUとGPU、DSPに処理を割り振っているということですが。
DSP自体も大幅に強化されており、内臓のTensor Acceleratorの数は2倍になり、共有メモリも2倍になっています。そこにCPUとGPUの強化が加わり、AI性能は最大4倍にまで跳ね上がったそう。
その他、ソフトウェアも強化されており、INT8/INT16の混合精度が利用可能になりました。
Qualcomm Sensing Hub
Qualcomm Sensing Hubは、SoCがアイドル状態でも動作する機構で、特定の入力などがあったときに反応してSoC自体を起動するような感じ。例えると待機状態のセンサーのような感じです。
で、これにはDSPなどが含まれていたのですが、新たにISPも追加されました。これによって、ISPも省電力状態で動作し続けているというような感じとなり、顔が近づけば自動で起動してロックを解除するような事ができるようになっています。
なお、セキュリティの問題からQualcomm Sesing HubのISPは撮影ができないようになっていて、メモリについても独自のメモリを持っています。
メモリ
メモリのサポートについては、LPDDR4Xのサポートが廃止され、LPDDR5-3200のみのサポートとなっています。
製造プロセス
製造プロセスは4nmとなっています。
TSMCもSamsungも4nmプロセスを提供していますが、どちらのプロセスルールを採用しているかは不明。先日発表された、Snapdragon 8 Gen 1の競合となるMediaTekのDimensity 9000はTSMCの4nmを採用しています。
Snapdragon 8 Gen 1はSamsungの4nmを採用しているという見方が今の所強そうです。
内蔵モデム
内臓のモデムにはSnapdragon X65を採用。キャリアアグリケーションを用いることで最大10Gbpsの通信が可能になっており、こちらは昨日の記事のほうが詳しいと思うのでそちらをご覧ください。
Qualcomm、スマホ向けハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 1」を発表 〜 GPUが30%性能向上するなど大型アップデート 10Gbpsの5Gにも対応 - Nishiki-Hub