錦です。
Qualcommは、Armのコア「Cortex」ではない独自プロセッサをPC向けに開発していることを発表しました。
Armのライセンス形態
Armはライセンス形態として大きく2つのものが存在していることが知られています。一つが、Cortexをライセンスする形態。これは、CPUコア自体をArmが設計し、それを組み合わせて製品化するライセンスを販売しているというものです。QualcommのSnapdragonやSamsungのExynos、NVIDIA Tegra、MediaTek Dimensityは、CPUとしてKryoなどというブランドを持ちますが中身はArmが設計した「Cortex」に基づくものとなっています。
一方で、Appleが採用しているようなライセンスは、Armの命令セットをライセンスする形態です。こちらは、Armの命令セット部分を販売し、コアの設計自体はライセンスを供与された側が行うというものになっています。そのため、SnapdragonとExynosは基本的に似たような構造・性能になりますが、Appleだけまた異なる構造や性能になっています。
Intelで例えると、QualcommやSamsungには「Golden Cove」レベルの技術を共有し、Appleには「x86」という技術のみを共有しているという例えになります。
Qualcommの独自デザイン
で、Qualcommは昨年の11月の時点で、Apple Siliconに対抗するための高性能なPC向けSoCの投入を予告していました。
QualcommがApple M1に対抗する高性能Arm SoCを2023年に登場させる計画明かす - Nishiki-Hub
その一部が今回明らかになった形です。
現在のPC向けSnapdragonの最新型である「Snapdragon 8cx Gen 3」は、Cortex-X1とCortex-A78を採用しています。X1はPCユースにも用いられることが想定されている高性能なコアで、A78はスマートフォン向けの高性能コアとして用いられるコアとなっています。ともに高性能なアーキテクチャをベースにしてはいますが、Snapdragon 8 Gen 1のような最新のCortexではなく、IntelやAMDのようなx86プロセッサには性能で負けます。もちろんApple Siliconよりも低い性能です。
CortexではAppleに太刀打ちできない状態となっているため、Qualcommは独自デザインのカスタムPUを開発することにしたのだと思われます。
ただ独自CPUとは言えども、やはりベースとなるのはArmなようで、Apple同様命令セットの部分にArmを用います。命令セットにArmを採用し続ければ、ここ数年Qualcommが力を入れてきたArmプラットフォームの強化をそのまま受け継ぐことができます。
また、Qualcommは元Appleのチップデザイナーが設立したNuviaというファブレス企業を買収しています。Nuviaはもともと、Appleと同様にArm CPUを独自で開発していた企業で、Qualcommがそれを買収しコンシューマ向けの製品に活用すると考えられています。
もし、Nuviaの開発していた技術を用いてこの製品が開発されているならば、Nuviaはもともとサーバー向けのArm CPUを開発していたことから、それを転用した製品も高性能になると見られています。
Qualcommは、この製品についてPC市場において性能でリーダーになれる製品であると述べています。
しかしながら、昨日、QualcommがNuviaの契約期間を終了したライセンスを使用し続けているとしてArmが提訴しており、この裁判の行方によってはこの製品の実現も微妙となっています。