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Intel、「Meteor Lake」の詳細な仕様を発表 〜 P/Eコアと別に「LP Eコア」の追加とArcに近づいたGPU・年内登場

Intelは、まもなく開催される「Intel Innovation」イベントに先立ち、次期プロセッサラインナップとなる「Meteor Lake」のより詳細な仕様を発表しました。

Meteor Lake

Meteor LakeはRaptor Lakeの後継となるプロセッサラインナップで、プロセスルールがIntel 4に進んだり、タイル構造を採用するなど非常に大きな変更が加えられるメジャーアップデートとなります。

すでにわかっていることとしては、タイル構造の構成とプロセスルールがあります。タイル構造とは、他社で言うところのマルチチップレット構造です。タイルとはチップレットのことを指しています。Intelで興味深いのは同社の3Dパッケージング技術「Foveros」で実装されている点です。

CPUコアが搭載されるCompute Tileは、Intelの新しい製造プロセス「Intel 4」(旧称Intel 7nm)で製造されます。そして、GPUが搭載される「GPU Tile」はTSMC N5で製造されます。また、パッケージ上で中心的な役割を果たす「SOC Tile」、各種コントローラなどを搭載する「I/O Tile」はそれぞれTSMC N6で製造されます。これらのタイルはIntel 22nmで製造される「Base Tile」上に実装されており、ここに3Dパッケージングが用いられています。このBase Tileは通電していないようで、もっぱら実装の都合で搭載しているよう。

さらに、Ryzen AIやQualcomm Hexagon、Apple Neural Engineに対抗するAIアクセラレータを搭載することがすでに明かされています。

今回明らかになったこと

では、今回明らかになったことをまとめていきます。

CPUアーキテクチャ

Alder Lakeでは、Intel Hybrid Technologyが採用されました。これはArmのbig.LITTLEのような技術で、ヘテロジニアスマルチコアを実現しました。ただし、Armと違う点として効率も重視しているものの、性能を高めるための技術として導入しているとしています。

Alder Lakeにて、高性能コアに当たるPコアにはCypress CoveやWillow Coveの後継となるCore系統「Golden Cove」が、高効率コアに当たるEコアにはTremontの後継となるAtom系統「Gracemont」が採用されました。その後継で現行世代となるRaptor Lakeでは、Eコアは引き続きGracemontが採用されましたが、PコアにはGolden Coveをベースにクロックやキャッシュを増加させたマイナーチェンジ「Raptor Cove」が採用されています。

Meteor Lakeでは、Pコア・Eコアともに刷新され、Pコアには新しい「Redwood Cove」が、Eコアには「Crestmont」がそれぞれ採用されます。それぞれ、IPCが向上しており、高クロックとなっているIntelでの性能向上が期待できます。

では、それぞれのアーキテクチャの変更点を見ていきます。

Pコア「Redwood Cove」

Redwood Coveは、Raptor CoveないしGolden Coveの後継となるアーキテクチャで、現時点でキャッシュが強化された点が明らかになっています。Redwood CoveでのL1命令キャッシュは64KB(Golden Coveは48KB)、L1データキャッシュは32KB(同48KB)、L2キャッシュは2MB(同1.25MB/Rator Coveでは2MB)(すべてコアあたり)となっています。

多くが語られていない状態でメジャーアップデートであると断言することはできませんが、電力効率の改善、内部の帯域幅の改善、モニタリングユニットの改善、そしてハイブリッドテクノロジーで重要である、コアへタスクの振り分けをアシストする「Intel Thread Director」へのフィードバックがより詳細に行えるようになっているとしており、根底の部分に改善が見られます。これらが性能にどう影響するかは不明です。

ただ、本質的にはチックタックのチックに当たる世代であり、大きなアップデートがあるわけではないようです(Alder LakeはIce Lake→Tiger Lakeの流れを見るとタックに当たる世代でした)。しかし、Intel 4への移行により20%の電力効率の向上を達成したとしています。

Eコア「Crestmont」

CrestmontはGracemontの後継となるアーキテクチャで、Alder LakeぶりにEコアのアーキテクチャが変更されます。

こちらも基本的にキャッシュを除いてGolden Cove/Raptor CoveからRedwood Coveへの変更点と同様ですが、注目すべきはVNNIの実行ポートが倍に増えており、AI推論性能が向上するという点です。

キャッシュについては、現時点でTom's Hardwareが伝えている情報として、L2/L3を共有するクラスタが4コアの他、2コアでも構成できるようになったようです。

IPCについては3%の向上が見られるそう。Eコアも徐々にクロックが向上していますので、それなりの性能向上が見込まれるかもしれません。

新しいLP Eコア

そして新たにSOC Tileに「LP Eコア」が搭載されたのも大きな点です。

Alder Lake/Raptor Lakeでは、PコアとEコアで構成されたIntel Hybrid Technology(Intel Performance Hybrid Architecture)が採用されていました。そして、Meteor LakeではPコア・EコアではCompute Tileに実装されています。

Intelは今回、Meteor Lakeには新たにSOCタイルに「LP Eコア」なるCPUコアを搭載することを明らかにしました。このLP Eコアは、CrestmontをベースとしたCPUコアが配置されているのが特徴。つまり、実質的に3つのコアを搭載したマルチコアとなっており、Intelはこれを「3D Performancee Hybrid Architecture」であると説明しています。

SOC Tileは次の項目で説明しますが、各種コントローラ・アクセラレータが搭載されており、負荷が極限まで低い状態であれば、LP Eコアで問題ないのであれば、低電力で駆動するSOC Tileのみで駆動する事ができ、Compute Tileの起動によるアイドル時の無駄な電力消費をなくすことが可能です。では、このSOC Tileの単体動作について見ていきましょう。

もはやこれだけで完結するSOC Tile

そして、今回、最も注目に値するのは「SOC Tile」です。

SOC Tileについて、これまであまり詳細を理解していなかったので説明を省略していましたが、今回明らかになりました。

SOCの内部構造(出典:AnandTech)

SOC Tileは、Meteor Lakeのパッケージで中核の役割を持っており、USBやSATAWi-Fi/Bluetooth、PCIeなどのファブリックを持っている中核であり、コンシューマ向けとしては初めての採用となるNOC(Network on Chip)を採用しています。NOCはパッケージ上で最重要のファブリックであり、Compute TileとGPU Tileの両方と直接接続されている他、SOC Tile内では、後述するLP EコアCPUとNPUや、Media、Punit、Imaging、Displayの各種アクセラレータ/コントローラ、メモリコントローラと接続されています。

さらに、IOCを通じてIO Fabricと接続しており、ここからはUSBやPCIe、Wi-FiEthernet、Audioなどの各種IOコントローラ、そして追加のI/OをサポートするI/Oタイルに接続しています。

SOC Tileの単体動作

SOC TileのNOCに接続しているものの中に、DisplayとMediaというものがあります。これらはそれぞれ「Xe Display Engine」と「Xe Media Engine」を意味しており、Xe GPUに存在したものを切り出してSOCに統合しています。

Xe Display Engineは、4K60Hz HDRを最大4台のディスプレイ出力が可能となっており、8K60Hz HDRや1080p360Hz、1440p360Hzにも対応しています。インターフェイスではHDMI 2.1とDisplayPort 2.1 20Gbps、内部でeDP1.4に対応します。Xe Display Engineのみで映像出力が可能になっているわけです。

Xe Media Engineは、2基のMulti Format Codec(MFX)が搭載されており、AV1やHEVC、AVC、VP9のエンコード・デコードが可能となっています。

そして、先述の通り、LP Eコアが搭載されているため、Meteor Lakeは実質的にSOC Tileのみで動作させることが可能となっています。IntelはSOC Tileを「Low Power Island」と読んでおり、かなり低電力で動作させることができるようで、アイドル時の消費電力削減に繋がりそうです。

NPU

SOC Tile内に存在するNPUは、今回新たに搭載されるAIアクセラレータです。先述の通り、Ryzen AIやQualcomm Hexagon、Apple Neural Engineに対抗するAIアクセラレータであり、AIの推論効率がCPUと比較して7.8倍良いそう。NPUは単体でも、単一タスクにおいてCPU/GPUと協調しても動作することも可能です。

NPUの内部は2基のNeural Computing Engineによって構成されおり、これらの更に内部には推論パイプラインとSHAVE DSPが搭載されています。推論パイプラインは、ニューラルネットワークの実行におけるワークロードの実行を担い、データの移動を最小限に抑え、高い計算能力を必要とするタスクの固定関数操作に焦点が合わされています。具体的には、乗算累積ユニットの他、性化関数ブロック、およびデータ変換ブロックから構成され、こう見る度な行列計算に最適化されています。

SHAVE(Streaming Hybrid Architecture Vector Engine) DSPは、AIアプリケーションとワークロード向けに設計されており、推論パイプラインやDirect Memory Access Engine(DMAエンジン)とともにパイプライン化する機能を有しており、NPU上での並列コンピューティングを可能にしています。解釈が間違っていれば申し訳ないですが、既存のワークフローもこのSHAVEによってNPUで処理できる形に変換できるということでしょうか。

NPU機能は、MicrosoftのMCDMなどのAIワークフローと互換性があり、Windows Studioなどの機能も利用できるようになっています。

I/O Tile

I/O TileにはSOC TileにはないI/Oが搭載されてます。USB4やThunderbolt、追加のPCIが搭載されているようです。基本的なIOはすべてSOC Tileに搭載されているのであくまでオプションになるのでしょうか?

GPU

最後にGPUを見ます。Intel CPUでは、第11世代Tiger LakeからArcと同じXeアーキテクチャに基づくGPUが内蔵されています。しかし、iGPUは「Xe-LP」と呼ばれる低電力版の小規模タイプで、レイトレなどは使えず、またコア数も多くはありませんでした。

Meteor LakeでのGPUは大型アップデートとなっており、「Xe-LPG」が採用されています。LPGはHPGを縮小したモデルで、HPGと機能差はあるものの、RayTracing Unitが採用されていたり、実行ユニット(EU)数が96コアから128コアに増加していたり、XeスライスがHPGとと同じ構造になっているなどの違いがあります。

規模的に見ると、Xeスライスの数がHPGで最大8基だったのが、LPGでは最大2基、EU数が512に対して128と1/4の規模になっています。一方でXe Matrix Engine(XMX)は搭載されておらず、XeSSは他社GPU同様にDP4a命令によって行われます。XMXの有無はArcとの差別化のように見えますが、XMXとNPUがどれほど機能としてダブってるのかは若干気になります。

性能は倍になっているとしており、AppleAMDの高性能内蔵GPUとどれほどはりあえるかが鍵になります。

年内登場

Intelは、Meteor Lakeこと「Core Ultra」ブランドが今年12月14日に発表されることを明らかにしました。

おそらく、搭載製品の多くは年明けのCESに登場することになるでしょう。ただ、年内登場の製品も期待されています。

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