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今年のIntel、AMD、NVIDIA、Apple Siliconの動向をおさらい ~ 決して良い年は言えなかったけれど、重要な年になった

今年登場したRaptor Lake

さて、今年もクリスマスが終わり慌ただしく年末がやってきました。普段通りの年末企画を今回から始めます(遅いけどね)。この記事では、半導体メーカーの今年の動向をまとめて行きたいと思います。

Intel

まずは筆頭、Intelからお話していきます。Intelにとって今年は新体制二年目であり、重要な発表も多かった一年でした。しかし、業績自体は芳しくなかったようで8月には初めてAMD時価総額Intelのそれを上回るということもありました。しかしながら現在は再度逆転しており、IntelよりもAMD時価総額が下回っています。

では、Intelは今年どのような製品を登場させ、製品を発表したのでしょうか。振り返ってみましょう。

Alder Lake

Alder Lakeは2021年に初登場した製品ですが、実際に普及したのは2022年に入ってからのことですし、Alder Lake-Sのミドル以下のモデルとモバイル向けCPUはすべて今年登場したモデルです。

Alder Lakeは、Lakefieldで初採用されたIntelヘテロジニアスマルチコア(異種混合)技術である「Intel Hybrid Technology」の基、性能コアであるPコアにはCore系統の「Willoe Cove」の後継である「Golden Cove」、効率コアであるEコアにはAtom系統である「Tremont」の後継「Gracemont」を採用した製品ラインナップです。

プロセスルールには「Intel 10nm Enhanced SuperFin」という名前で呼ばれていた「Intel 7」プロセスが採用されました。Core S系統では第5世代から実に7世代ぶりにプロセスルールが大幅アップデートされているなど、構造上そしてシリーズの中でも重要なラインナップとなりました。

AMDが2021年にデスクトップ向けCPUをアップデートしなかったこともあり、IntelAMDを上回る人気を見せたことによって、Ryzen登場後奪われていたシェアをIntelが取り戻すことにも成功します。その上、シングルスコアもApple Siliconを上回り名実ともに最強のゲーミングCPUが登場したわけです。

その他、ハイエンドラップトップ向けには末尾HXの55W帯CPUを投入しました。更に、Alder Lakeには全コアを5.0GHzに引き上げた「Core i9-12900KS」が投入されました。これはエンスージアストを中心に話題になりました。

IHTを始めとした革新的な技術が盛り込まれたAlder Lakeですが、その反面、AVX-512を無効化するなど、一部の機能がRocket Lakeから削除されているということも話題になりました。

Raptor Lake

そして、Alder Lakeの拡充が完了すると第13世代Core「Raptor Lake」の上位製品群を投入しました。

Raptor LakeはGolden Coveからキャッシュを増やすことによって性能を向上させた「Raptor Cove」を搭載することによって性能向上を図っています。更に、ダイの耐性が向上しており、Intelは6GHzブーストに対応したSKUの投入を予告している他、オーバークロックの世界記録を9.008GHzで塗り替えるなどの偉業を果たしました。

まだミドルグレードやモバイル向けの製品が登場してないので、実際の展開は2023年になる見込みです。

Sapphire Rapids

今年はIntel Xeonの新ラインナップの投入はありませんでした。この主な原因としては、Sapphire Rapidsの計画が予定より1年以上遅れていることが挙げられます。現在に最新のスケーラブルプロセッサのラインナップは、第3世代のIce Lake-SP、及びCooper Lake-SPとなっており、ともに2021年以前に投入されたラインナップです。

しかし、何も音沙汰がなかったわけではありません。Intelはこの1年、5月にはサンプル出荷の開始、6月のVisionではダイの展示を行うなど、事あるごとにSapphire Rapidsの情報を更新し続けました。ついに来月10日には正式にSapphire Rapidsが登場することがすでに案内されいます。

Sapphire RapidsはAlder LakeのGolden Coveを採用したサーバー・データセンター向けのラインナップです。Intelプロセッサでは久々のマルチチップレットモデルである「タイル構造」を初めて採用するラインナップでもあり、期待が高まっています。

Sapphire Rapids-Max

別名Xeon Maxで呼ばれたこの製品は、Sapphire Rapidsのパッケージに64GBのHBM2eメモリを同梱していることでCPUとメモリの帯域を1TB/sに引き上げたモデルです。Sapphire Rapidsがサーバー向けのプロセッサであるのに対して、こちらはHPC用途を専門とするCPUとなっています。

メモリ帯域が数倍に高速化し、そしてアーキテクチャの更新もあり、Ice Lake-SPの「Xeon Platinum 8380」と比較して5倍もの性能向上を果たしています。

Intel Arc

そして、今年のIntelの大きな製品といえば、Intel Arc Aシリーズもありますよね。これは、Intel初のゲーミングdGPUです。NVIDIAAMDに継ぐ第3勢力として登場しました。

最新の競合他社のGPUと同等のハードウェアレイトレーシングの他、Xe Super Samplingというアップスケーリング技術にも対応しています。ただし性能についてはまだ一歩届かずということで、最上位のIntel Arc A770でもRTX 3060 Tiと同等程度の性能となっており、ハイエンドGPUを展開できていない状況です。これは来年以降に期待でしょうか。

ただし、ミドルレンジGPUとしては競合他社と遜色ない性能を誇っており、RTX 3060やRTX 3060 Ti、RX 6600 XTと競合します。場合によっては、これらのGPUより高い性能を果たすこともあるくらいです。また、価格もA770で5万円後半とこれまた競合できる価格となっています。

ちなみに、Intel ArcはIntelのプロセスではなく、TSMC 6nmで製造されています。

さらに、Arcをベースにした「Arctic Sound M」も発表されましたね。こちらはデータセンター向けの小規模GPUで、ゲームのストリームに適しているとしています。

Intel Data Center GPU Max

Intel Data Center GPU Maxは、Sapphire Rapids Maxと同時に登場したもともと「Ponte Vecchio」という名前で開発されていたハイエンドGPUです。Intel Arc A770の4倍大規模なGPUとなっています。こちらもSapphire Rapidsと同様にタイル構造となり、一部のタイルはTSMCで製造されます。

このGPUIntelGPGPUラインナップにあたるラインナップで、NIVDIA H100と競合します。

実際にこれの詳細が発表されるのはSapphire Rapidsと同じ1月10日になります。

Meteor Lake

第14世代Meteor Lakeは、コンシューマー向けCPUでは初めてタイル構造を採用することが明らかにされている2023年登場予定のCPUです。ただ、そのアップデートの大きさから、今年どころか去年から積極的に情報が公開されて続けてきました。

特に今年重要になったのが、各タイルの接続方法と製造プロセスです。

Meteor Lakeにはコンピュートタイル、グラフィックタイル、I/Oタイル、SOCタイルが存在しており、そしてそれらの接続はこれらのタイルが実装されるベースタイルによって通信されます。つまり、ベースタイルの上にCPU・GPU・I/O・SOCが実装されるということです。これは3D実装の一例です(が実際には2.5Dになるのかと)。

各タイルの製造プロセスですが、CPUに当たるコンピュートタイルはIntel 4プロセスで製造されます。Intel 4プロセスはもともとIntel 7nmと呼ばれていたものです。GPUに当たるグラフィックタイルはTSMC 5nmプロセスで製造されます。また、SOC・I/Oの2つのタイルはTSMC 6nmで製造されます。そしてベースタイルはIntel 22nmプロセスで製造されます。

Meteor Lakeには現在、デスクトップ版がキャンセルされたという情報があり、そのリリースには暗雲が漂っていますが、これは来年の情報に期待ですね。

RICS-V

IntelRISC-Vの取り組みをご紹介します。Intelは2021年にRISC-VのIPを開発しているSiFiveを買収しようとして失敗したという報道がありましたが、今年は協力関係になるようです。

まず、SiFiveとは関係ない部分。Pathfinder for RISC-VというものがIntelから今年の秋に発表されました。これは、Intel Foundry Serviceを利用することを前提にIntelRISC-Vの開発に必要なツールを一式提供すると言うもの。こちらは、RISC-Vのチップを開発するのをサポートする物となっています。Intelは自社製品にx86を提供していますが、別にRISC-VやArmを敵視しているわけではなく、特にIFSではx86のIPを提供するものの、RISC-Vについても手厚いサポートを提供しています。正直、x86IntelAMDの特許の塊であり、手を出しづらいというのもあるかもしれませんが(と言うかできたとしてもIntelAMDよりも高品質なものを作れる可能性は低いし)。

もう一つが、「Horse Creek Dev Platform」です。こちらは、Intel 4で製造されるSiFive製のコアを搭載した開発キットでソフトウェア開発を推進するものとなっています。RISC-VはすでにLinuxカーネルでサポートされており、基盤自体は割と整っています。Intelがこのような開発キットの支援することで市場がRISC-Vへ移行し易い環境を作り出そうとしていることがわかりました。

AMD

AMDは今年、3D V-Cacheを搭載した製品のほか、Zen 4のローンチ、RDNA 3の正式リリースなど重要な年になりました。Intelの部分でも触れたように、8月にIntel時価総額を初めて上回りました。このように市場からの期待が高まっているAMDは今年どんな製品を登場させたのでしょうか。

Ryzen 6000シリーズ

Ryzen 6000シリーズは、CES 2022で発表したZen 3+アーキテクチャを採用するモバイル向けプロセッサラインナップです。大きな特徴として、TSMC 6nmを採用すること、統合GPUがVegaからRDNA 2に進化していることなどが挙げられます。

特にこのRDNA2 iGPUが強力で、FSRの他、ハードウェアレイトレーシングにも対応しているのです。その他、AV1エンコードにも対応するなど、Intelよりも一足早い機能の追加などを果たしました。

そして、Ryzenシリーズでは初めてCPUのシングルブーストが5.0GHzに到達しました。

Ryzen 7 5800X3D

AMDRyzen 6000(Zen 3+)シリーズにデスクトップモデルは用意しなかったものの、競合のAlder Lakeに対抗するために3D方向にキャッシュを積層する3D V-Cacheを利用して、L3キャッシュを96MB搭載し性能を高めました。

そのモデルがRyzen 7 5800X3Dです。8C16Tの3.4GHz~4.5GHzとなっており、CPU自体の性能もそこそこ良くなっています。ただ、アンロックモデルではないんですよね。これは単純に技術的な問題なのでしょうか。。。

Ryzen 7000シリーズ

Ryzen 7000シリーズはZen 4マイクロアーキテクチャを採用したRyzenです。リリースは2021年から予告されていた大型アップデートです。Zen 3からプロセスルールが進みTSMC 5nmで製造されました。

先述の通り、Ryzen 6000シリーズによってRyzen初の5GHzに到達しましたがRyzen 7000シリーズではさらに高いクロックまで引き上げられており、Ryzen 9 7950Xではなんと5.7GHzまでクロックが向上するように。これはAMD史上最高どころか、Raptor Lakeが登場していなかった当時にIntelを含めても最高クロックとなりました。

また、Ryzen CPUシリーズでは初めてGPUを内蔵しています。これまでRyzen APUは2つ搭載できるCCD(チップレット)のうち1つをなくして、空いたスペースにGPUチップレットを設置していましたが、Ryzen 7000シリーズではI/OダイにRDNA 2 GPUを搭載しました。と言ってもAPUほど強力なものではなく、CUが2基と本当に「映像出力機能」としてのGPU規模なので、dGPUを前提にしている事がわかります。ただ面白いのは、RDNA 2をそのまま小型化したGPUなのでRay AcceleratorもCU分搭載されており、この規模なのにハードウェアレイトレーシングが利用可能だということですね。

なお、CCDのプロセスはTSMC 5nmですが、I/OダイはTSMC 6nmです。これまたRyzenでは初めてGLOBAL FOUNDRYのプロセスを使わない製品となりました。

AMDはこれでAlder LakeまたはRaptor Lakeで奪われたシェアを取り戻せるかと思いましたが、この世代からDDR5に対応したりPCIe 5.0に対応した事によってプラットフォームがAM4ソケットのものからAM5ソケットのものに変わったためこれまでのマザーと互換性が無くなった上、現時点で最下位のB550マザーが登場当初、3万円からスタートとシステムを構成するのに割高になったためか、ハイエンドが売れ、ミドルレンジが売れないという事態に陥りました。噂によれば減産中とも言われています。

ただし、B550も徐々に値段は下落傾向であり、来年あたりに登場するであろう、エントリ〜ミドルのRyzenが登場する頃には値段問題も解決しているでしょう。

ちなみにAM5ソケットはAM4ソケットまで採用されていたCPU側にピンがある「PGA」タイプのものから、IntelやEPYCと同じくソケット側にピンがある「LGA」タイプに変わりました。これは歴史的転換だと個人的には思います。

Radeon RX 6050シリーズ・Radeon RX 6000Sシリーズ

そして、登場したのがRadeon RX 6050シリーズです。このシリーズは既出の「Radeon RX 6000」シリーズのコアはそのまま、メモリとGPUのクロックを向上させることによって性能を向上させたモデルとなっています。

この6050シリーズはモバイル向けにも展開されました。こちらも同様にコアはそのままクロックを向上させたモデルになっていますが、一部新規のモデルも登場しています。これらのモデルによってラップトップ市場でのRadeonの地位を高めました。

そして、もう一つ、Radeon RX 6000Sシリーズも同時に投入されました。これは、省電力ラップトップ向けのGPUで、最低80Wという小さなTDPでゲーミングラップトップを実現できるように設計しています。また、これらのモデルは、Intelが参入し三つ巴になるGPU市場に対するAMDの対策と言えるでしょう。

Radeon RX 6500 XTとRX 6400

Radeonは更にエントリクラス向けに「Radeon RX 6500 XT」と「Radeon RX 6400」を追加しました。これらのモデルは、RDNA 2 GPUながら6nmで製造される異色のモデルです。ただし基となっているのは、Radeon RX 6500Mに採用されたモバイル向けGPUであり、それをグラフィックカードに流用した製品でもあります。

RX 6500MやRX 6300Mは、前述のRyzen 6000シリーズと併用することを前提としており、エンコードにはRyzen 6000シリーズのiGPUを使うことを想定しているためこれらのGPUにはハードウェアエンコーダは搭載されていません。

Radeon RX 7000シリーズ

そして、Radeon RX 7000シリーズも登場しました。2年ぶりの大型アップデートです。TSMC 5nmで製造されるRDNA 3アーキテクチャを採用していて、大きく性能が向上しています。

また、Radeonでは初めてのマルチチップレットとなっており、キャッシュが独立しています。これによってダイサイズの極度な大型を避けながら大規模化することができるようになりました。

更にAIアクセラレータが初搭載された他、アレイの構成が変更されCU数が96基になったことで61TFLOPSという高性能を実現している他、メモリバス幅が最大384bitになったことで24GBかつ960GB/sというメモリ帯域も実現しました。RTX 4090には及ばないものの、4080以下のモデルと競合します。

私の記憶ではRadeonで初めてDP Alt前提のUSB TypeCに対応しているのもポイント高いです(カードによって搭載是非は変わる)。

EPYC 7003Xシリーズ

そして、サーバー向けでは「Milan-X」という名前で開発されていた「EPYC 7003X」シリーズが発表されました。

このEPYC 7003Xシリーズは、Zen 3を採用したサーバー向けCPU「EPYC 7003シリーズ」に3D V-Cacheを搭載したモデルで、768MBものL3キャッシュを搭載しています。

これによって、EPYC 7004シリーズからも性能向上を果たしている他、Ice Lake-SPに対してもワークロードによっては44%も性能をリードしています。

EPYC 9004

そしてもう一つ発表されたEPYCが「Genoa」という名前で開発されていた「EPYC 9004」シリーズです。Zen 4アーキテクチャを採用しています。

このモデルからソケットが変わりパッケージも大型化しました。その理由は、CCDを12基搭載できるようになったためです。1 CCDあたり最大8基のZen 4コアを搭載できますので、このEPYCは最大なんと96コア192スレッドとなります。

機能としては、Ryzen 7000シリーズも含めてZen 4ではAMDで初めてAVX-512に対応していることが挙げられます。ただし、256bitのアクセラレータになっていおり、Intelのもののほうが性能がありますが、大きな進歩です。

I/O周りも進化しています。こちらもEPYCとしては初めてPCI Express 5.0に対応。2ソケット時にGen 5を160レーンに加えてGen 3を12レーンもサポートするとしています。なお1ソケット時には128レーンサポートしています。

NVIDIA

NVIDIAも今年は重要な年になりました。データセンター向けCPU「Grace」の詳細が徐々に明らかになっている他、HopperやAda Lovelaceという二つのアーキテクチャも登場しました。

Hopper

まずはじめにHopper GPUアーキテクチャからです。後述するAda Lovelaceを含めて、Ampereの後継となるアーキテクチャです。そのうちHopperはAmpereのGPGPU部分の後継を担うもので、HPCやデータセンター向けのアーキテクチャとなります。

HopperはTSMC 5nmで製造されるGPU H100にも採用されるアーキテクチャです。大きな変更点として、Tensorコアに新たにTransformer Engineを搭載しAIの性能を高めました。TransformerというのはAIの学習モデルで、いわゆる自然言語モデルの代表格で、AI性能が前世代から6倍にも向上しています。

更に動的計画法としてDPX命令が追加されました。これによって、命令を効率化することが可能になりました。

また、A100でも一つのGPUを最大7つのインスタンスに分割できますが、Hopperでは完全にインスタンスを分離できるようになったほか、NVDECやJPEGデコーダも分割できるようになりました。これすなわち、Hopperではデコーダの数が増加しているのです。

メモリには80GB HBM3メモリをTSMCのCoWoSという2.5Dパッケージング技術で同梱しています。

また、H100を搭載したシステム「SXM H100」を8基搭載したシステム「DGX H100」を32基で構成した「NVIDIA DGX SuperPOD with H100」(H100を計256基搭載)も発表されており、そしてこのSuperPODを18基接続したスーパーコンピューター「Eos」は18 EFLOPSのFP8性能を発揮し、日本の富岳のFP8性能を4倍上回ります。

Grace

Graceは、昨年存在が発表されたNVIDIA製のCPUです。CPUコアにはArmのNeoverse V2を144基搭載します。ワンチップで144コアを実現しているCPUはIntelにもAMDにもありませんので、最大規模のCPUになることがわかります。

そして、Graceの最大の利点はNVIDIA GPUとの連携が高度であることです。NVIDIAは製品のコードネームに数学者の名前を採用していますが、Grace CPUとHopper CPUはともにGrace Hopperという一人の数学者に由来しています。ここからわかるようにGraceとHopperはセットです。

NVIDIAはGraceとGraceあるいは、GraceとHopperを組合わせたシステムの提供も予告しています。

これらの接続には900GB/sで接続する第4世代NVLinkが用いられており、これは将来的にNVIDIA以外のチップも接続することができるとしています。

GeForce RTX 3090 Ti

コンシューマ向けでは今年の初頭にRTX 3090のGPUコアから更にコア数が増加した「GeForce RTX 3090 Ti」が登場しました。GeForce RTX 3090 Tiは、10752基のCUDAコアを搭載した超ハイエンドのゲーミングGPUです。おおよそ、省電力性を無視して性能に全ふりしたモデルと伺うことができます。

性能は40TFLOPSにも昇り、名実ともに最強のゲーミングGPUとなりました。

ただ、発表から登場までズルズル引きずったこともありRTX 4090と競合している気もしませんが・・・。

GeForce RTX 40シリーズ

そして、Hopperともう一つのAmpereの後継アーキテクチャ「Ada Lovelace」とこれを採用した「GeForce RTX 40」シリーズが発表されました。発表されたのは「GeForce RTX 4090」とメモリが12GBと16GBの2バリアントある「GeForce RTX 4080」ですが、RTX 4080の12GB版は名前がややこしいという理由で後にキャンセルされました。

Ada LovelaceアーキテクチャTSMC 4nmで製造され、CUDAコアは最大18432基と大型化しています。さらにHopperで採用されたTransformer Engineを搭載しFP8演算に対応しています。

また、イトレーシングによって並列処理が不可能になってしまったシェーダー処理をオンザフライで並べ替えて実行することによって並行処理できるようになる「Shader Execution Reordering」を新たに搭載しています。これによって、Cyberpunk 2077の「Overdrive Mode」というレイトレーシングモードではSERに対応することで44%も性能が向上するほか、Portal RTXで29%、Racer RTXでは20%の性能向上が実現されるとのことです。

更にDLSS 3.0に対応しており、ゲーミング性能も大きく向上しています。

素のGPU性能もアーキテクチャとしてはRTX 3090 Tiの2倍以上となる90 TFLOPSを達成、製品としてはRTX 4090で83 TFLOPSとなっており、こちらも2倍以上の性能向上となります。

その他の特徴としてNVENCの数が増加していることやAV1エンコードに対応していることも挙げられます。

Apple

最後にApple Siliconです。Appleは2020年にApple Siliconを投入してからIntelAMDと張り合う半導体企業の新興勢力となりました。と言ってもApple自身は10年前からSoCを設計しているのでその延長ということもあり一概に新興とは言いにくのですが、他の3社に比べれば半導体の歴史は浅いので・・・。

さて、そんなAppleも第2世代目となるApple Silicon「Apple M2」を投入したり、M1 Ultraとか言う変態SoCを投入したことで大きな一年になったはずです。

Apple M1 Ultra

登場順に見ていきましょう。

Apple M1 Ultra」はMac Studioに搭載したハイエンドApple Siliconです。

AppleはM1 Max以上に一つのチップをスケーリングするのは非現実的であるとして、M1 Maxを2倍スケールすることでM1 Ultraを開発しました。つまり、M1 UltraはM1 Maxを2つ搭載したSoCであるということです。

ではどの様に2つのM1 Maxを搭載したのかというと「Ultra Fusion」というインターコネクトを利用しています。これはおそらくTSMCのTSVを活用していると見られるためAMDの3D V-Cacheと同じ理屈のはずです。このUltra Fusionは1万本以上のインターポーザによってチップを連結し、1TB/sの帯域があるそうです。

また、メモリもメインメモリとしてはなかなかの変態仕様で1024bitメモリインターフェイスというDDR5だったら16チャネルレベルのLPDDR5-6400メモリを搭載しており、819.2GB/sという帯域で通信します。vRAMでも高速なメモリですが、このメモリを普通にメインメモリとして使っているのだからエグいものです。

Apple M2

そして、Apple M2も発表されましたね。MacBook Airと13インチMacBook Proに搭載されたApple Siliconです。製造プロセスについては改良された5nmとAppleが説明していますが、おそらくTSMC N5Pだと見られます。

CPUアーキテクチャはどちらかというとマイナーアップデートとなっているようで、ベンチマークから逆算するとApple A15 Bionicと同じCPUアーキテクチャ構成と見られます。

しかし、GPUは8コアから10コアに増加しており、それに伴いグラフィック性能も大きく向上しています。ちなみにこれはApple A15 BionicがA14からGPU性能を向上させた手法と同じです。

メモリはこのグレードとしては初めてLPDDR5を採用し、メモリ帯域は104GB/sとなりました。

Apple A16 Bionic

Apple A16 BionicはTSMC 4nmを採用したiPhoneiPad向けSoCです。

トランジスタの増加幅がここ最近のAppleとしては小ぶりであり、A15につづきマイナーアップデート感が漂います。

しかしながら、メモリ帯域が50%向上しています。これはLPDDR4XからLPDDR5にアップデートされたためと見られており、メモリクロックが4266MHzから6400MHzに向上したためと見られます。

まとめ

マイニングブーム・巣篭もり需要の継続といった高需要に見舞われた2021年とは対象的にロシアによるウクライナ侵攻や、日本では円安などが重なった影響で、決していい年とは言えませんでした。しかし、AMDNVIDIAGPU更新、IntelのSapphore Rapidsの正式告知、Appleの新世代SoCなどCPU/GPU/SoC市場は今年も面白い年になりました。

ちょっと気がかりなのがQualcommとArmの紛争ですが、これ書いてると多分年越すので今回はここまで。

冒頭を読み返すと「クリスマスを控え...」とか書いてました。クリスマス前に書き始めて、書き終わりがなんと大晦日・・・。まだ書きたい記事は多いのになぁ。忙しい年末だった・・・w。