錦です。
今回は、久々に道路のお話。先日、兵庫県で新たな道路が事業化されました。その名も「名神湾岸連絡線」です。今回はその話。
事情
まずは、この名神湾岸連絡線を取り巻く事情を見ていきたいと思います。
大阪と神戸は約30kmほど離れており、その間は住宅街が続いています。大阪市と神戸市をつなぐ鉄路というのは、JR神戸線・阪神本線・阪急神戸本線と割と充実しています。それに対して、阪神間を結ぶ高規格道路というのは一概に発達しているとは言えません。
大阪府と兵庫県の府県境をまたぐ高速道路は、中国自動車道・名神高速・新名神・阪神高速3号神戸線・5号湾岸線と割と充実しているように見えますが、実際に神戸の市街地部に路線を伸ばしているのは神戸線のみです。
神戸線のえぐさ
阪神を結ぶ道路というのは混みやすいという特性があります。特に神戸線が非常に有名です。阪神高速の中でも神戸線の渋滞は常習化しており、してない日のほうが少ないんじゃないか?ってくらい。これは、神戸線ならではの事情があります。
名神高速の存在
名神高速は「名古屋」と「神戸」を結ぶ道路という名前を持っているのにも関わらず神戸には到達せず、阪神の中間部に当たる西宮止まりとなっています。名神は西宮の終端部で神戸線に接続しています。これは、神戸線で神戸に続いているから、これと合わせて名神間のネットワークを形成しているということになっています。
そして、前述の通り、神戸の中心部である三宮の近くに路線を持っている阪神を結ぶ高速道は、神戸線のみです。その結果として、神戸方面に向かう車が、大阪方面からくる車と名神から来た車が西宮で合流し、キャパオーバーしてしまいます。
その他にも神戸線の交通量が多くなる要因があります。
湾岸線
阪神高速5号湾岸線は、大阪南港~六甲アイランドを結ぶ路線です。こちらは他の阪神高速と違い6車線だったり、80km/hだったりする非常に高規格の道路です。この路線も阪神間を結ぶ道路の1つとして計画されています。しかし、現在開通している部分は前述のとおり六甲アイランドまでとなっており、阪神のネットワークを構成できてはいません。
一部のユーザーは、神戸線の渋滞を避けるために湾岸線を経由して神戸に向かう例があります。ただし、湾岸線は途中までしか道路が通っていないので途中で道を変える必要があるわけです。
阪神高速は特例として、湾岸線の住吉浜出入り口と、神戸線の摩耶・京橋・生田川の各出入り口では乗り継ぎ割引が適用されます。この割引を利用すれば、湾岸線で住吉浜まで向かって、その先を摩耶から乗り換えてということが出来ます。ただ、こうなればどうなるかは目に見えてわかることで、生田川や摩耶は3号神戸線の中でも最も混雑する場所になってしまうわけです。
因みに、住吉浜出入り口の近くから神戸の中心部に向けては、ハーバーハイウェイという有料道路がありますが、こちらはETCが使えないかつ別料金になっているのでそこまで利用者が多いわけではないと思います(あったとして神戸線の渋滞回避のみで、渋滞自体の緩和というわけではありません)。
国道43号
そして、これはあまり影響がないかもしれませんが、国道43号の存在も少なからず影響を与えているでしょう。
国道43号は、大阪西成と神戸灘を結ぶ、阪神間の主要な国道となっており、国道2号と並んで住民や物流の要となっています。兵庫県に入ってからは、神戸線を挟むように並走しており、神戸線は国道43号の有料部という特性も持ちます。
しかし、その利便性や経由する地点から、トラックなどが多く行き交うことになり、結果として西淀川公害訴訟に発展、その判決より片側3車線という立派な道路にもかかわらず、殆どの区間で最高速度が40km/hに制限されている×オービスがやたら設置されてしまうということになります。神戸線はそうした制限というのはないので、お金をかけて神戸線を使うという車やトラックが割と数多く居ます。
あとはもうおわかりですね。
結論として、神戸線の渋滞というのは、大阪からの神戸線の利用者+43号の代替としての利用者+名神からの流入+湾岸線からの流入という要因が重なり渋滞が起きる名所となってしまったわけです。
湾岸線
ここまでは神戸線のお話でしたが、次は湾岸線のお話です。前述の通り、湾岸線は阪神間を結ぶルートの1つとして計画されていますが、現状として大阪から六甲アイランドまでしか達していません。しかし、今後垂水まで延伸する計画があり、実際事業は進んでいます。
なので、実際に湾岸線は神戸線のバイパス路線としての特徴を持つことになります。
名神湾岸連絡線
さて本題です。名神湾岸連絡線とは一体何なのか。それをお話していきます。
名神湾岸連絡線は、兵庫県西宮市内で事業が進む新しい道路です。名神高速と神戸線の交点となる西宮ICから、湾岸線の西宮浜出入り口付近に新設される西住吉浜JCTの間を結ぶ、総延長2.7kmの道路となっています。全線片側1車線の2車線隣、1日あたり17,000台の通過を見込んでいます。
西宮ICのジャンクションでは、「名神→名神湾岸連絡線」の他、「神戸線 西行→名神湾岸連絡線」で接続します。ただし、「神戸から来た神戸線(東行)→名神湾岸連絡線」は接続しません。それ以外は接続できます。
また、住吉浜出入り口が名神湾岸連絡線にも新設されます。
湾岸線と一体
この計画は、後で話す役割上、湾岸線延伸と一体で行われています。湾岸線は前述の通り、大阪南港~神戸までを結ぶ道路ですが、現在は大阪~六甲アイランドまでしか路線が通っていません。「までしか」というと語弊があり、名谷JCT~垂水JCTも開通していますが、現状あまり関係ないのでちょっと割愛します。
で、残りの名谷~六甲アイランドの区間は現在2つに分けられており、六甲アイランド~駒ヶ林南出入口が事業化されています。この区間だけで三宮の経度は超えるので、前述の通り阪神間のバイパスとしての役割を発揮することになります。名神湾岸連絡線は、この六甲アイランド~駒ヶ林南出入口の事業と一体で進められることになります。
分散
では、続いて湾岸線と一体で進められる理由を話していきます。
名神高速道路は前述の通り、名古屋と神戸をつなぐネットワークのうち西宮~神戸間は神戸線に西宮ICで接続することによって神戸線に委ねています。その結果、神戸線の容量が満杯になり渋滞が多発してしまう事になってしまったわけです。で、名神湾岸連絡線というのは、その名の通り「名神」と「湾岸線」を結ぶという役割を持っています。
名神と湾岸線を結ぶことによって、名神の車が神戸線に集中するということが緩和されることが期待されています。つまりは、名神→神戸という流れを神戸線と湾岸線に分散させるための道路というわけです。しかし、その肝心の湾岸線が神戸の中心部まで伸びてないと意味がないですよね。なので、名神湾岸連絡線と湾岸線の延伸が一体となって進められることで、神戸線の渋滞緩和と、阪神・名神の第二のルートとして使えるようになるというわけです。
効果
この湾岸線・名神湾岸連絡線により、先程列挙した神戸線の混雑要因「①大阪からの神戸線の利用者+②43号の代替としての利用者+③名神からの流入+④湾岸線からの流入」のうち、①と③を緩和できるほか、④の心配がなくなり神戸線の渋滞緩和へつながることになります。
これ以外にも、神戸線が渋滞しているときに、神戸線を迂回して神明道路や姫路・淡路島方面に抜けられる、あるいはその逆の迂回ルートが出来たというメリットもあります。
まとめ
ではまとめましょう。
- 阪神高速3号神戸線は、複数の要因が重なって大渋滞がおきまくり!
- 名神湾岸連絡線は、名神高速と5号湾岸線を結ぶ2.7kmの短い高規格道路
- 神戸線の需要を湾岸線に分散する役割を持つ
- 湾岸線の延伸と一体に進められることで、阪神・名神間のネットワークが強固なものに!
こんな感じでしょうか。
少なくとも、大阪~山陽エリアのアクセスが改善される重要な約3kmなのは間違いないでしょうねぇ。