Nishiki-Hub

国内外のPC/PCパーツ/スマホ/Appleなどの最新情報を取り上げています

IntelのCPU開発コードネームを理解する(Skylake以降)

本日の内容

Intelの開発コードは若干複雑だ。今回は、Intelの製品ラインナップについて取りまとめていきたいと思う。

それぞれのラインナップについて、詳細を語りたい気持ちもあるが、今回はそれぞれの製品の関係を説明することを重視し、ラインナップについては簡単に説明していくこととする。

お断り

本記事では、デスクトップをDT、ラップトップをLTと省略している部分があります。

また、15~28W帯を以前の区分に合わせて低電力帯としている部分があります。

Core/Core Ultra系統(コンシューマー)

IntelはSkylake以降の製品ラインナップについて述べる。正直、Intelは2017年〜2021年の間、製品ラインナップが並行するなどして異常なほどに複雑になっている。例えば、同世代の中で世代交代が発生していたり、競合他社と手を結んでみたり。複雑になった背景にはIntel 10nmへの移行の遅れがあるが、正直プロセッサの迷走具合は今見てもとても面白い。

Skylake

Skylake
ArchSkylake系統Core系統
Xeon系統
製造Intel 14nm+前世代Broadwell
製品第6世代Core
第7世代Core X
第9世代Core X
第1世代Xeon SP
Xeon W-2100
Xeon W-3100
Xeon E3 v5
次世代Kaby   Lake
Cascade Lake
電力帯超低電力帯
低電力帯
45W帯
35W/65W/91W
高火力帯
派生なし
ラインナップ
Skylake-SP第1世代Xeon SP
Skylake-XHEDT向けCore   X
Xeon W-2100
Xeon W-3100
Skylake-SDT向け第6世代Core
DT向けXeon E3v5
Skylake-H高性能LT向け第6世代Core
高性能LT向けXeon E3 v5
Skylake-U低電力LT向け第6世代Core
Skylake-Y超低電力LT向け第6世代Core
Skylake-WXeon W

SkylakeはIntelの中でもメジャーアップデートとなった製品ラインナップであり、マイクロアーキテクチャである。Skylakeは2016年に登場したマイクロアーキテクチャであるが、Skylakeをベースとした製品は2020年まで投入され続けた。

14nmプロセスを採用するIntel製品は、Skylakeの前の世代となるBroadwellからの採用であったので、これはチック・タック理論で言う、タックに当たるアーキテクチャである。

Skylakeは、XeonからCoreまでを横断するマイクロアーキテクチャであるが、Xeon向けとCore向けで仕様がかなり異なる。

共通する部分からみていく。まず、14nmをBroadwellに引き続き採用した。

そして、DDR4メモリを採用した。今後、Raptor LakeまでDDR4となる。更に、MPXやSGXをはじめてサポートした製品でもある。さらに「Speed Shift Technology」もサポートされた。これにより、電力と性能をより自由に設定できるようになった。

GPUはGen 9となり、大幅に性能向上。「Iris Plus Graphics」のような比較的高性能なiGPUもCPUに搭載された。

製品のラインナップは非常に広く、超薄型のSkylake-Yから、スケーラブルプロセッサにまで対応する。ソケットあたりのコア数の範囲は2〜28コアと柔軟で多様な用途に対応できる能力を備えている。

  • 第6世代Coreプロセッサ(Skylake-S/U/Y/H)
  • 第7世代Core Xプロセッサ(Skylake-X)
  • 第9世代Core Xプロセッサ(Skylake-X)
  • 第1世代スケーラブルプロセッサ(Skylake-SP)
  • Intel Xeon W-2100シリーズ(Skylake-W/X)
  • Intel Xeon W-3100シリーズ(Skylake-W)
  • Xeon E3 v5ラインナップ

以後、Willow Cove、Sunny Cove、Cypress Coveの登場まではSkylakeのアーキテクチャをベースとした製品が続くことになる。

XeonやCore X向けの特徴については、ここに記述するにはややそぐわない点があるため、「サーバー・HEDT向け」の節で解説する。

Kaby Lake

Kaby   Lake
ArchSkylake系統Core系統
Xeon系統
製造Intel 14nm+前世代Skylake
製品第7世代Core
第7世代Core X
Xeon E3 v6
次世代Coffee   Lake
Whiskey Lake
電力帯超低電力帯
低電力帯
45W帯
35W/65W/91W
高火力帯
派生Kaby   Lake R
Kaby Lake G
Amber Lake
ラインナップ
Kaby Lake-XHEDT向けCore X
Kaby Lake-SDT向け第7世代Core
DT向けXeon E3v6
Kaby Lake-H高性能LT向け第7世代Core
高性能LT向けXeon E3 v6
Kaby Lake-U低電力LT向け第7世代Core
Kaby Lake-Y超低電力LT向け第7世代Core

Kaby Lakeは、製品ラインナップとしてSkylake-S/U/Y/Hの後継として登場した製品ラインナップである。Skylakeをベースにしており、第7世代Coreプロセッサの本流である。2016年8月にモバイル向けが、2017年1月にデスクトップ向けがそれぞれ初登場した。

Skylakeからの変更点として、プロセスルールが変更されたというポイントが挙げられる。これまでは、プロセスの微細化とマイクロアーキテクチャの改良を交互に行うチックタックの法則をベースとしていたが、Intel 10nmの遅延によりこれが破綻。結果としてプロセスの微細化・マイクロアーキテクチャの改良に加わる新たなステージとして、プロセスの最適化が行われた。具体的には、製造プロセスを見直し最適化することで電力効率を上げるということである。

このことに由来するかは不明であるが、クロックが向上し、Kaby Lake-Sの最上位であるCore i7-7700Kのベースクロックが4.2GHzとなった。

その他の変更点としては、内蔵GPUである。4K HEVCやVP9のハードウェアエンコードに対応した。また、モバイル向けではIris Plus Graphicsが拡大され、全体的にグラフィック性能が向上した。

Kaby LakeはSkylakeと比べてラインナップされる範囲が限定的である。主にコンシューマー向けラインナップとして展開された。そのため、Xeon製品ではLGA-1151製品以外では展開されていない。

ワークステーション向けとしては部分的にCore Xの7000番台としてラインナップされたものもあるが、少数でありSkylake-Xがラインナップの大半を占める。

ところで、Kaby Lakeを含めて、これから先数世代はIntel 10nmへの移行の遅延によって発生したいわば"場繋ぎ"のような製品ラインナップとなる。そのため、今世代もプロセスは14nm+となっており、10nmは先送りになった。その他、この世代から製品ラインナップが入り乱れるようになり、結果として派生製品が多く登場することになった。

派生製品は、最長第10世代まで存在したため、派生含めた後継ラインナップは「Coffee Lake」「Whiskey Lake」「Ice Lake」「Tiger Lake」となる上、Core Xも含めると「Skylake」も一応後継となるため本当にややこしい事この上ない。

Kaby Lake Refresh

Kaby   Lake Refresh(Kaby Lake R)
ArchSkylake系統Core系統
製造Intel 14nm+前世代
派生元
Kaby Lake
製品第8世代Core次世代Whiskey   Lake
Coffee Lake
電力帯低電力帯派生なし
ラインナップ
Kaby Lake-R低電力LT向け第8世代

まず、Kaby Lake派生の筆頭として挙げられるのは、Kaby Lake Refresh(Kaby Lake R)だろう。2017年8月に登場した。

  • 第8世代Coreプロセッサ(Kaby Lake-R / 8050シリーズ)

Kaby Lake Rは、15Wの薄型モバイル向けに展開されたプロセッサである。注意したいのは、Kaby Lakeという名前を持ちながら第8世代プロセッサとされていることである。この製品は、実質的にKaby Lake-U15の後継であり、主な更新点として、このグレードのTDPのCPUとしてはIntelで初めて4コアとなっている点である。Kaby Lake世代までハイエンドを除くモバイル向けプロセッサは2コア4スレッドが最大であったためこれは大きな躍進だ。

その他、Kaby Lake RefreshはCoffee Lakeにも搭載されるような機能を持っているが、プロセスルールは14nm+であり、Kaby Lakeの派生製品として認識しても差し支えないだろう。名称も改良版を意味するRefreshが書かれており、Kaby Lakeをベースにした製品であることがわかる。というか、Kaby Lake-Hを低電力したのがKaby Lake Rであるようだ。

Kaby Lake Rは、第8世代で初めて登場したラインナップであり残念ながらWindows 11には対応しない。

Kaby Lake-G

Kaby   Lake G
ArchSkylake
AMD Vega
系統Core系統
AMD Vega GPU
製造Intel   14nm+
GF 14LPP(GPU)
前世代
派生元
Kaby Lake
製品第8世代Core次世代なし
電力帯100W帯   特殊派生なし
ラインナップ
Kaby Lake G高性能薄型LT向け第8世代Core

そして、Intelプロセッサの中でもかなり異色の存在となっているのは、このKaby Lake-Gである。このKaby Lake-Gは、Kaby Lake CPUとともに、ディスクリートでRadeon Vega GPUとHBM2メモリをパッケージに搭載しているというモデルである。Kaby Lake-Gも第8世代Coreプロセッサとして扱われるが、Windows 11には対応しない。

  • 第8世代Coreプロセッサ(Kaby Lake-G)

具体的には4コアのKaby Lake R CPUとともに、最大1536基のStreaming Processorを有するAMDの「Radeon RX Vega M」、そして4GBのHBM2 vRAMを搭載する。

当時、ゲーミングラップトップなどの注目されていた。よくよく考えればe-Sportsのピークだったかも。その際に、Intel CPUとAMDの実質dGPUをパッケージ搭載したAPUのような形のCPUとして提供した。

TDPは100Wと非常に高めであるが、ディスクリートGPUを搭載してる一般的なデバイスと比べるとTDPは低めであり、薄型PCにも採用できると言われている。

Kaby Lake-Gを後継とするラインナップもないほか、後継となるラインナップもないため、唯一無二の存在といえる。

Amber Lake-Y

Amber   Lake
ArchSkylake系統Core系統
製造Intel 14nm+前世代
派生元
Kaby Lake
製品第8世代Core次世代Ice   Lake
Tiger Lake
電力帯超低電力帯派生なし
ラインナップ
Amber Lake Y低電力LT向け第8世代Core
低電力LT向け第10世代Core

Amber Lake-Yも第8世代Coreの一員であるが、Kaby Lakeの派生と考えられることが多い。その理由としては、第8世代の本流となるCoffee Lakeの機能がないことや、PCHがSkylakeやKaby Lakeと同じものであるためである。登場したのは2018年8月である。

  • 第8世代Coreプロセッサ(Amber Lake-Y)
  • 第10世代Coreプロセッサ(Amber Lake-Y)

Amber Lake-Yは第8世代と第10世代の超薄型プロセッサ(超省電力帯)を担っているラインナップとなる、Kaby Lake-Yの後継である。第10世代にはIce Lake-Yもあるが、Ice Lakeとの違いは後述のIce Lakeの項目で述べることとする。

なお、Windows 11には対応する。

Coffee Lake

Coffee   Lake
ArchSkylake系統Core系統
Xeon系統
製造Intel 14nm++前世代Kaby Lake
製品第8世代Core
Xeon E-2100
次世代Coffee   Lake R
Comet Lake
電力帯低電力帯
45W帯
35W/65W/95W
派生Whiskey   Lake
ラインナップ
Coffee Lake-SDT向け第8世代Core
Coffee Lake-H高性能LT向け第8世代Core
Coffee Lake-U低電力LT向け第8世代
Coffee Lake-BMobileソケットのDT向け第8世代Core

そして、Kaby Lakeの後継となるのがCoffee Lakeである。前述の通りKaby Lakeの後継に当たるプロセッサは多いが、その一つがCoffee Lakeである。2017年9月にデスクトップ向けが、2018年4月にモバイル向けが登場した。

  • 第8世代Coreプロセッサ(Coffee Lake-S/H/U/B)
  • Xeon E-2100ラインナップ

Coffee LakeもKaby Lake同様、10nmへの移行の遅延を埋めるために場繋ぎとして投入されたプロセッサの一つである。また、個人的にIntelのラインナップ暗黒時代の張本人でもある。ラインナップは混沌としており、そもそもKaby LakeのすべてのラインナップをCoffee Lakeが引き継げていない。そのため、Coffee Lakeには超省電力帯の製品のラインナップはなく、代わりにほぼKaby Lakeの「Amber Lake-Y」がその部分を担っている。この状態は第10世代まで続くことになる。

基本的にKaby Lakeと同様Skylakeをベースに拡張が行われている。しかし、CPUとしての改良は限定的でプロセスが14nm++に最適化されたことくらい。

Coffee LakeはCoffee Lake-Sが最も大規模なプロセッサであり、Xeonへの展開はLGA-1151のものにとどまった。その上、Kaby LakeのようにCore Xやそれ以上のXeonへの展開もないので、コンシューマー向けCPU感が非常に強い。

Kaby Lakeの時点でRyzenと競合関係になり始めていたが、ラインナップを見る限りIntelとしてはこのCoffee LakeからRyzenとの競合を考慮した機能となっている。そのため、コア数が増加しデスクトップ向けでは最大6コアとなった。

デスクトップ向けのCoffee Lake-Sは、Skylake-S・Kaby Lake-SとともにLGA-1151であるが、チップセットは対応しておらず、僅かではあるがピンアサインに変更もあるため互換性はない(一部のマザーボードや改造BIOSで無理矢理の対応も可能)。

モバイル向けが2018年4月となっているが、15W帯のみ前述のKaby Lake Rが第8世代プロセッサとして先行している。じゃあKaby Lake Rが第8世代の15Wを担うのかと言われればそういうわけではなく、Coffee Lakeにも15W帯CPUがある。この同じグレードの製品が同じ世代に複数シリーズ並行するというのが、この時期のIntelのわかりにくいポイントだ。ただし、Coffee Lake世代の15W CPUはかなり限られた範囲で流通しているようであり、第8世代の15WとはKaby Lake Rと後述するWhiskey Lakeが中心であると考えていただければいいだろう。

また、こちらもかなり限定的な展開となるが、デスクトップ向けCPUダイをモバイル向けソケットに収めた末尾Bラインナップが提供された。主にミニPC向けのようなラインナップのようで、Mac miniがこれを採用した。

なお、ここより先のCore系統のプロセッサはすべてWindows 11に対応する。

Coffee Lake Refresh

Coffee   Lake Refresh
ArchSkylake系統Core系統
Xeon系統
製造Intel 14nm++前世代
派生元
Coffee Lake
製品第8世代Core
Xeon E-2100
次世代
派生
Comet   Lake
電力帯低電力帯
45W帯
35W/65W/95W
派生 
ラインナップ
Coffee Lake-S   RefreshDT向け第9世代Core
DT向けXeon E-2100
Coffee Lake-H   Refresh高性能LT向け第9世代Core
LT向けXeon E-2100

第9世代となる頃には混沌さは更に増した。第9世代の本流となったのはこのCoffee Lake Refreshである。Coffee Lakeと大きな違いとしては、コア数が最大8コアになったことが挙げられる。

  • 第9世代Coreプロセッサ(Coffee Lake-S/H Refresh)

個のラインナップは、デスクトップ向けとハイエンドモバイル向けのみの展開となり、UやYといったメインストリームのモバイル向けプロセッサはなく、第8世代のCoffee Lakeが引き続き担う。

Coffee Lake Refreshではついに最大コア数が8コアに到達したうえ、デスクトップ向けで初めてCore i9というグレードが登場した。それ以外についてはCoffee Lakeから大きな変更点はない。プロセスルールも14nm++である。

ただし、SpectreとMeltdownという2つの脆弱性については、この世代からハードウェアレベルでの緩和策が取り入れられている。

Whiskey Lake

Whiskey   Lake
ArchSkylake系統Core系統
製造Intel 14nm++前世代
派生元
Coffee Lake
製品第8世代Core次世代
派生
Comet   Lake
Ice Lake
電力帯低電力帯派生なし
ラインナップ
Whiskey Lake低電力LT向け第8世代

Whiskey Lakeは第8世代の15W帯CPUのプロセッサラインナップである。Kaby Lake Rの後継である。わかりにくいかもしれないが、第8世代内で世代交代が発生した。正直個人的にWhiskey Lakeは第9世代にしても良かったのではないかと思っている。

  • 第8世代Coreプロセッサ(Whiskey Lake-U)

主な変更点としては、まず14nm++へプロセスが進化したことが挙げられるが、おおよそ変わりはない。PCHが進化したというものにとどまる。PCHは、Wi-Fi/Bluetoothが統合された他、USB 3.1 Gen 2のコントローラが搭載、オーディオの強化等が挙げられている。

Kaby LakeとCoffee Lakeの違いとしてよく謳われているのはこのPCHの強化であり、PCHが強化されているのがCoffee Lake系、それ以外の第8世代Kaby Lake系となるようだ。

なお、この世代ではSpectreとMeltdownにおいて、Coffee Lake Refreshと同じ緩和策が取り入れられている。そのためかはわからないがKaby Lake Rでは対応していなかったWindows 11に対応している。

Cannon Lake

Cannon   Lake
ArchSkylake系統Core系統
製造Intel   10nm前世代
派生元
Skylake
製品第8世代Core次世代Ice   Lake
電力帯低電力帯   特殊派生なし
ラインナップ
Cannon Lake低電力LT向け第8世代

Cannon LakeはもともとSkylakeの後継となるはずだったラインナップだ。言い換えれば、当初の予定ではKaby Lakeが座っている椅子に座るはずだったものとなる。「だった」としている通り、Cannon Lakeはほぼ亡きものにされた。製品は「Core i3-8121U」ただ一つしかリリースされていない。

  • 第8世代Coreプロセッサ(Cannon Lake-U/Core i5-8121U)

大きな特徴としてはIntel初の10nmプロセスルールであるということだ。チック・タックでいうと、タックの部分を担うはずだったが、10nmの遅延によって製品の登場が延期され、おそらくKaby Lakeの登場時点くらいでは、その後継としてCannon Lakeをリリースすることも考えていたのだろうが、Coffee Lakeが登場した時点で断念したように見える。

Cannon Lakeは結局10nmの試験的なものとなった。仕様は当初通り、Skylakeを10nmにシュリンクした製品であるということから変わりはなかったのだが、ラインナップは全く異なる姿となった。Core i3-8121UはUとつくように薄型ノートパソコンを主なターゲットとする15W TDPであるが、なんとiGPUを搭載しておらず、8121Uを搭載したIntelのNUCはRadeon 500のエントリグレードGPUを搭載している。

ただし、GPU自体はハードウェアとして存在しており、これがGen 10 GPUである。残念ながらこのGen 10 GPUは他に採用例がないため、Ice LakeでGen 11が登場し日の目を見ないままCannon Lakeもろとも葬られた。

Cannon Lakeは、Intel Arkにも製品のページが用意されていないほど不遇な扱いを受けており、当初は華やかなものになるはずだったのが、なんか可愛そうである。

Comet Lake

Comet   Lake
ArchSkylake系統Core系統
Xeon系統
製造Intel 14nm++前世代Coffee   Lake
Coffee Lake R
Whiskey Lake
製品第10世代Core
Xeon W-1200
次世代Tiger   Lake
Rocket Lake
電力帯低電力帯
45W帯
35W/65W/125W
派生Kaby   Lake R
Kaby Lake G
Amber Lake
ラインナップ
Comet Lake-SDT向け第10世代Core
Xeon W-1200
Comet Lake-H高性能LT向け第10世代Core
Comet Lake-YLT向け第10世代Core

Comet LakeはSkylake世代最後のCPUラインナップとなった第10世代Coreの本流である。

  • 第10世代Coreプロセッサ(Comet Lake-S/H/U)
  • Xeon W-1200シリーズ

Comet Lakeは、主にCoffee Lakeの後継である。第7世代から続いた混沌としたラインナップはまだその余韻が続いているが、だいぶマシになった世代でもある。ラインナップは、デスクトップ向けからUシリーズまで。引き続き超省電力帯はAmber Lakeが担当する。

Comet Lake-Sでは、LGA-1200を採用しており、プラットフォームが一新されている。

第10世代にはもう一つ、Ice Lakeが並行しているがこちらとの違いはIce Lakeでまとめて解説することにする。ただ、一つ話しておくとすれば、Coffee Lakeは14nm++プロセスであるということだろうか。

Coffee Lakeでは、最大コア数が10コアに増加。Alder Lakeでは16コアのSKUも存在するが、純粋なCore系統のアーキテクチャだけで10コアを構成するメインストリーム向けCoreはComet Lakeのみである。また、TDPは上限95Wだったものがついに125Wまで上昇した。

Ice Lake

Ice   Lake
ArchSunny Cove系統Core系統
Xeon系統
製造Intel 10nm前世代Coffee   Lake
Cascade Lake
Whiskey Lake
Amber Lake
製品第10世代Core
Xeon W-1200
第3世代Xeon SP
次世代Tiger   Lake
Sapphire Rapids
電力帯超低電力帯
低電力帯
高火力帯
派生Kaby   Lake R
Kaby Lake G
Amber Lake
ラインナップ
Ice Lake-SP第3世代Xeon   SP
Ice Lake-XXeon   
Xeon W-3300
Ice Lake-U低電力LT向け第10世代Core
Ice Lake-Y超低電力LT向け第10世代Core

そして、Intelが念願の10nmの(まともな)製品化を果たしたのがIce Lakeである。

  • 第10世代Coreプロセッサ(Ice Lake-U/Y)
  • 第3世代スケーラブルプロセッサ(Ice Lake-SP)
  • Xeon W-3300シリーズ(Ice Lake-X)

Ice Lakeは2016年から使われ続けたSkylakeアーキテクチャからついに変わり「Sunny Cove」アーキテクチャをベースとするものに変わった。これによって、性能が大きく向上した。

Sunny Coveは、AVX-512を標準でサポートしており、コンシューマ向けでも512-bitのFMAが搭載されている上、IFMA命令もサポートした。Vector-AES・SHA・SHA-NIなどのセキュリティ向け命令も追加された。実行ポートの増加などもありIPCも向上した。

CoreラインナップのIce Lakeは、デスクトップ向けには展開されずモバイル向けのみとなった。しかもそのモバイル向けもハイエンドの部分はComet Lakeが担い、Ice Lakeが担ったのは28W以下の省電力プロセッサである。更にいうと、28W帯のIce Lakeが提供されたのはAppleのみであり、一般に流通しているIce Lakeはすべて15W以下の物となっている。

念願を果たしたと言っても、実はIce Lakeも完全系ではない。Ice Lakeに採用された10nmには4.1GHz以上のクロックを出せないという欠点がある。この欠点は、OCやブーストによって高いクロックを出して性能を高めるデスクトップ向けやハイエンドモバイル向けプロセッサには不向きであるが、電力的な制約があり高クロックを要さない省電力ラインナップや、クロックよりコア数や密度を重視するHPC/データセンタ向けの大規模プロセッサには好適だった。

コンシューマーレベルについてはIce Lake-UはComet Lake-Uと、Ice Lake-YはAmber Lake-Yと並走することになった。これらの違いは、主にサポートである。特にIce LakeにはvProのサポートがないなど法人や集団で導入するには適さない。一方で、性能を求めたい個人利用などの場合にはIce Lakeが適している。

こういった双方の特徴があるため、法人で採用されるようなコンピューターにはIce LakeではなくComet Lakeが採用されている。

Rocket Lake

Rocket   Lake
ArchCypress   Cove系統Core系統
製造Intel   14nm++前世代Comet   Lake
製品第11世代Core次世代Alder   Lake
電力帯35W/65W/125W帯派生なし
ラインナップ
Rocket Lake-SDT向け第11世代Core

Rocket Lakeは第11世代Coreプロセッサである。展開は超限定的でデスクトップ向けのみのラインナップとなっている。

  • 第11世代Coreプロセッサ(Rocket Lake-S)
  • Xeon E-2300シリーズ
  • Xeon W-1300シリーズ

Rocket LakeではSkylakeから変わりCypress Coveという新しいアーキテクチャが採用されている。ただし、プロセスルールは引き続き14nmである。ただし、Rocket Lakeは14nm最後の世代である。

Cypress CoveはSunny Coveを逆シュリンクしたアーキテクチャである。これによってRocket Lakeは、デスクトップ向けCPUでは現時点で唯一AVX-512命令を使うことができるラインナップとなった。

最大コア数は10コアから8コアに減っている。ただし、Cypress Coveにアーキテクチャが更新されているため、総合的な性能はRocket Lakeのほうが高くなる。といっても、流石に10nmのSunny Coveほど高くなるわけではない。ただし、Sunny Coveと同じアーキテクチャを持ちながら、前述の4.1GHzの制約がないということと天秤にかけるとCypress Coveを採用するメリットは大きい。

つまり、簡単に言うとクロックを上昇させにくい10nmを使うより、同じアーキテクチャを使ってクロックを上昇させられる14nmを採用したと言うことになるだろう。

Tiger Lake

Tiger   Lake
ArchWillow   Cove系統Core系統
製造Intel   10nm SuperFin前世代Comet   Lake
Ice Lake
Amber Lake
製品第11世代Core次世代Alder   Lake
電力帯35W帯
45W帯
低電力帯 特殊
超低電力帯 特殊
派生なし
ラインナップ
Tiger Lake-H45高性能LT向け第11世代Core
Tiger Lake-H35中性能LT向け第11世代Core
Tiger Lake-UP3低電力LT向け第11世代
Tiger Lake-UP4超低電力LT向け第11世代

Tiger Lakeは、第11世代のもう一つのラインナップである。モバイル向け全般を担当する他、デスクトップ向けも存在する。

  • 第11世代Coreプロセッサ(Tiger Lake-UP3/UP4/H35/H45/B)

Tiger Lakeは、混沌としていたモバイル向けプロセッサをようやく集約した。これによって、まだRocket LakeとTiger Lakeという隔たりはあるものの、Intelの複雑怪奇なラインナップ暗黒時代はほぼ幕を閉じた。実際に完全に幕を閉じるのはAlder Lakeであるが。

Tiger Lakeは10nm SuperFinと呼ばれる新しいプロセスを採用している。このプロセスは、まだ14nmほどクロックを上げやすいわけではないものの、4.1GHzの制限は回避し5.0GHzまでクロックを上昇させることができるようになっている。アンロックモデルも存在するため、頑張れば5.0GHz以上出るかもしれない。

アーキテクチャは、Willow CoveというSunny Coveの後継が採用されている。vProにも対応しているので、ようやくCove系のアーキテクチャを採用した本格的なラインナップとなった。

そんなTiger LakeはUP3とUP4という新しいラインナップが展開されている。UP3はもともとUシリーズだったもので、Comet Lake-UとIce Lake-Uの後継であり、UP4はAmber Lake-YとIce Lake-Yの後継である。ただし、一概に何W帯と表現するのは難しく、Tiger Lakeでは段階的なcTDPを採用している。

cTDPとはコンフィギュラブルTDPの略で、パソコンのメーカーが、パソコンの熱設計に合わせてCPUのTDPを調整することができるというものである。

そして、GPUはIntel Arcにも採用されるXeアーキテクチャに変わり大きく性能が向上した。

Alder Lake

Alder   Lake
ArchP:Golden   Cove
E:Gracemont
系統Core系統
製造Intel   7前世代Tiger   Lake
Rocket Lake
製品第12世代Core次世代Raptor   Lake
電力帯超低電力帯
低電力帯
45W帯
35W/65W/125W
派生Alder   Lake N
ラインナップ
Alder Lake-SDT向け第12世代Core
Alder Lake-H高性能LT向け第12世代Core
Alder Lake-P28W帯LT向け第12世代Core
Alder Lake-U15低電力LT向け第12世代Core
Alder Lake-U9超低電力LT向け第12世代Core

そして、Alder Lake。これは第12世代Coreプロセッサで、デスクトップ向けから超省電力帯まで、Kaby Lake以来、5世代5年ぶりに上から下まで同じ製品ラインナップで統一された。これを持ってIntel暗黒時代は終わった。

  • 第12世代Coreプロセッサ(Alder Lake-S/H/P/U)

Alder Lakeは、第12世代Coreプロセッサの本流である。Tiger Lake、Rocket Lakeの後継であるが、実質的に後述するLakefieldの後継でもある。

このラインナップの特徴はなんと行ってもIntel Hybrid Technologyである。Intel Hybrid Technologyは、Armのbig.LITTLEのようなプロセッサ構成であり、本流のCore製品としては初めてヘテロジニアスマルチコアの製品となっている。Intelは高性能コアのことをPコア、高効率コアのことをEコアと読んでおり、PコアにはWillow CoveとCypress Coveの後継である「Golden Cove」が、Eコアには後述するLakefieldに採用されているTremontの後継である「Gracemont」を搭載している。なんとなくおわかりいただけた方もいるかも知れないが、PコアはCore系統、EコアはAtom系統のCPUアーキテクチャを採用しているのだ。

GracemontとGolden Coveという命令セットの対応度合いが異なる2つのコアを搭載しているので、命令セットが少ないGracemontに命令セットと機能が合わせられている。そのためAVX-512拡張命令が無効化されている。

ラインナップは従来と若干変わっており、Sはデスクトップ向け、Hはハイエンドモバイル向けで変わりないが、P28が新たに新設、これはTiger Lake-UP3の後継、U15とU9が新設されこちらはUP4の後継となる。上から下まですべて同じ開発コードで統一されたわかりやすいラインナップである。

プロセスルールは10nm Enhanced SuperFinことIntel 7プロセスとなった。これによってクロックの上限はおおよそ無くなったようだ。

Raptor Lake

Raptor   Lake
ArchP:Golden   Cove
E:Gracemont
系統Core系統
製造Intel   7前世代Alder   Lake
製品第13世代Core
Core(シリーズ1)
次世代Meteor   Lake
Raptor Lake R
電力帯超低電力帯
低電力帯
45W帯
35W/65W/125W
派生なし
ラインナップ
Raptor Lake-SDT向け第13世代Core
Raptor Lake-H高性能LT向け第13世代Core
Raptor Lake-P28W帯LT向け第13世代Core
Raptor Lake-U15低電力LT向け第13世代Core
低電力LT向けCore シリーズ1
Raptor Lake-U9超低電力LT向け第13世代Core
Core シリーズ1

Raptor LakeはAlder Lakeの後継となるCPUである。

  • 第13世代Coreプロセッサ
  • Xeon E-2400シリーズ(Raptor Lake-E)

Raptor Lakeは基本的にAlder Lakeと同等であり、マイナーチェンジといえる。実際、末尾Kモデルを除くCore i5以下のブランドでは、Alder LakeとCPUダイを使用している他、プラットフォームも共通している。

Raptor Lakeの上位モデル(末尾KモデルとCore i7以上)は、B0という新しいダイを採用しており、こちらはCPUアーキテクチャがRaptor Coveというものに変更されている。なお、Raptor Coveは基本的にGolden Coveからキャッシュが増加しているという違いがある。

また、Raptor LakeではEコアが最大16コアになっており、物理コア数は、最大8P16Eの24コアとなっている。

Raptor Lakeで追加されたB0ステッピングは、マイクロコードの誤りによって過電圧が起き、破損問題で大きな騒動となった。

Raptor Lake Refresh

Raptor Lake Refresh
ArchP:Golden Cove
E:Gracemont
系統Core系統
製造Intel 7前世代Raptor Lake
製品第14世代Core
Core(シリーズ2)
次世代Arrow Lake
Bartlett Lake
電力帯35W/65W/125W
45W
15W
派生なし
ラインナップ
Raptor Lake-S RefreshDT向け第14世代Core
Raptor Lake-H Refresh高性能LT向け第2世代Core
Raptor Lake-U Refresh省電力LT向け第2世代Core

Raptor Lake Refreshは第14世代Coreに採用されたRaptor Lakeのマイナーチェンジである。最後のCore iプロセッサラインナップでもある。

  • 第14世代Coreプロセッサ
  • Intel Uシリーズ(Intel U300シリーズ)
  • Intel Coreシリーズ2(Core 200H/Sシリーズ)

基本的にRaptor Lakeと大きな違いはなく、ややクロックが向上したモデルとなっている。

Raptor Lakeと同じダイを使用しているため、B0ステッピングではRaptor Lakeと同様にマイクロコードの不具合による破損事故が発生した。

Bartlett Lake

Raptor Lake Refresh
ArchP:Golden Cove
E:Gracemont
系統Core系統
製造Intel 7前世代Raptor Lake
製品Core(シリーズ2)次世代 
電力帯 派生なし
ラインナップ
Bartlett Lake-SIntel Core 200S

Bartlett Lakeは、Raptor Lakeと同じ構成を採用していると見られる組み込み向けのラインナップである。

Raptor Lakeと同様にLGA-1700ソケットを採用している他、Core シリーズ2でもある。

  • Intel Coreシリーズ2(Core 200Sシリーズ)

Meteor Lake

Meteor   Lake
ArchP:Redwood   Cove
E:Crestmont
系統Core系統
製造CPU:Intel   4
GPU:TSMC N5
I/O:TSMC N6
SOC:TSMC N6
Base:Intel 22nm
前世代Raptor   Lake
製品第1世代Core   Ultra次世代Lunar   Lake
Arrow Lake
電力帯45W帯
低電力帯
超低電力帯
派生なし
ラインナップ
Meteor Lake-H高性能LT向け第1世代Core   Ultra
Meteor Lake-U15低電力LT向け第1世代Core   Ultra
Meteor Lake-U9超低電力LT向け第1世代Core   Ultra

Meteor LakeはRaptor Lakeの後継かつ同世代の製品ラインナップである。非常にわかりにくいが、Meteor Lakeはデスクトップ向けには展開されておらず、モバイル向けのみの展開にとどまったためである。

  • 第1世代Core Ultraプロセッサ

Meteor LakeではIntelもマルチチップレット構造に移行した。ただしIntelは「タイル構造」とよんでいる。他社でいうチップレットに当たるのはタイルと呼ばれるものになる。

タイルは、CPUが搭載されるCompute Tile、GPUが搭載されるGraphics Tile、各種コントローラやアクセラレータが搭載されるSOC Tile、インターフェイスが搭載されるI/O Tileで構成され、これらのタイルはIntelの3Dパッケージング技術(Foveros)を用いてBase Tileの上に積層されている。Base Tileは事実上のインターコネクトのような役割であり、演算機能や処理機能はない。

Compute Tileは「Intel 4」プロセスで製造される。Intel 4プロセスは従来「Intel 7nmプロセス」と呼ばれていたプロセスだったが、Intelの7nmが他社の4nmと同等の性能をもつとしていることからIntel 4に名称が変更された。Intel 7と同様の理由である。

残すGraphics TileはTSMC N5で製造され、SOC TileとI/O TileはTSMC N6で製造される。Intelは2021年以降、積極的に外部ファウンダリを利用することを宣言しており、それに沿った形となっている。なお、Base TileはIntel 22nmで製造されている。

それぞれのユニットも大きく変わっている。

CPUはAlder Lake、Raptor Lakeから引き続きハイブリッド構造であるが、大きな違いとしてPコアとEコアに加えてLP Eコアを搭載した3種混合という構成となっている。Pコアから見ていく。Pコアには「Redwood Cove」が採用されている。基本的にはRaptor Coveと同じものの、Intel 4に対応しているなどの変更がある。Eコアには「Crestmont」を採用した。LP Eコアも同様である。

LP Eコアは、Compute TileではなくSOC Tileに2コア搭載されている。SOC Tileは「Low Power Island」と呼ばれ、このLP EコアだけでなくDisplay Engineやメモリコントローラが搭載されており、SOC Tileだけでシステムが完結するようになっている。これは、SOC Tile自体が省電力で動作することを利用し、低負荷時やアイドル時にCompute TileやGraphics Tileの電源を切っておくことで電力を削減する事ができる。

GPUは、Intel Arcを小規模にカットしたものが搭載される。Xe-LPGと呼ばれるバリアントを搭載しており、XMXを搭載してないこと以外はIntel Arc Alchemistシリーズと同じである。Arcベースであることから、DirectX 12 Ultimateの機能をフルサポートしている。

さらに、Meteor LakeにはAIアクセラレータとしてNPUが搭載されている。IntelのNPUは「Movidius」VPNのアーキテクチャを改良して搭載されている。そのため世代は第3世代となっている。演算性能は11 TOPSで、パッケージで34 TOPSとなっている。

Lunar Lake

Lunar   Lake
ArchP:Lion   Cove
E:Skymont
系統Core系統
製造CPU:TSMC   N3B
PC:TSMC N6
Base:Intel 22nm
前世代Meteor   Lake
製品第2世代Core   Ultra次世代Nova   Lake
Panther Lake
電力帯低電力帯   特殊派生なし
ラインナップ
Lunar Lake超薄型LT向け第2世代Core   Ultra

Lunar Lakeは、2024年9月に発売されたMeteor Lakeの部分的な後継である。部分的というのはLunar Lakeが新しいセグメントと呼ばれているためである。最大電力はMTPで37W、PBPでは17Wなどかつファンレスむけに8W版が用意される。

Lunar LakeはIntelで初めてのCopilot+ PCに準拠するラインナップである。

  • 第2世代Core Ultraプロセッサ(Core Ultra Series 2)

タイルはCompute Tile、Platform Controller Tile、Filler Tileの3つがBase Tileの上にFoverosを用いて実装されている。この内、Filler Tileはスペースホルダーのようなもので機能は実装されていない。実質的にCompute TileとPlatform Controller Tileのみである。

タイルの機能と製造プロセスを見ていく。TSMC N3Bで製造されたCompute TileにはCPUの他、GPUやNPUなどが搭載されている。TSMC N6で製造されるPlatform Controller Tileにはインターフェイス周りの機能が搭載されているようだ。構成としては、以前のプロセッサとPCHが同じパッケージに乗っているような感じだ。Base Tileは引き続きインターコネクト用のダイでIntel 22nmで製造されている。

CPUは引き続きハイブリッド構造であるが、LP-Eコアはない。Pコアには「Lion Cove」、Eコアには「Skymont」を採用している。Lion Coveはより少ないクロックサイクルでアクセスすることができるL0キャッシュが追加されている他、L1キャッシュも増加したため、従来のL1キャッシュにアクセスする時間で240 KBのキャッシュにアクセスできるようになった

更に、これまでハイブリッド構造の内、Pコアのみ有効であった1コア2スレッドとなるHyper Threading Technologies(HTT)が無効化された。これは、HTTを有効にするための回路がどんなときでも電力を流し続けなければならないことが原因となっている。Lunar Lakeでは待機時の電力効率の高さをアピールしており、Apple SiliconやSnapdragon XのようなArmよりも高い電力効率を実現するために行ったようだ。

HTTはLunar LakeやArrow Lakeで無効化する方針であるものの、Xeonでは有効化する方針を示している。現状、Lion Coveを搭載することが明かされているXeonはないが、今後の情報には要注目だ。

Lunar Lakeは、超軽量モバイル向けなこともあり、最大CPUコア数はMeteor Lakeより大幅に少ない4P4Eの8コアであるためマルチ性能はMeteor Lakeには勝らないものの、5 GHzクロックの実現とCPUの改良によって高いシングル性能を実現した。

そして、NPUは第4世代のAI Boostを搭載している。NPU単体で48 TOPSの性能を提供する。

GPUはXe2アーキテクチャをベースとしている。これは、次期Intel Arcとなる「Battlemage」のGPUアーキテクチャである。大きな違いとして、Xe Matrix Enigneを搭載している点が挙げられる。これによって、GPUによるAI性能が非常に高くなっている。前述でNPUのAI性能をお話したが、GPUはなんと最大67 TOPSの性能を提供する。これは、XMXの性能が高いことが挙げられる。

そして、Lunar Lakeはメモリを同梱していることも特徴だ。16GBまたは32GBのLPDDR5x-8533のメモリを搭載している。

4P4Eという構成や2スタックのメモリ、CPU・GPU・NPUの統合などはApple Siliconと類似点が多いとも言えるラインナップになった。

Arrow Lake

Arrow   Lake
ArchP:Lion   Cove
E:Skymont
系統Core系統
製造CPU:TSMC   N3B
PC:TSMC N6
Base:Intel 22nm
前世代Raptor   Lake R
Meteor Lake
製品第2世代Core   Ultra次世代Nova   Lake
Panther Lake
電力帯35W/65W/125W
45W帯
派生なし
ラインナップ
Arrow Lake-SDT向け第2世代Core   Ultra

Arrow Lakeは、Meteor LakeとRaptor Lakeの後継であり、Lunar Lakeとともに第2世代Core Ultraを構成するラインナップである。まだ発売されていない。

  • 第2世代Core Ultraプロセッサ(Core Ultra Series 2)

Lunar Lakeは、薄型軽量のラップトップ向けの製品である一方で、Arrow Lakeはデスクトップとメインストリームからハイエンドのモバイルを担う。

CPUは、Pコアに「Lion Cove」、Eコアに「Skymont」を採用している。Lunar Lakeと同様に、HTTが無効化されており、1コア1スレッドとなっている。最大のコア構成は8P16Eの24コア24スレッド。

また、CPUがアーキテクチャ的にLunar Lakeの高効率が重視されているためか、Raptor Lakeと比較して大幅に電力効率が向上している。

Arrow Lakeは全般的にタイル構造を採用しているが、デスクトップ向けのタイルは、Meteor LakeからCPUを搭載するCompute Tileのみを更新したのみとなっており、Graphics Tile、SOC Tile、I/O Tileは共通である。よって、CPU以外のGPUとNPUの仕様はMeteor Lakeと共通している。

ただし、NPUはMeteor Lakeのそれよりもやや性能が高い13 TOPSとなっている。

デスクトップ向けArrow Lakeの製造プロセスは、Compute TileはTSMC N3Bとなっており、それ以外はMeteor Lakeと同じ(Graphics TileがTSMC N5P、SOCとI/O TileがTSMC N6、Base TileがIntel 22nm)。

なお、この世代から完全にCore iブランドが完全に消滅している。

モバイル向けArrow Lake

Arrow Lake-H
ArchP:Lion Cove
E:Skymont
系統Core系統
製造CPU:TSMC N3B前世代Meteor Lake
製品第2世代Core Ultra次世代Nova Lake
Panther Lake
電力帯45W帯派生なし
ラインナップ
Arrow Lake-HLT向け第2世代Core Ultra


Arrow Lake-U
ArchP:Lion Cove
E:Skymont
系統Core系統
製造CPU:Intel 3前世代Meteor Lake
製品第2世代Core Ultra次世代Nova Lake
Panther Lake
電力帯15W帯派生なし
ラインナップ
Arrow Lake-ULT向け第2世代Core Ultra

Arrow Lakeは、モバイル向けとデスクトップ向けで仕様が異なっている。

Arrow Lake-HXはArrow Lake-Sと同等の仕様となっているが、Arrow Lake-HとUは異なっている。

CPUはArrow Lakeで共通して、Pコアが「Lion Cove」、Eコアが「Skymont」となっているが、GPUの仕様と製造プロセスが若干異なる。

Arrow LakeではArrow Lake-Hでのみ、Xe世代でXMXが有効になっており、最大77 TOPSのAI性能を提供する。

また、Arrow Lake-UのみIntel 3で製造されている。

Panther Lake

Panther   Lake
Arch 系統Core系統
製造 前世代Lunar   Lake
Arrow Lake
製品第3世代Core   Ultra次世代 
電力帯 派生 
ラインナップ
   

Panther Lakeは、その名称のみが明らかになっているラインナップだ。Intelの文書には「Panther Lake performance hybrid architecture.」と書かれていることから、未来のCore Ultraラインナップとなる見込み。おそらく、Arrow Lake・Lunar Lakeの後継となる。

現時点で情報は少ないが、Diamond RapidsやClearwater Forestと同じ機能を有していることなどから、2025年にも製品が登場する可能性がある。

Intel 18Aをはじめて採用したコンシューマ向け製品になる可能性も高い。引き続き、タイル構造を採用するが、70%をIntelの製造部門で製造するとしている。

Nova Lake

Nova   Lake
Arch 系統Core系統
製造 前世代Lunar   Lake
Arrow Lake
製品第3世代Core   Ultra次世代 
電力帯 派生 
ラインナップ
   

Nova LakeはIntelから言及されている2025年に投入することが計画される次世代のCPUラインナップである。

おそらく、Panther LakeがArrow Lakeの、Nova LakeはLunar Lakeのそれぞれの後継になる可能性がある。

Intelは、メモリ同梱スタイルをLunar Lake限りとし、Nova LakeおよびPanther Lakeでは従来通りメモリを別で搭載するスタイルにするとしている。

製造については、大部分がIntelになるとしている。

サーバー・HEDT向け

次にサーバー向けのラインナップをまとめる。

また、Granite Rapids以降についてはPコア系統のXeonについてこの節で記述し、Forest系は次節で紹介する。

Skylake(Skylake-SP)

Skylake-SP
ArchSkylake系統Xeon系統
製造Intel   14nm前世代Broadwell
製品第1世代Xeon   SP次世代Cascade   Lake
Kaby Lake
電力帯高火力帯派生Skylake-X
ラインナップ
Skylake-SP第1世代Xeon SP
Skylake-XHEDT向けCore   X
Xeon W-2100
Xeon W-3100

Skylakeは、コンシューマ向けの節でも紹介したが、こちらではスケーラブルプロセッサとしてのSkylakeについて述べる。

  • 第1世代スケーラブルプロセッサ(Skylake-SP)
  • 第7世代Core Xプロセッサ(Skylake-X)
  • 第9世代Core Xプロセッサ(Skylake-X)

Skylakeはラインナップを横断して、MPXのサポートなどが加わっているが、Xeon向けにはもう少し踏み込んだ変化がある。

まずその代表的な点がAVX-512命令のサポートと、それに伴う512-bit FMAのサポートである。2000年代からSSEなどをはじめとしたSIMD拡張命令自体は存在していたが、2010年代になってAVXなどで更に拡張されている。そして、先行するXeon Phiでは、256-bitのSIMDを更に拡張し512-bitのSIMD命令として「AVX-512」が追加されたが、それがSkylakeに統合された形となる。

Cascade Lake

Cascade   Lake
ArchSkylake系統Xeon系統
製造Intel   14nm++前世代Skylake
製品第2世代Xeon   SP次世代Cooper   Lake
Ice Lake-SP
電力帯高火力帯派生 
ラインナップ
Cascade Lake-SP第2世代Xeon SP
Cascade Lake-X(W)第10世代Core   X
Xeon W-3200
Xeon W-2200
Cascade Lake-AP高火力Xeon

Cascade Lakeは第2世代スケーラブルプロセッサなどに採用されるサーバーやHEDT向けの製品である。

  • 第2世代スケーラブルプロセッサ(Cascade Lake-SP)
  • Advanced Performance Xeon(Cascade Lake-AP)
  • Xeon W-3200シリーズ(Cascade Lake-W)
  • Xeon W-2200シリーズ(Cascade Lake-W)
  • 第10世代Core Xプロセッサ(Cascade Lake-X)

Cascade Lakeは、SkylakeをベースとしているサーバーやHPC向けのプロセッサラインナップとなった。面白いのはCore X以上とハイエンド帯にしか展開されていないという点である。主にRyzen ThreadripperやEPYCを競合相手としており、Mac Proにも搭載されている。

ソケットあたりの最大コア数が28コアから56コアに増加した。しかし、28コアを超える32コア以上のSKUについては、Cascade Lake-APとしてHPC向けのバリアントとなっている。APはAdvanced Performanceを意味しており、AIなどの需要に答えた形となった。実質的にこのHPCを強調した製品は、Sapphire RapidsのXeon Maxに受け継がれることになる。

CPUのマイクロアーキテクチャ自体はSkylakeを維持する。しかし、AVX-512-VNNIの追加など、細やかな変化点は存在している。

Cooper Lake

Cooper   Lake
ArchSkylake系統Xeon系統
製造Intel   14nm++前世代Cascade Lake
製品第3世代Xeon   SP次世代Sapphire   Rapids
電力帯高火力帯派生 
ラインナップ
Cooper Lake-SP第3世代Xeon SP(4S以上)

Cooper LakeはCascade Lakeの後継となるプロセッサラインナップで、14nmで製造されるSkylake系統のアーキテクチャを採用した大規模サーバー向けのプロセッサである。

  • 第3世代スケーラブルプロセッサ(Cooper Lake-SP)

Cooper Lakeは4ソケット以上の大規模なシステムをターゲットとしており、供給も限定的であるとされている。主流となるスケーラブルプロセッサはIce Lake-SPであり、Ice Lake-SPとCooper Lakeで第3世代スケーラブルプロセッサのラインナップを構成する。こういった経緯により、Xeon GoldとXeon Platinumのみの展開となっている。

Ice LakeがSunny Coveと新しいCPUマイクロアーキテクチャを採用するのに対して、Cooper Lakeは引き続きSkylake系統のアーキテクチャを採用する。しかし、AVXの拡張が含まれており、CPU全体でBfloat16の演算に対応した。

前述の通り、主流はIce Lake-SPであるため、スケーラブルプロセッサをベースとすることが慣例となっているXeon WシリーズはIce Lake-SPがベースとなっている。

Ice Lake-SP

Ice   Lake-SP
ArchSunny   Cove系統Xeon系統
製造Intel   10nm前世代Cascade Lake
製品第3世代Xeon   SP
Xeon W-3300
次世代Sapphire   Rapids
電力帯高火力帯派生Ice   Lake-X
ラインナップ
Cooper Lake-SP第3世代Xeon SP(1S/2S)
Ice Lake-XXeon W-3300

Ice Lakeのスケーラブルプロセッサ向けの展開である。Xeon SPとしては初めての10nmを採用している。

コンシューマ向けIce Lakeの節で説明した通り、初代の10nmは4.1GHzがクロックの上限となっている。ただ、多コアの製品においてクロックはそれほど重要ではないので、この点は問題はないようだ。マイクロアーキテクチャがSkylakeからSunny Coveに変更されておりスループットが向上している。

コア数は28コアから40コアに増加している。ワークステーション向けにも展開されており、Cascade LakeベースのXeon W-3200が最大28コアであったが、Ice Lake-Wでは38コアとなっている。

Cooper Lakeも第3世代スケーラブルプロセッサとなるが、Ice Lakeは2ソケット以下の小規模システム向け。小規模といっても大体のラックが2ソケットなので、メインストリームはIce Lakeとなる。

Sapphire Rapids

Sapphire   Rapids
ArchGolden   Cove系統Xeon系統
製造Intel   7前世代Ice   Lake
Cooper Lake
製品第4世代Xeon   SP次世代Emerald   Rapids
Sapphire Rapids R
電力帯高火力帯派生Sapphire   Rapids Max
ラインナップ
Sapphire Rapids-SP第4世代Xeon SP
Sapphire Rapids-X(W)Xeon   W-3400
Xeon W-2400

Sapphire Rapidsは、Alder LakeのPコア「Golden Cove」を採用するスケーラブルプロセッサである。

製造はIntel 7プロセスであり、これはXeonで初めての採用となる。Core系統ではMeteor Lakeで採用される見込みであるタイル構造は先行してSapphire Rapidsが採用する。Sapphire Rapidsは15コアを搭載するコンピュートタイルを最大4基、計60コアの構成が可能になっている。

タイル間の接続はMeteor Lakeとは異なり、EMIBを介して行う。

なお、Alder Lakeと同世代であるものの、Intel Hybrid Technologyは採用されておらずGolden Coveのみで構成されている。そのためAVX-512を含むGolden Coveのすべての拡張命令セットを利用することができる。

Sapphire Rapids Refresh

Sapphire   Rapids Refresh
ArchGolden   Cove系統Xeon系統
製造Intel   7前世代
派生元
Sapphire   Rapids
製品Xeon   W-3500
Xeon W-2500
次世代最新世代
電力帯高火力帯派生 
ラインナップ
Sapphire Rapids-X(W) RefreshXeon   W-3500
Xeon W-2500

2024年8月にはSapphire Rapids Refreshを採用した「Xeon W-3500」シリーズと「Xeon W-2500」シリーズが発表された。

  • Xeon W-2500シリーズ
  • Xeon W-3500シリーズ

どの様な変更点があったかは不明だが、おそらくクロックの向上などが果たされている。おそらく、Emerald RapidsあるいはGranite Rapids派生のXeon Wシリーズが出てくるまでの時間稼ぎといった意味も持つと思われる。正直、なぜEmerald Rapids派生の製品ではなかったのかは不明である(可能性として、Raptor Lakeの破損問題が考えられる)。

Sapphire Rapids(Xeon Max)

Sapphire   Rapids Max
ArchGolden   Cove系統Xeon系統
製造Intel   7前世代
派生元
Sapphire   Rapids
製品Xeon   Max次世代Emerald   Rapids
電力帯高火力帯派生 
ラインナップ
Sapphire Rapids-MaxXeon Max

そして、Sapphire Rapidsの派生となるのが、このXeon Maxに採用されるSapphire Rapidsである。便宜上Sapphire Rapids-Maxと表現することにする。

Sapphire Rapids-Maxはサーバー向けではなくHPC向けと決められており、データセンターよりも高い計算能力を持つ。大きな特徴としては1TB/sの速度で通信することができる最大128GBのHBM2eメモリをCPUに同梱しているという点である。メモリ帯域がとても広いため、キャッシュヒットしなくてもメモリに処理データがあれば従来のプロセッサより処理を効率化することができる。

HBMメモリとDDR5メモリを搭載するが、ソフトウェアの制御によって両方を同時に使うことも可能であるが、おそらくHBMでの仕様が前提となっている。2024年のTOP500でも3位だった米国のスパコンAuroraがXeon Maxとセットとなる「Intel Data Center GPU Max」を採用している。

AMDは3D V-Cacheによってキャッシュを大型化するソリューションを活用しているが、Intelはメモリへのアクセス速度を高速化するというアプローチでありこの両者の関係をみるととても面白い。ちなみにNVIDIAやAppleはどちらかというとIntelと同じアプローチをしている。

また、2024年にはAMDが似たアプローチとして、Zen 4 CCDとCDNA 3 GCDを組み合わせたAPUとして「Instinct MI300A」を展開している。ただしこちらは、GPGPUとしての活用がメインであるようで、広義の競合相手ではあるものの若干セグメントが異なる気もする。

Emerald Rapids

Emerald   Rapids
ArchGolden   Cove系統Xeon系統
製造Intel   7前世代 
製品第5世代Xeon   SP次世代 
電力帯高火力帯派生Sapphire   Rapids Max
ラインナップ
Emerald Rapids-SP第5世代Xeon SP

Emerald Rapidsは、Sapphire Rpidsのマイナーチェンジであり、第5世代スケーラブルプロセッサで採用されている。

  • 第5世代スケーラブルプロセッサ

Emerald Rapidsでは、Sapphire Rapidsからのマイナーチェンジとは言いつつ、CPUアーキテクチャはRaptor Coveを採用している。つまり、アーキテクチャ的な変更点で言えばコンシューマ向けのAlder LakeからRaptor Lakeへの進化に近い。プラットフォームも互換性がある。

ただ、ダイの構成は大きく変わる。Sapphire Rapidsでは、最大60コアを4基のタイルで実現する「Extream Core Count」(XCC)と、最大32コアを1基のタイルで実現する「Medium Core Count」(MCC)の2種類で展開されていたが、Emerald RapidsではXCC2基のタイルで最大64コアになり、MCCは同じく1基のタイルで32コアを実現した。そして新たにEE LCC(Energy Efficient Low Core Count)が追加された。

Emerald Rapidsでは、Sapphire Rapids-MaxのようにHPC向けに展開されるHBMメモリを搭載したバリアントは用意されず、またワークステーション向けもSapphire Rapids-Refreshが担うことになっているので、サーバー向けという限定的な展開となった。

Granite Rapids

Granite   Rapids
ArchRedwood   Cove系統Xeon系統   P系
製造Intel   3前世代Emerald   Rapids
製品Xeon   6 P次世代Diamond   Rapids
電力帯高火力帯派生 
ラインナップ
Granite RapidsXeon 6 P

Granite Rapidsは、Emerald Rapidsの後継であり、比較的大きなアップデートといえる。

  • Xeon 6 6900Pシリーズ
  • Xeon 6 6700Pシリーズ
  • Xeon 6 6500Pシリーズ
  • Xeon 6 6300Pシリーズ

Granite Rapidsからは、Pコアで構成されたラインナップと、Eコアで構成されたラインナップが並行することになる。Xeon 6ラインナップは、その最初の世代で「Sierra Forest」と対をなす。

しかし、Granite RapidsはSierra Forestとプラットフォームの互換性があり、6900Pは6900Eと、6700P/6500P/6300Pは6700Eとプラットフォームの互換性がある。更にPCIeのレーン数やメモリチャネル数などのI/Oも共通している。

Granite Rapidsは、Meteor Lakeで採用された「Redwood Cove」を採用する。タイル構造にも面白みがあり、I/Oなどのインターフェイスは独立したタイルとなり、CPUタイルには、CPUとメモリコントローラのみが搭載される。これはAMDの戦略に近く、CPUタイルの増減によって規模のスケーリングが可能となる。

最大コア数は128コア256スレッドとなり、パッケージあたりでのコア数がEmerald Rapids比2倍に増加した。

CPUタイルはIntel 3で製造され、インターフェイスが乗るI/OタイルはIntel 7で製造される。

CPUアーキテクチャの改良点としては、主にAI向けの演算能力の向上が挙げられる。まず、Intel Advanced Matrix Extension(AMX)拡張命令アクセラレータが拡張されFP16に対応した。さらに浮動小数点演算にかかるクロックも削減されたため全体を通してAI演算のスループットが増している。

さらに、これは性能への影響は大きくないが、AVX-512の実質的な後継であるAVX10.1が実装された。

Granite Rapidsの拡大先として通信が挙げられており、ラックあたりの性能が2021年頃の製品(Ice Lakeなど)と比較し2.7倍になっているとアピールした。Intel Infrastructure Power Managerを活用して高い電力効率を実現するという。

Diamond Rapids

Diamond   Rapids
Arch 系統Xeon系統   P系
製造Intel   18A前世代Granite   Rapids
製品 次世代 
電力帯高火力帯派生 
ラインナップ
   

Diamond Rapidsは、Granite Rapidsの後継になると見られるラインナップである。現時点で名称のみ一部の公式資料から明らかになっている。

Diamond Rapidsでは、AVX10.2のサポートが行われている。AVX10.1ではAVX-512機能の移植のみにとどまったが、AVX10.2では実際に新機能の追加が行われる。AVX10.2でサポートされる新機能の例としては、FP8演算のサポートやVMPSADBW命令の512bitへの拡張などのメディア向けの命令である。

さらにAdvanced Performance Extension(APX)のサポートも行われる。これは、汎用レジスタ(GPR)の数を16から32に倍増させ、コンパイラが保持できる値を大きくしたことで、コードの変更なく再コンパイルするだけで性能が向上するという拡張だ。

それ以外にも、AMXの大幅な強化も行われている。

Diamond Rapidsについて現時点で詳細はわからないが、Clearwater ForestとともにIntel 18Aをはじめて採用する製品となる見通し。2025年に登場する予定だ。

高密度・データセンタ向け

次に、高密度向けのForest系のラインナップについてまとめる。

Sierra Forest

Sierra   Forest
ArchCrestmont系統Xeon系統   E
製造Intel   3前世代なし
製品Xeon   6 E次世代Clearwater   Forest
電力帯高火力帯派生 
ラインナップ
Sierra ForestXeon 6 E

そして、Eコア系のXeonで最初の製品となるのが、Sierra Forestだ。

  • Xeon 6 6900Eシリーズ
  • Xeon 6 6700Eシリーズ

Granite Rapidsが性能が必要なサーバー向けであるのに対して、Sierra Forestは物理コア数が求められるクラウドなどの環境に適している。このセグメントは近年急速に需要が大きくなっており、Arm系プロセッサがその需要を満たしている。これに対して、AMDはZen 4cというZen 4からキャッシュを削減したCPUコアを128コア搭載した「Bergamo」を投入するなどして対抗した。Intelも遅ればせながらSierra Forestで殴り込んだ。

このセグメントはとにかく、高い電力効率が求められる。TCO(総所有コスト)を抑えることが重要であるためだ。IntelはArmプロセッサを超えるTCOを実現しているとしている。

Sierra ForestはMeteor LakeのEコアである「Crestmont」を採用し、CPUの最大コア数は288コア288スレッドとなる。

基本的にタイルの構成はGranite Rapidsと同様でCompute TileにメモリコントローラとCPUを、I/Oタイルにインターフェイスを搭載している。何なら、I/OタイルはGranite Rapidsと共通している。Compute TileはIntel 3プロセスで製造され、I/OタイルはIntel 7で製造される。

Sierra Forestも通信インフラ向けのラインナップを展開するとした。こちらは主にvRANなど向けである。

Clearwater Forest

Clearwater   Forest
Arch 系統Xeon系統   E
製造Intel   18A前世代Sierra   Forest
製品 次世代 
電力帯高火力帯派生 
ラインナップ
   

Sierra Forestの後継となる見込みなのがClearwater Forestだ。これは現時点でまだ製品どころか技術的な情報すら登場しておらず、Intel 18Aで製造される製品であることだけがアナウンスされている。

名称的には、Eコアのアーキテクチャのみで構成されていると考えられる。

ただし、Intel 18Aプロセスでは、RibbonFETとPowerViaとう2つの新技術を用いた製造を行うとされており、Foveros Direct 3DやEMIB 3.5Dのような3Dパッケージング技術とインターコネクトを採用した、製造技術では大きなマイルストーンを迎える製品でもある。

Intel 18Aプロセスをはじめて採用する製品となり、2025年以降に投入される計画だ。

Atom系統(コンシューマ向け)

Apollo Lake

Apollo   Lake
ArchGoldmont系統Atom系統
製造Intel 14nm前世代Braswell
製品Pentium   J/N3000
Celeron J/N3000
Atom X E3900
次世代Gemini   Lake
Joule
電力帯超低電力帯派生 
ラインナップ
Pentium   J3000
Celeron J3000
デスクトップ向け
Pentium   N3000
Celeron N3000
モバイル向け
Atom   X E3900組み込み向け

Core系統とAtom系統は全く同じ流れで進むわけではない。Atomのほうがリリースの間隔が広い。そのため、Skylakeと同世代という言い方はあまりよろしくはないのだが、事実上同時期に登場したということから、Apollo Lake以降を今回の記事の対称にする。

Apollo LakeはGoldmontを採用するプロセッサラインアップであり、Gen 9 GPUを搭載することや、14nmを採用するなどSkylakeと共通点も多い。

  • Pentium J4200シリーズ
  • Celeron J3000シリーズ
  • Pentium N4200シリーズ
  • Celeron N3000シリーズ
  • Atom E3900シリーズ

展開されるプラットフォームはデスクトップとモバイル、そして組み込みプロセッサと自動車用プロセッサとなっている。

Gemini Lake

Gemini   Lake / Gemini Lake Refresh
ArchGoldmont Plus系統Atom系統
製造Intel 14nm前世代Apollo Lake
製品Pentium   J5000
Celeron J4000
次世代Lakefield
Jasper Lake
電力帯超低電力帯派生 
ラインナップ
Pentium   Silver J5000
Celeron J4000
デスクトップ向け
Pentium Silver J5000
Celeron J4000
モバイル向け

Gemini Lakeは、Apollo Lakeの後継となるプロセッサである。この項目ではそのGemini Lakeの後継であるGemini Lake Refreshも触れる。

  • Pentium J5000シリーズ
  • Celeron J4000シリーズ
  • Pentium N5000シリーズ
  • Celeron N4000シリーズ

Gemini Lakeは14nmで製造され、Kaby Lakeと同じ世代ということができる。アーキテクチャがGoldmont Plusとなっている。Goldmont Plusは、L2キャッシュが2MBから4MBに増加している他、命令デコードのパイプラインにも手が入っている。

展開はApollo Lakeよりやや限定的。というより、自動車向けのプロセッサは別のものに移ったのかラインナップには含まれていない。また、サーバー向けもない。

Lakefield

Lakefield
ArchP:Sunny   Cove
E:Tremont
系統Atom系統
製造Intel 10nm前世代Gemini   Lake R
製品Core   L10次世代なし
電力帯超低電力帯派生 
ラインナップ
Lakefieldモバイル向け

個人的にAtom系統のプロセッサの中でもかなり異色の存在となっていると感じているのがこのLakefieldである。Lakefieldの前世代となるのはおそらくGemini Lake Refreshであるが、一概にそうであるとは言い難い。理由は、そもそもAtomブランドであるPentium J/NやCeleron J/Nを名乗っていないためだ。

  • Core L10シリーズ

ラインナップを見ていただければわかるだろうか。このプロセッサは「Core i5-L13G4」と「Core i7-L16G7」の2つのSKUが存在している。そう。Atom系統と呼ばれているのにもかかわらずCoreブランドを名乗っているのだ。

じゃあIntelが嘘をついているのかと言われればそうではない。理由はアーキテクチャ的に見ればCoreも搭載しているからである。なんとなくこれでおわかりいただけたかと思うが、LakefieldもAlder Lake同様Intel Hybrid Technologyを採用したヘテロジニアスマルチコア構成である。

Alder LakeはPコアにGolden Cove、EコアにGracemontを採用していたが、LakefieldはAlder Lakeよりも登場が1年以上早く、それに伴い世代も前の物になっており、PコアにIce LakeのSunny Cove、EコアにTremontを採用し、コアの比率は1:4である。そのため、Lakefieldは世にも奇妙な5コアCPUとなっている。

また、Intelの3Dパッケージング技術であるFoverosを採用する製品であり、GPU・IO・Pコア・Eコア・キャッシュを縦に実装することで省スペースを実現している。

Jasper Lake

Jasper   Lake
ArchTremont系統Atom系統
製造Intel 14nm前世代Gemini   Lake
Gemini Lake R
製品Pentium   N6000
Celeron N5000
次世代Alder   Lake-N
電力帯超低電力帯派生 
ラインナップ
Pentium   Silver N6000
Celeron N5000
モバイル向け

Jasper Lakeは、LakefieldのEコアである「Tremont」のみで構成されたAtom系統である。10nmで製造されているほか、GPUがIce Lakeと同様にGen 11に更新されている。

Alder Lake-N

Alder   Lake N
ArchGracemont系統Atom系統
製造Intel 7前世代Jasper   Lake
Lakefield
製品Intel   Nシリーズ
Core i3-N
派生元Alder   Lake
電力帯超低電力帯次世代現行
ラインナップ
Alder   Lake NIntel   Processor N

Alder Lake-Nは、Alder Lakeに採用されたEコア「Gracemont」のみで構成されたCPUである。基本的にAtom系統であるが、この世代から「Pentium」と「Celeron」のブランドが廃止されており、Intel Processorとして展開されている。

  • Intel Processor Nシリーズ

TDPは6Wと小型PCやファンレスPC向けであるが、性能はSkylake程度となっており、非常に取り回しのいいプロセッサとなった。例えば、サーバ管理用のツール、キオスク型のシステム、シンクライアントなどでの採用が考えられる。また、システムの価格が3万円程度で手に入ることから、安価に常駐システムを作ることができるという点でも注目されている。

Windows 11が動作するというのも大きな利点である。

Twin Lake

Twin   Lake
ArchGracemont系統Atom系統
製造Intel 7前世代Jasper   Lake
Lakefield
製品Intel   Nシリーズ
Core i3-N
Core 3 N
派生元Alder   Lake
電力帯超低電力帯次世代現行
ラインナップ
Twin   LakeIntel   Processor N

Twin Lakeは、Alder Lake-Nから100 MHz~200 MHzクロックを向上させたリフレッシュモデルとなっている。

  • Intel Processor Nシリーズ

引き続き、Alder Lake-Nの特徴を引き継いでいる。

Atom系統(組み込み向け)

Snow Ridge

Snow   Ridge
ArchTremont系統Atom系統
製造Intel 14nm前世代なし
製品Atom   P5000次世代現行
電力帯超低電力帯派生 
ラインナップ
Atom   P5000通信基地局向け

Snow Ridgeは、主に基地局向けのプロセッサとしてリリースされた。日本でも確か楽天がこのプロセッサを導入していた気がする。

  • Atom P5900シリーズ

Snow Ridgeは、5Gインフラ向けのプロセッサで、Elkhart Lake同様10nmで製造されるプロセッサである。アーキテクチャはTremontである。

Elkhart Lake

Elkhart   Lake
ArchTremont系統Atom系統
製造Intel 14nm前世代Denverton
製品Pentium   J/N6000
Celeron J/N6000
次世代現行
電力帯超低電力帯派生 
ラインナップ
Pentium   J6000
Celeron J6000
組み込み向け(DT)
Pentium   N6000
Celeron N6000
組み込み向け(LT)

Elkhart Lakeは、Denvertonの後継であるCPUである。

  • Atom x6000シリーズ
  • Pentium J6000シリーズ
  • Celeron J6000シリーズ
  • Pentium N6000シリーズ
  • Celeron J6000シリーズ

アーキテクチャには10nmで製造されるTremontを採用する。Atomグレードのサーバー向けプロセッサとしては本稿執筆時点で最新のプロセッサである。というか、Tremont自体がGracemontを除いた最新のアーキテクチャであり、後述するAlder Lake-Nの存在以外でAtom系統かつTremont以降の製品ラインナップが確認されていない。

Elkhart Lakeは組み込み向けの製品ラインナップとなっている。Denvertonの後継と話したが、実質的にその部分を担うのはSnow Ridgeかもしれない(ただ、Snow Ridgeも厳密にはサーバー向けではない)。

Parker Ridge

Parker   Ridge
ArchTremont系統Atom系統
製造Intel 14nm前世代Denverton
製品Atom   C5000次世代現行
電力帯超低電力帯派生 
ラインナップ
Atom   C5000サーバー向け

Parker RidgeはDenvertonの後継となる組み込み・サーバ向けの製品群。Tremontを採用する。

組み込み向けや常時稼働するシステム向けだということはわかるのだが、いまいち使用用途が不明。Denvertonと一定の互換性があることから、エッジネットワーク向けであることが想定される。

Amston Lake

Amston   Lake
ArchGolden Cove系統Atom系統
製造Intel 7前世代Elkhart   Lake
製品Atom   x7000派生元 
電力帯超低電力帯次世代現行
ラインナップ
Alder   Lake NIntel   Processor N

Amston Lakeは、Elkhart Lakeの後継となるGolden Coveの組み込み向けラインナップである。Golden Coveの採用によりAVXなどをサポートした。推論などの性能が飛躍的に向上し、コア数もに倍となった上、更に性能も大幅に向上したことから組み込みのエッジコンピューティングに最適。Gen 12(初代Xe)のGPUも選択できる。

Grand Ridge

Grand   Ridge
Arch 系統Atom系統
製造 前世代 
製品 派生元 
電力帯 次世代 
ラインナップ
   

Grand Ridgeは現時点で名称のみ明らかになっているアーキテクチャだ。Intelの公式資料における名称自体は、2023年12月の文書から明らかになっている。

Intelは一切Grand Ridgeについて言及していないが、名称的にもEコアのみで構成された製品であることが予想される。可能性としては、Snow Ridgeと同様に基地局などの特定の用途向けになる可能性がある。

CPUアーキテクチャも不明だが、Sierra Forestと同等の機能を有していることから、Crestmontを採用している可能性が高い。

2023年末以降からオープンソースソフトウェアへのサポートが始まっていることから、早ければ2025年にも製品が登場する可能性がある。

まとめ

とこんな感じでざっとIntelのアーキテクチャを解説してみた。特に、2016年以降はIntel 14nmから10nmへの移行の遅延によってラインナップが複雑になり、隣通しの製品型番であっても全く違う特性を持つなんてことも少なくはなかった。それをこうしてみまとめて見ると、また違った面白さがあってよかった。

次はAMDで同じことをするとおもう。