今年もSupercomputing Conferenceにて、スーパーコンピュータの性能指標「TOP500」「Green500」「Graph500」が発表されました。
TOP500
世界のスーパーコンピュータのランキングであるTOP500を見ていきます。
順位 | スパコン名 | 国名 | 実行性能 (PFLOPS) |
理論性能 (PFLOPS) |
ベンダー | 所有者 | CPU | コア数 | GPU | 前回順位 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | El Capitan | 米国 | 1,742.00 | 2,746.38 | HPE | 米国エネルギー省 国家核安全保安局 ローレンス・リバモア国立研究所 |
第4世代EPYC | 11,039,616 | AMD MI300A | 46(↑45)※ |
2 | Frontier | 米国 | 1,353.00 | 2,055.72 | HPE | 米国エネルギー省 オークリッジ国立研究所 |
第3世代EPYC | 9,066,176 | AMD MI250X | 1(↓1) |
3 | Aurora | 米国 | 1,012.00 | 1,980.01 | HPE | 米国エネルギー省 アルゴンヌ国立研究所 |
Xeon Max (Sapphire Rapids-Max) |
9,264,128 | Intel DC GPU Max | 2(↓1) |
4 | Eagle | 米国 | 561.20 | 846.84 | Microsoft | Microsoft Azure | 第4世代Xeon SP Platinum 8480C |
2,073,600 | NVIDIA H100 | 3(↓1) |
5 | HPC6 | イタリア | 477.90 | 606.97 | HPE | Eni | 第3世代EPYC | 3,143,620 | AMD MI250X | 初登場 |
6 | 富岳 | 日本 | 442.01 | 537.21 | 富士通 | 理化学研究所 | A64FX | 7,630,848 | 4(↓2) | |
7 | Alps | スイス | 434.90 | 574.21 | HPE | スイス国立スーパーコンピュータセンター | NVIDIA Grace | 2,121,600 | NVIDIA GH200 | 6(↓1) |
8 | LUMI | フィンランド | 379.70 | 531.51 | HPE | EuroHPC Center for Science |
第3世代EPYC | 2,752,704 | AMD MI250X | 5(↓3) |
9 | Leonrdo | イタリア | 241.20 | 306.31 | EVIDEN | EuroHPC CINECA |
第3世代Xeon SP Platinum 8358 |
1,161,216 | NVIDIA A100 | 7(↓2) |
10 | Tuolumne | 米国 | 208.10 | 288.88 | HPE | 米国エネルギー省 国家核安全保安局 ローレンス・リバモア国立研究所 |
第4世代EPYC | 1,161,216 | AMD MI300A | 48(↑38)※ |
※前回は構築途中
米国エネルギー省とローレンス・リバモア国立研究所が運営するEl Capitanが稼働し、首位となりました。El CapitanはZen 4ベースの第4世代EPYCとAMD Instinct MI300Aを採用したHPE製のノードを採用しています。
また、イタリアのEniというガス会社が保有しているHPCが初登場5位にランクイン。これは普通のSapphire Rapidsを採用したシステムですね。
これら2つのシステムが新たに上位に登場したことにより富岳は2ランクダウンの世界第6位のシステムとなりました。ただ、GPU等非搭載のシステムでは未だ首位、かつx86以外のプロセッサ採用システムとしても首位です。というかそもそも富岳が異色すぎて。
今回のランキングではAMD製CPU・GPUの多さが目立ち、CPUのメーカーだけを数えると、Intelが2・AMDが6・NVIDIAと富士通がそれぞれ1となりました。Power系のCPUが10位以内からいなくなりました。
もう少しGrace Hopper Superchipによるシステムが出てくるかと思いましたが、まだのようです。上位10位でもスイスの「Alps」がHPEのGH200システムを採用するのみです。TOP500をすべて見てもGraceは11システムにとどまりました。
では、TOP500でのCPU(メインプロセッサ)のシェアを見ます。
台数 | |
---|---|
AMD Zen-2 (Rome) | 62 |
AMD Zen-3 (Milan) | 70 |
AMD Zen-4 (Genoa) | 30 |
Fujitsu ARM | 9 |
Intel Broadwell | 17 |
Intel Cascade lake | 111 |
Intel Emerald Rapids | 2 |
Intel Haswell | 9 |
Intel Ice Lake | 36 |
Intel IvyBridge | 6 |
Intel Sapphire Rapids | 64 |
Intel Skylake | 58 |
Intel SandyBridge | 1 |
Intel Xeon Phi | 5 |
NEC Vector Engine | 5 |
NVIDIA Grace CPU | 9 |
Power | 4 |
ShenWei | 1 |
X86_64 | 1 |
やはり、こう見るとTOP500では、Xeonがかなり優勢、AMDが次点となります。日独の一部システムがNECのVector Engineを採用、日台とポルトガルの一部システムが富岳にも採用されるA64FXを採用し、残りはPowerPC・中国の独自設計となっています。
そして、GPGPUやPCIeアクセラレータなどを含むアクセラレータについて見てみます。
AMD Instinct MI210 | 1 |
AMD Instinct MI250X | 12 |
AMD Instinct MI 300A | 5 |
AMD Instinct MI 300X | 1 |
Intel Data Center GPU Max | 2 |
Intel Data Center GPU Max 1550 | 2 |
Intel Xeon Phi 5110P | 1 |
Intel Xeon Phi 7120P | 1 |
NVIDIA A100 | 71 |
NVIDIA A40 | 1 |
NVIDIA GH200 Superchip | 8 |
NVIDIA H100 | 58 |
NVIDIA H200 | 2 |
NVIDIA Tesla K20x | 1 |
NVIDIA Tesla K40 | 3 |
NVIDIA Tesla K40m | 1 |
NVIDIA Tesla K80 | 1 |
NVIDIA Tesla P100 | 5 |
NVIDIA Tesla V100 | 30 |
NVIDIA Volta GV100 | 3 |
Deep Computing Processor | 1 |
Matrix-2000 | 1 |
非搭載 | 290 |
こちらは、そもそもTOP500の半数以上が搭載していないになるものの、搭載システムについてはNVIDIAが圧倒的に優勢。Intelが6システム、AMDでも19システムほどにとどまっています。ただ、AMDは上位陣に食い込んでるシステムが多く、19システムのうち5システムが上位10位のような搭載されている大規模なシステムで採用されています。
アクセラレータの搭載システムは193から210に増えているので、一応アクセラレータの必要性はあるみたいです。本当に富岳な特殊なだけです。
個人的な換装としてはやはり、Grace Hopper Superchipが思ったより少ない気がしました。価格が高すぎて、超大規模にしないと導入できないか、そもそもTOP500に食い込むほど大規模なシステムに投入できるほど供給量が安定していないかのどちらかですかね?
なお、日本勢はTOP500に34システム、日本企業(富士通・NEC)のノードを採用するシステムは29システム、日本企業(富士通・NEC)のプロセッサを採用するシステムは14システムでした。