錦です。
Armは同社の新CPUコアとなる「Cortex-X3」「Cortex-A715」とGPUシリーズ「Immortails-G715」「Mali G-715」「Mali-G615」の各製品を発表しました。
Cortex-X3
Cortex-X3は、Cortex-X2の後継となるハイエンド向けのCPUコアです。基本的にハイエンドなスマートフォンやパソコンをターゲットにしているのが特徴です。Armv9アーキテクチャをベースにしており、後述するA715と比較してキャッシュなどの仕様が高く高性能であるのがX3です。
X3では性能がX2から25%向上しているとのこと。
Cortex-Xは、SnapdragonやDimensity、Exynosにプライマリコアとして搭載されており、今年もX3を採用してこれらの製品が登場すると見られます。
X3はPCを本格的にターゲットにしており、CPUコアのバックボーン「DSU-110」では最大12コアまで搭載できるようになっていて、X3のみあるいはX3とA715やA510を組み合わせたコアも作ることができます。Snapdragon 8cxが昨年メジャーアップデートがありましたが未だにIntel CPUやAMD APUが牛耳る市場に割って入ることができていません。X3ベースの製品で大きな変貌を遂げ、今までより存在感を強めることができるでしょうか(個人的にMicrosoft SQが超進化すればワンチャンあるんじゃないかと思っている)。
まあArm移行についてはAppleとはまた違った事情がWindowsにはありますから、せめてちゃんと選べる選択肢の一つにはなるまで成熟するのを待つ必要がありそうです。
ちなみにX3の競合は結構あやふやですが、Arm系列でいうとApple A16やM3の性能コア*1が挙げられ、競合他社でいうと、Raptor CoveやZen 4となるでしょう。
Cortex−A715
Cortex-A715はパフォーマンスコアに採用されるようなCPUコアです。X3同様Armv9を採用しており、X3とアーキテクチャレベルでは共通となっています。
前世代Cortex−A710から性能は5%の向上にとどまるものの、効率性が20%引き上げられているとのこと。5%の性能向上にとどまると書いたものの、ハイエンドコアとして初めて登場したCortex−X1と同等の性能が発揮できるとしており、侮ることはできません。
今回、効率コアに採用されるCortex−A510の発表がなかったことから引き続きA510を効率コアにおいたSoCの登場が見込まれており、Snapdragon 8 Gen 2はX3が1コア、A715が3コア、A510が4コアという構成になりそうです。
Immortails-G715
ここからはGPU。まずはじめにご紹介するのは「Immortails-G715」。ArmのGPUブランドといえば「Mali」ですが、今回は新ブランドとしてハイエンド向けのGPUが登場します。
今回特筆すべきなのがハイエンド・フラグシップであるということ。PC向けの展開は予定にないとのことですが、Android向けには展開されます。例年であればMediaTekやSmasung、Huaweiが採用しています。
新機能としてレイトレーシングのためのハードウェアアクセラレータが搭載されている点です。現在、Android向けSoCでレイトレーシングをハードウェアでサポートしているのはSamsungのExynos 2200のみなので、これである程度はAndroidでもレイトレが広まればいいんですが(こちらもシェア1位のQualcommのAdreno GPUの動向次第感が否めませんが)。レイトレーシングはVulkanに対応します。
下位モデルにはMaliが続きますがMaliとの差は機能とコア数で、Immortailsは10コア以上の大規模GPUとなる見込みです。
競合となるのはAdrenoとApple GPU、RDNA 2でしょうか。
後述するMali-G715/G615もImmortailsもともに共通のアーキテクチャを採用します。Fused Multiply-Add(FMA)演算器の個数が2倍となり、行列演算性能が向上。新命令Matrix Multiply命令などと合わせて機械学習の演算性能が2倍になるそうです。
また、Unityとの協業で最適化が施されることになりました。これによりImmortailsとMali GPUでUnityエンジンを用いたアプリケーションの性能が向上するとのこと。
Mali-G715/615
そして、ミドル〜エントリにはMali-G715とG615が続きます。
G715がミドル向けで7コア〜9コア、G615がエントリ向けで6コア以下となります。
あとは前述のアーキテクチャの新機能とが追加されます。