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Apple、「Apple M3」シリーズSoCを正式発表 〜 「M3」「M3 Pro」「M3 Max」を同時発表

Appleは、先程「Apple M3」シリーズSoCを正式に発表しました。

M3シリーズ

Apple M3シリーズは最新のApple Siliconラインナップです。

現時点で判明している性能を列挙します。

M3 M3 Pro M3 Max
トランジスタ 250億 370億 920億
CPUコア 8 12 16
高性能コア 4 6 12
高効率コア 4 6 4
GPUコア 10 18 40
メモリ 24GB 36GB 128GB
外部ディスプレイ 最大2台
内蔵+1台
6K 60Hz
最大3台
内蔵+2台
1x 8K60Hz
1x 4K240Hz
最大5台
内蔵+4台
1x 8K60Hz
1x 4K240Hz
3x 6K60Hz
メモリ帯域 100GB/s 150GB/s 300GB/s
400GB/s

今回の特徴はかなり多いです。

まず、PC向けプロセッサとして初めて3nm EUVプロセスを採用しました。AppleがEUVプロセスに言及するのは珍しいとか勝手に思ってましたが、前にも似たような文句を聞いたことがあったので初めてではないでしょう。おそらくTSMC製。現時点でTSMC 3nm EUVプロセスを占有しているAppleは競合他社に比べると大きなアドバンテージがあると言えます。

それぞれの機構について見ていきます。

CPU

CPUについてはアーキテクチャの言及がなかったことから、おそらく小振りのアップデートとなりました。性能が伸びてるという話でしたがおそらく、3nmへのプロセス更新が大きいでしょう。

今回もbig.LITTLEを採用しており、bigコア=高性能コアの性能は、M2と比較して15%向上、M1と比較して30%の性能向上となります。問題が、Apple M3がSnapdragon X Eliteに計算上CPU性能として劣るということ。この点は後述で詳しく説明します。

一方効率コアはM2と比較して30%、M1と比較して50%の性能向上となります。

例によってクロック等はまだわかっていませんが、A17 Proが3.8GHzであるため、3.8GHz~4.0GHzを上限とすることになるでしょう。

GPU

今回最も大きなアップデートとなるのはGPUです。

M3シリーズのGPUは新たに「Dynamics Cashing」という機能を備えています。この機能は、ハードウェアのローカルメモリをリアルタイムで動的に割り当てるというもの。

出典:Apple

従来のGPUメモリの割当とは、コンパイル時にメモリの量を決定する手法でした。これは、プログラム実行時に一定のGPUメモリを確保しておくというものです。一方で、Dynamic Cashingは、GPUメモリの量を実行しながらダイナミックに確保します。

上記図中、左が従来のGPUメモリ確保でしたが、これでは確保したぶんすべてのメモリを使うことがなくても、ソフトウェアがメモリを確保したままになるので、無駄にリソースを消費します。一方で、Dynamic Cashingを利用した図中右の図を見ていだければ分かる通り、ダイナミックにメモリを割り当てることで、リソースを必要な分だけ確保し、不必要になれば開放するという事ができます。これによってメモリリソースの有効活用ができマルチタスクに効率的です。

特に、Apple Siliconはメインメモリがビデオメモリを兼ねるため、このようなメモリ割り当てというのはゲーム・動画編集等で重要になります。

それ以外にもゲーム機能の強化もアピールしています。A17 Proでサポートされたメッシュシェーディングとレイトレーシングのハードウェアアクセラレートに対応します。Macで初めてリアルタイムのレイトレーシングのサポートとなります(Radeon Pro 6000シリーズ採用マシンあったのにサポートしなかったのはなぜ・・・)。

これらの機能はMetal 3ですでにソフトウェアとして対応しており、Metal 3由来のゲーム、例えばバイオハザードビレッジなどはデフォルトでこの機能が有効になることが考えられます。

効率向上もアピールしており、M1と同じ性能を半分の消費電力で実現可能としています。

Neural Engine

Neural Engineは、シリーズ揃って16コアで変わりません。M2より15%、M1より60%高速であるとしています。

エンコーダ等

Media Engineも更新され、H.264、HEVC、ProRes、ProRes RAWコーデックのデコード・エンコードに対応する上、AV1デコードにも対応します。これによってYouTubeNetflixなどの電力効率の高い再生を可能にし、バッテリー駆動時間が向上します。

一つ残念だなと思うのはAV1エンコーダは搭載されなかった点ですかね。

M3

ではそれぞれのチップの詳細を見ていきます。

M3 M2
プロセス 3nm 5nm
トランジスタ 250億 200億
CPUコア 8 8
高性能コア 4 4
高効率コア 4 4
GPUコア 10 10
メモリ 24GB 24GB
外部ディスプレイ 最大2台
内蔵+1台
6K 60Hz
最大2台
内蔵+1台
6K 60Hz
メモリ帯域 100GB/s 100GB/s

M3は基本的にM2からアーキテクチャのみをアップデートした形となります。M2から構成自体は変わりません。

トランジスタ数は50億増加しており、規模自体は大きくなっています。増加分のトランジスタの大半はGPUに割かれているのでしょう。

CPU性能(おそらくマルチ)はM1と比較して35%、M2と比較して20%向上しているということで、順当な進化といえます。

GPUはM1から65%、M2から20%高速であるとしています。

メモリは最大24GBで変わらず。展開も8GB/16GB/24GBとなります。メモリ帯域も変わっていないことから、LPDDR5−6400の128bitインターフェイスになっていることでしょう。

ラインナップはGPUが8コアのモデルと10コアのモデルの2種類。前者は現時点でiMacのみの採用となります。

M3 Pro

続いてM3 Pro。残念ながら、M3 ProについてはM2 Proから劣っている点が目立ちます。

M3 Pro M2 Pro
プロセス 3nm 5nm
トランジスタ 370億 400億
CPUコア 12 12
高性能コア 6 8
高効率コア 6 4
GPUコア 18 19
メモリ 36GB 32GB
外部ディスプレイ 最大3台
内蔵+2台
1x 8K60Hz
1x 4K240Hz
最大3台
内蔵+2台
1x 8K60Hz
1x 4K240Hz
メモリ帯域 150GB/s 200GB/s

まず、トランジスタ数を見ていただければ分かる通り、M2 Proから減少しています。これはM3 Proの規模が小さくなったことを意味しています。理由は不明ですが、ProグレードのMチップの定義をやや下げたという方針転換が考えられます。

CPUコアの構成も縮小されており、物理コアとしては12コアでかわりありませんが、性能コアが8コアから6コアに減少し、その分効率コアが増加しているという状態になりました。AppleもM3 ProとM2 Proの比較としてシングル性能の向上のみをアピール、わかりやすいのはマルチの性能で、他のラインナップはM1に加えてM2からの向上もアピールしているのに対して、M3 Proに関してはM1 Proから20%性能が向上したということのみをアピールしています。

GPUコア数も1コア減少となりました。GPU性能についてはアーキテクチャの改良でかろうじてM2 Proを10%上回ったようです。M1 Proと比較て40%高速。

メモリについては最大容量は増加したものの、帯域が若干低下。とくに200GB/sだった帯域が150GB/sになったというのは、LPDDR5-6400なのはそのままで、メモリインターフェイスが256bitから192bitになったということを意味するのでしょう。

メモリラインナップは18GB/36GB。インターフェイスが変わった影響かな、18の倍数は珍しい気がします。

以下、コア構成のラインナップを示します。

性能コア 効率コア GPUコア
5 6 14
6 6 14
6 6 18

正直、クラスが変わったとしてM3 MaxとM3 Proで乖離があるので、今回のアップデートには謎が残る結果となりました。

M3 Max

最後にM3 Maxです。

M3 Max M2 Max
プロセス 3nm 5nm
トランジスタ 920億 670億
CPUコア 16 12
高性能コア 12 8
高効率コア 4 4
GPUコア 40 19
メモリ 128GB 32GB
外部ディスプレイ 最大5台
内蔵+4台
1x 8K60Hz
1x 4K240Hz
3x 6K60Hz
最大3台
内蔵+2台
1x 8K60Hz
1x 4K240Hz
メモリ帯域 300GB/s
400GB/s
400GB/s

M3 Maxは大きなアップデートとなりますね。

まず、CPUが初めてProモデルと差別化されました。特に、高性能コアを12コア搭載したのは大きいでしょう。12Pモデルとしては対抗馬にCore i7が見えてきますし、モバイル向けでは、Ryzenくらいしか思いつきません。

CPUの性能はM1 Maxと比較して80%、M2 Maxと比較しても50%と大きなアップデートとなりました。

GPUコア数は1コア増えた40コア。M2 Maxから20%、M1 Maxから50%の性能向上となりました。M3の結果と合わせて、GPUアーキテクチャとしての性能向上率は20%となるみたいです。若干小さめ?

メモリはCPUが14コア(10P4E)のものを選択すると300GB/s、16コア(12P4E)のものを選択すると400GB/sとなります。14コアモデルはM2 Maxからメモリ帯域が低下しています。おそらく、300GB/sメモリは、LPDDR5−6400の384bitインターフェイスのメモリなのでしょう。

ラインナップは、以下の通り。

性能コア 効率コア GPUコア メモリ
10 4 30 300GB/s
12 4 40 400GB/s

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