最近、スマホやタブレットに搭載されるプロセッサについて話題に上がることが多い。その中でARMというのが登場する。ARMについての軽い説明は、1月にメルトダウン・スペクターの解説記事で紹介しているのでぜひ見てほしい。
プロセッサは、アーキテクチャという「設計図(厳密には違う)」に基づきできている。基本的にこのアーキテクチャを開発して、そこから製品が広がる。
ARMはそのアーキテクチャのひとつである。もともとは、組み込みシステムで多く利用されていた。パソコンはx86/x64というアーキテクチャを採用している。
ARMもx86も登場は1990年以前でかなり古いのだが、昔から割としっかり区別されていた。特に、Windowsがx86向けに設計されていたことが強みである。
大手半導体メーカーのIntelはx86の第一人者で、Intelは独占的な利益を得ることができた。Intelは開発・製造を一貫して行う。
ARMはそれとは異なる。ARMは設計図を各ベンダーに提供し、ライセンス料を得ることで利益を得ている。これは、x86のように少数の企業が独占で製造するのとは違い、各ベンダーが各製品に最適なプロセッサを作ることが出来るのが特徴である。
特に最近は、スマホ・タブレットはもちろん、電子レンジなどにもAIが搭載され始め、それなりの性能を持つプロセッサが必要になってきた。ARMはスマホや組み込みシステムに多く採用されており、スマホ・スマート家電の普及や発展は、ARMが大きく関わっている。
実は、何気にほとんどの人がARMの恩恵を受けている。それは先程からチラホラでている「スマホ」である。
スマホで今主流のプロセッサはQualcommのSnapdragonとAppleのAプロセッサである。他にもNVIDIAのTegraや、HuaweiのKirinなどが存在する。スマホにx86が不向きなのは既に証明済みで、いっときIntelがスマホ向けにプロセッサを投入していたが、気づけば無くなっていた。これは、バッテリーの消費が原因で、ARMは省電にしやすいのに対し、ハイパフォーマンスなx86は大きいバッテリーを積めないスマホには圧倒的に不向きなのである。
ARMの強みは、各ベンダーがカスタムできるところもある。AppleやQualcommなど、独自の特許を持つ企業も多い。
特にAppleは、iOSやWatchOS、tvOSにだけ特化するプロセッサを作ればいいので性能が著しく高い。AndroidもWindowsとは違い、カスタムしやすいので、その端末にだけ特化したARMと組み合わせて性能を高めることが出来る。
微細化に関してもARMの方が速い。
7nmプロセスルールは、ARMが既に実現している。iPhoneXS/XS Max/XRに搭載されるA12 Bionicや、最近発表されたSnapdragon855/8cxなども7nmプロセスルールである。しかし、x86は14nmで止まっているのが現状。最近になってAMDが7nmへ、Intelが10nmへ2019年に移行することを発表したが、ARMよりも若干遅れて登場している。
微細化は、モバイル端末にとっても良いことで小型化する上で書かせない工程となる。
x86とARMは、パソコンとモバイルというわけ方が出来ていると話したが最近になってそれは崩れかけている。先程も記述したようにARMの成長が急速に速くなった。
WindowsはWindowsRTというARM向けのWindowsを発表した。これは、批判だらけだったがその後に登場にした「Windows10 ARM」がその成長の速さを物語っている。
WindowsRTでは性能などの問題も含めWindowsの多くの機能がロックされていたが、Windows10 ARMは、Windows10の機能をフルで搭載する。ARMがx86に追いついた言っても過言ではない。
Qualcommが発表した、らSnapdragon850/8cxは世界に衝撃を与えた。
過去に「Windows向け!」どころか「パソコン向け!」のARMプロセッサは存在しない(存在したとしても古いか低性能)。しかし、Qualcommはそれを出してきた。しかも名前こそ出ていないがIntelプロセッサと比べて同等であるかそれ以上のスペックであると発表した。
同等レベルなら別にいいでしょ。とはならないのがARMである。ARMは、省電力のため熱をx86を発さないし、バッテリーをくわない。これは、近年の「ラップトップ薄型化」にはベストマッチな製品となっている。
ただし問題がある。それはその成長速度である。
x86ように作られたアプリをそのままARMで動作させることは出来ない。エミュレータで動かすことも出来るがフルの性能は出ない。
FirefoxやChromeも最近ようやく開発が発表され、現在もEdgeかIEしか使えない。
特に古いソフトを使う時はARMで使えないこともあるため注意である。
しかし、ARMの成長速度は尋常ではなく、AppleがiPadProが市場の92%のラップトップよりも性能が良いと正々堂々言い切ることが出来たことはこのことの証明であろう。