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Intel、Pat Gelsinger CEOが退職と発表

3行まとめ

Intelは、同社のCEOであるPat Gelsinger氏がCEOと取締役を引退し、Intelを退社すると発表しました。

Pat Gelsinger氏

Pat Gelsinger氏は、1979年にIntelに入社、i486などの設計を担い、32歳と最年少で副社長に選出されました。その後、2001年にCTO(最高技術責任者)に任命され、Core・XeonなどのIntelの社内製品だけでなく、Wi-FiやUSBなどの開発にも貢献しました。

2009年にIntelを一度退社しており、EMCの社長兼COOや、VMWareのCEOを経て2021年3月にCEOとしてIntelに復帰しました。

IDM 2.0

同氏のCEO復帰当時、Intelは長らく続く10nmへの移行遅延を脱し、再びリーダーシップを取ろうという段階でした。他方で、TSMCなどの外部ファウンドリの先端プロセスの開発や、Apple SiliconやAmpere Oneなどに代表される脱x86の動きなどの懸念点もありました。

ここでPat Gelsinger氏は「IDM 2.0」という施策を推し進めることになります。

IDM 2.0とは、Intelが取り入れている半導体の設計・製造・販売をすべて自社で行うIDM(垂直統合型)を発展させるということを意味しており、主にIntelの製造部門を強化するための施策となっています。具体的には「Intel事業部への製造サービス」「外部ファウンダリとの提携の加速」「外部への製造能力の提供」という3つの柱を中心にファウンドリ事業を再編するというものです。

Intelは、これまで自社の製造能力を自社製品に限って使用していましたが、それを外部にも展開することでTSMCやSamsungのようにファウンドリ企業としてのIntelを作り出そうとしたわけです。この結果として、現在IntelはTSMCの製造技術に対抗できる数少ない競合相手の1社となっています。

製造技術の強化も行いました。IDM 2.0に合わせて5か年計画を発表し、「10nm Enhanced SuperFin」を他者の7nmと競合できるという意味で「Intel 7」というブランドに、2025年までに「Intel 4」「Intel 3」「Intel 20A」「Intel 18A」を1年1ノード程度の速度でリリースしていくという目標を掲げました。実際に、この計画はIntel 18Aの順調度によってIntel 20Aがキャンセルされたこと以外は順調に進んでいます。さらに、この先の「Intel 14A」「Intel 10A」と2027年までの計画もすでに発表しています。

また、その競合相手と協力するという姿勢も見せました。それまでも一部の製品においてTSMCなどに製造を委託する例がありましたが、これを拡大するというもの。実際、Intelが「Arc」や「Data Center GPU Max」などでdGPUに再参入しましたが、これらはすべてTSMC製のチップになっていますし、第2世代Coreプロセッサである「Lunar Lake」と「Arrow Lake」はファブリック部分となるBase Tileを除き、CPUを含めてTSMCが製造しています。

低迷へ

Intelの好調さは2023年頃から陰りを見せ始めました。理由は「AIブームに乗り遅れた」や「CPUの破損問題の発生」などいくつも考えられます。しかし、その代表的な例となっているのは「製造部門」です。

IDM 2.0の中で、Intelは新たな製造工場の立ち上げなどに尽力しました。コロナ禍における特需を見込んだというのもあるでしょう。しかし、それほど伸びませんでした。実際、Intelの製造事業は1兆円を超える大赤字を叩き出しています(ただし、半導体の製造事業は、投資から利益が出るまでのタイムラグが大きいという特徴もあります)。

TSMCと競合していますが、残念ながら目玉となるような製品の製造を勝ち取ることができませんでした。AppleやAMD、Qualcomm、NVIDIA、Microsoftなど、名だたるファブレスメーカーはIntelではなくTSMCを見ている状態です。Intel FoundryもTSMCと同等かそれ以上の性能のあるプロセスを動かしているものの、あまり注目されていません。

しかし、その中でもMediaTekやAWSなどがIntel Foundryを使用する例というのが見られました。しかし、いまいち普及しているかが怪しいところ。Intel Foundryは現在もIntel製品の製造が中心であるようです。

結果、2024年6月~9月の決算においても2兆5千億円の赤字を計上し、3四半期連続の赤字となりました。結果として、NVIDIAと交代する形でNYダウから除外されました。

今回のPat Gelsinger氏の退任は、実質的にこの低迷の責任を取らされたような形になります。

今後

Pat Gelsinger氏は1日付でCEOを退任。取締役会が次期CEOの選定を進める間、最高財務責任者のDavid Zinsner氏とCCGのマネージャーで新設の製造部門の最高経営責任者であるMichelle Johnston Holthaus氏が暫定共同CEOとして業務を進めます。また、独立取締役会長のFrank Yeary氏が暫定会長に就任しています。

また、Intel自身もお先真っ暗というわけではありません。依然として、課題は大量に残っているものの、Intel Foundryを子会社として独立させ、資金を得やすくするなどの対策を行っている他、米国のCHIPS法による巨額の補助金も得ています。

半導体製造事業は、種を蒔いてから実がなるまで時間がかかる事業でもあるので、その時期が今後控えていると考えることもできます。

とはいうものの、今後も余談を許さない状況は続きます。次期CEOはどのような施策になるのか注目が集まります。

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