Intelは、「Arrow Lake-S」として開発してきたデスクトップ向けの「Core Ultra 200S」シリーズを正式に発表しました。
Core Ultra 200S
第2世代Core Ultraラインナップは、Lunar Lakeとして開発されてきた「Core Ultra 200V」シリーズが先行していますが、こちらは薄型軽量のノートブック向けの製品となっています。一方で今回発表された「Core Ultra 200S」はデスクトップ向けの製品となっています。
今回登場したのは、上位の5 SKUのみで、「Core Ultra 9 285K」から「Core Ultra 5 245K」まで展開されています。
ラインナップを見てみましょう。
コア数 | スレッド数 | Pコア ベース クロック |
Pコア ブースト クロック |
Pコア TB 3.0 クロック |
Pコア TVBT クロック |
Eコア ベース クロック |
Eコア ブースト クロック |
L3 キャッシュ |
合計 L2 キャッシュ |
GPU Xeコア数 |
GPU 最大 クロック |
PBP | MTP | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Core Ultra 9 285K |
8P16E | 24 | 3.7 GHz | 5.5 GHz | 5.6 GHz | 5.7 GHz | 3.2 GHz | 4.6 GHz | 36 MB | 40 MB | 4 | 2 GHz | 125W | 250W |
Core Ultra 7 265K |
8P12E | 20 | 3.9 GHz | 5.4 GHz | 5.5 GHz | 3.3 GHz | 4.6 GHz | 30 MB | 36 MB | 4 | 2 GHz | 125W | 250W | |
Core Ultra 7 265KF |
8P12E | 20 | 3.9 GHz | 5.4 GHz | 5.5 GHz | 3.3 GHz | 4.6 GHz | 30 MB | 36 MB | 125W | 250W | |||
Core Ultra 5 245K |
6P8E | 14 | 4.2 GHz | 5.2 GHz | 3.6 GHz | 4.6 GHz | 24 MB | 26 MB | 4 | 1.9 GHz | 125W | 159W | ||
Core Ultra 5 245KF |
6P8E | 14 | 4.2 GHz | 5.2 GHz | 3.6 GHz | 4.6 GHz | 24 MB | 26 MB | 125W | 159W |
大変横に長くなっております。
詳細を見ていきましょう。
全体的な内容
まず、Arrow LakeはMeteor LakeとRaptor Lakeの実質的な後継となっていますが、設計的にはMeteor Lakeの影響を多大に受けています。
Arrow Lakeでは、Meteor Lakeのタイル構造が採用されており、デスクトップ向けのメインストリームIntel CPUでは初めての採用となります。タイルの種類もMeteor Lakeと一致しており、CPUが搭載されるCompute Tile、GPUが搭載されるGraphics Tile、各種コントローラやアクセラレータが搭載されるSOC Tile、インターフェイスが搭載されているI/O Tileの4種類のタイルが、Foverosを用いてBase Tileの上に実装されています。
そして、Compute TileをTSMC N3Bプロセスで製造しており、Base TileはおそらくIntel 22nmでの製造となりますが、中核の部分はすべてTSMC製となっており、Intel以外が製造するチップを搭載するのもデスクトップ向けIntel CPUとしては初めてのことになります。
ではそれぞれの機構について見ていきます。
CPU
CPUの構成は、Lunar Lakeと同様の構成となっており、Pコアには「Lion Cove」、Eコアには「Skymont」が採用されています。Intelは、電力効率向上の為にコンシューマ向けのLion CoveについてはHyper Threadingを無効にする方針をLunar Lakeで採用していますが、Arrow Lakeでも同様となっており、Pコアでも1コア1スレッドとなっています。
CPUの規模については維持されており、最大8基のPコアと、最大16基のEコアの計24コア24スレッドとなっています。
クロックの向上については控えめであり、主にアーキテクチャの改良によるIPCの向上による性能アップが中心であると見られています。PコアではIPCが前世代から9%、Eコアでは32%上昇しており、各演算の処理が最適化されているとしています。更に、Pコアにはコアあたり3MBのL2キャッシュとCPU全体で共有する36MBのL3キャッシュを搭載しています。それに加え、小さいレイテンシでアクセスすることができるL0キャッシュも搭載されています。
CPUの詳細な設計については以下の記事を御覧ください。
Intel、「Lunar Lake」の詳細な設計を明らかに ~ シングルスレッド特化のCPU・XMX搭載のXe2・48 TOPSのNPUでSoC全体120TOPSを達成 - Nishiki-Hub
GPU
GPUには最大4基のXe Coreを搭載するXe-LPGが採用されています。Xe-LPGは、Intel Arcをベースにしており、DirectX 12 Ultimateをフルサポートしています。つまり、CPU内蔵GPUながらハードウェアレイトレーシングやメッシュシェーディングに対応しています。ただ、Meteor Lakeと比較して規模が小さいため、やはり基本的にdGPUを前提にしている感はあります。しかし、CPU内蔵GPUながら凄まじい性能を有していることも事実です。
Lunar Lakeよりも大容量のキャッシュや強力なレイトレーシング機能を搭載しているとアピールしています。一方で、Lunar LakeではXe 2 GPUを採用していたのに対して、Arrow LakeではXeであるため、XMX(Xe Matrix Engine)を省略しているなどの違いがあります。これはAI PC向けのLunar Lakeと、ゲーミング性能を求めるArrow Lakeとの違いであるような気もします。
なお、Arrow LakeのiGPUは8 TOPSのINT8理論性能を提供します。
NPU
Arrow Lakeは第3世代Intel NPUを搭載しています。これまた、デスクトップ向けIntel CPUとしては初めてですし、競合するAMDのメインストリームのRyzen(Ryzen 9000)にも搭載されていません(ただしAMDはRyzen 8000GでNPU搭載バリアントを提供しています)。
ただし、第3世代NPUはMeteor Lakeに採用されていたLunar Lakeからみると一世代前のものであり、性能は13 TOPSとなっています。残念ながらMicrosoftのCopilot+PCには適合しません。しかし、Meteor Lakeから2 TOPSほど性能が向上しており、おそらくクロックが向上しているものと見られます。
パッケージ全体(CPU+GPU+NPU)でのINT8性能は22 TOPS〜36 TOPSとなっており、GPUが一律8 TOPSの演算性能を提供するため、F付きのiGPUが無効化されたモデルではAI性能が低くなっています。
性能 | |
---|---|
Core Ultra 9 285K |
36 TOPS |
Core Ultra 7 265K |
33 TOPS |
Core Ultra 7 265KF |
25 TOPS |
Core Ultra 5 245K |
30 TOPS |
Core Ultra 5 245KF |
22 TOPS |
Arrow LakeのNPUはOpenVINO、WindowsML、DirectML、ONNX RT、WebNNをサポートしています。
SOC Tileとインターフェイス
NPUがMeteor Lakeと同じであったように、SOC TileについてもMeteor Lakeと同じものが採用されていると考えられています。しかし、LP-Eコアについては無効化されているようで、少なくともArrow Lake-Sで利用することはできません。LP-Eコアが廃止されていることから「Low Power Island」についても無効となっています。
しかし、それ以外、例えばXe Display EngineやXe Media Engineなどについては利用可能であると見られています。
SOC TileにはメモリコントローラやPCIeも搭載されています。
メモリは最大192 GBのDDR5-6400が使用可能です。なお、第14世代Coreプロセッサからプラットフォームが変わっており、DDR4は完全に非対応となりました。
CPUから伸びるPCIeは、PCIe 5.0が24本となっています。
性能と効率
では性能を見ていきましょう。
Arrow Lakeでは、性能と効率がともに重視されています。
まず、CPU性能ですが、シングル性能はCore i9-14900Kと比較して最大8%、競合のRyzen 9 9950Xと比較して4%高速であるとしています。
続いて、マルチコアの性能はCore i9-14900Kと比較して最大15%、、Ryzen 9 9950Xと比較して最大13%高速であるとしています。
その一方で電力効率も高めており、同じ電力のときの性能はRyzen 9 9950Xよりも高いとしています。
ゲームでも省電力性が高まっており、165W以下のシステムで最大15%のフレームレートの向上があるとしています(ただし、一部タイトルでは下回る)。
詳細は以下のスライドをご覧ください。
Intel® Core Ultra Desktop Processors Launch Briefing
来年にはモバイル向けも
来年には、Arrow Lake-HXとArrow Lake-Hが投入されることも合わせて発表されました。Arrow Lake-HXはおそらくデスクトップ向けArrow Lake-Sと同じタイル構成のまま、モバイル向けのソケットになって登場するものとみられます。
Arrow Lake-Hでは、Lunar Lakeよりも強力なXe2 GPUが搭載され、GPUが提供するINT8性能(AI性能)は77 TOPSとなり、Snapdragon X EliteがSoC全体で提供する性能を超えます。
Intel 800シリーズチップセット
また、同時にIntel 800シリーズチップセットも発表されました。Arrow Lake用のチップセットです。
Arrow Lakeではソケットが変わりLGA-1851となっています。これによって、第14世代Coreプロセッサ以前のすべてのプロセッサと互換性がありません。
Intel 800シリーズチップセットでは、前述の通りDDR4のサポートが廃止されDDR5のみのサポートとなりました。
また、Thunderbolt 4のサポートが初めて内蔵され、Thunderbolt 5も外部カードによりサポートされます。Thunderbolt Shareもサポートされており、キーボードやマウスの共有も可能となっています。
- 最大24レーンのPCIe 4.0
- 最大4レーンのeSPI
- 最大10基のUSB 3.2(内訳 20Gbps x 5または、10Gbps x 10または、5Gbps x 10)
- 最大14基のUSB 2.0
- 最大8基のSATA 3.0
- 最大2基のThunderbolt 4の内蔵サポート
- 最大4基のThunderbolt 5のディスクリートサポート
- Wi-Fi 6Eの内蔵サポート
- Wi-Fi 7のディスクリートサポート
- Bluetooth 5.3の内蔵サポート
- Bluetooth 5.4のディスクリートサポート
- ギガビットイーサネット
- 2.5Gbイーサネットのディスクリートサポート
のサポートとなっています。
CPU-チップセット間はPCIe 5.0 x4で接続されているようです。
発売と価格
現地時間10月24日に発売されます。
価格は
- Ultra 9 285K : 589ドル
- Ultra 7 265K : 394ドル
- Ultra 7 265KF : 379ドル
- Ultra 5 245K : 309ドル
- Ultra 5 245KF : 294ドル
となっています。日本円では、4万円台前半~の展開になりそうです。円安もありますが割と高めですね。