金曜日あたりになかなかおもしろい情報が出回りまして。ちょっと取り上げるのが遅かったかなと思いつつも記事にします。
IEEEは、光ベースのワイヤレス通信の標準として「IEEE 802.11bb」を認定しました。木曜日あたりに登場し、試験的な話だろうと思っていたらいつの間にかIEEEから規格化されていました。
LiFi
「LiFi」と呼ばれているこの規格は、光ベースのワイヤレス通信技術です。同じくIEEE 802.11で認定されている「Wi-Fi」と呼ばれる規格は電波によって通信しますが、LiFiは何度も言いますが光で通信します。そのため、Wi-Fiよりも高速であるというふうに主張されており、業界団体のHP「LiFi.co」は100倍高速であると主張しています。
LiFiが提唱された背景としては、データの送受信量が増加している事が挙げられ、LiFi.coの主張によると2025年までに無線周波数帯が枯渇するとしています。より高速かつ安定したインターネット接続への需要が高まるにつれて、データのアップロード速度に対応する新技術が開発されており、LiFiもその一つであるようです。
特徴
LiFiについて、まず誤解したくないのが「Wi-Fiを置き換える存在ではない」ということ。そもそも置き換えるには致命的な欠点がLiFiには存在しています。
LiFiは光によって通信すると何度も述べていますが、これは不可視光だけを意味せず、可視光と不可視光の両方を使用します。そのため、アクセスポイントとデバイスはお互いに直接見える必要があります。言い換えれば、壁や板など障害物を透過しないという問題があるのです。そのため、LiFiはWi-Fi/5Gの相互補完を目的としています。
ただ、アクセスポイントとデバイスが見えることによってデフォルトで軍用レベルにもなるセキュアな通信ができること、干渉や輻輳、接続台数が多いことを理由に混雑しないというメリットがあります。更に、光ですので遅延も小さく、Wi-Fiの1/3になるそう。
ルーターとなるのは「電球」らしく、一般的な家庭用LEDを使ってデータ転送が可能になるそう。速度は理論値で最大224GB/sであるそう(リリースに於いてWi-Fiが7GB/sであるのに対して100倍の速度というふうに述べているんだけど、224GB/sはこれの32倍にしかならなくてちょっとよくわからない*1)。また、1平方メートルあたりのデータ転送速度は1000倍になるともしています。
光でデータ転送ができるのかと言われれば、実際は結構理解できるものがあり、そもそも世界のインターネットは光回線だし、そもそも「光」自体も数千~数百万GHzという電波であるし、実現できそうです。実際の運用でも、おそらくこの光の周波数の高さを活用した規格になるのでしょう。もちろん、高周波数ならではの特徴として前述の通り障害物を通過しないというデメリットがありますが、それを織り込み済みで既存技術との併用を前提にしているのでしょう。
LiFi.coも考え方としては電球が高速に点滅する「モールス信号の進化系」であると述べています。
動作環境
ニュースリリースでは、可用性についても述べられています。やはり、性質上「光」を発していないとデータ送受信は不可能なものの、60ルクス以下の照度でも効果的に動作するとされています。60ルクスに対応する具体的な例が見つからなかったのですが、街灯が50~100ルクスのようです。
そして、光の色は周波数に依存することから、光の色(種類)も速度に直接影響します。リリースによると、青色LEDで3.5GB/s、白色LEDで1.7GB/sの転送に成功したとしています。
製品
LiFiを積極的に開発しているpureLiFiは、IEEE 802.11bbに対応するデバイス向け製品として「Light Antenna ONE」を発表しています。この製品は、スマートフォンへの組み込みを可能としており、量産準備もできているそう。現時点ではギガビットクラスの通信が可能としています。
また、アクセスポイント側として「LiFi Cube」というものも用意されているそうです。
まとめ
Li-Fiは、光が非常に高い周波数帯を利用していることに注目した新しい通信方式で、その特徴を活用し「高周波数だからこその周波数帯の多さ」「高速さ」という利点を生かしたものでした。
おそらくしばらくは研究段階で進むと思われますが、今後、ビーコンのような近距離通信から順番に搭載されていくことになるのではないかと個人的には予想しています。